第18話 春の訪れと忘れられた魔法の杖

春が深まり、桃源郷の自然は花々で華やかに彩られていた。小袖君は、長い回復期間の後、ようやく元気を取り戻し、日常の活動を再開していた。ある朝、彼と恋歌は、春の清掃のために古い倉庫を整理していると、ほこりをかぶった古い杖を見つけた。


「これは…?」恋歌が杖を手に取りながら訝しげに尋ねた。


「ああ、これはかつて使われていた魔法の杖だ。長い間忘れられていたみたいだね」と小袖君が答えた。彼は杖を丁寧にほこりから解放し、そっと空中で振ってみた。すると、杖からは優しい光が放たれ、ほのかに周囲を照らした。


「どうやらまだ魔力が残っているようだね。これを使って何か特別なことをしてみようか?」小袖君は提案した。


恋歌は興奮して頷き、二人で村の中心にある広場へと向かった。そこで、小袖君は杖を使って春の祭りを盛り上げるために、特別な花火のような魔法を披露することにした。彼は杖を高く掲げ、複雑な呪文を唱え始めた。


突如、空はカラフルな光で満たされ、見る人々を魅了した。花火のような魔法の光は、花々と同じくらい美しく、それを見た村人たちは歓声を上げた。特に子供たちはその光景に夢中になり、喜びを隠せなかった。


「小袖君、これは本当に素晴らしいわ!」恋歌が感動しながら言った。小袖君は笑いながら、「杖の力もあるけど、これも全部僕たちの村の素晴らしさの一部だよ」と答えた。


祭りが終わった後、小袖君はその杖を村の記念品として神社に安置することにした。それは、未来の世代もこの杖の物語を知り、桃源郷の魔法の歴史を引き継いでいくための象徴となった。


恋歌と共に神社を後にする際、小袖君は彼女に言った。「恋歌、これからも僕たちの手で村をもっと素敵な場所にしていこう。今日みたいな魔法の瞬間をもっと作り出そうね。」


「もちろんよ、小袖君。あなたとなら、どんな魔法でも実現できるわ」と恋歌が答え、二人は手を取り合い、春の夜の空を眺めながら家路についた。

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