痛快!小袖君の黒魔術

みっちゃん87

第1話 転生と初めての騒動

かつて最強の黒魔術師として無数の戦いを経た小袖君は、争いのない世界を求めて桃源郷へと転生した。目覚めると、彼は昭和レトロな風情が色濃く残る小さな村の中心に立っていた。彼の身にまとわれているのは、白いタンクトップと黒いボンタン、そして耳にはイヤホンが。


「ここが、新しい世界か…」


転生直後の戸惑いも束の間、小袖君は早速、村を探索し始めた。村はのどかで、人々の顔には穏やかな笑みが浮かんでいる。まるで時間がゆっくり流れているような、そんな場所だった。


そんな平和な日常を持つ村で、小袖君が最初に足を踏み入れたのは、床屋さんだった。店の主人は温かく彼を迎え、話をするうちに、主人は小袖君が下宿する場所を提供してくれることになった。それは、床屋の2階にある、4畳半の小さな部屋だった。


「ここが、僕の新しい家か…」


部屋は狭いが、小袖君にとっては新たな人生のスタートライン。しかし、新生活の第一歩は、彼の予想とは異なる形で踏み出されることになった。


翌朝、小袖君は自分の魔術で朝食を作ろうと試みる。しかし、彼の魔術はこの世界では予想外の反応を示し、朝食どころか、部屋中がパンケーキで埋め尽くされてしまう。


「うわっ、どうしてこんなことに…!」


その騒ぎを聞きつけ、隣の部屋に住む恋歌が駆けつけてくる。彼女は驚きつつも、笑いながら手伝いを申し出てくれた。二人でパンケーキを片付けるうちに、初めての会話が弾む。


「こんなにたくさん食べられないよね。村の人たちに分けようか?」恋歌が提案した。


こうして、小袖君の桃源郷での第一歩は、思わぬ騒動と新しい出会いから始まったのだった。彼はまだ知らない。この小さな出来事が、やがて村人たちとの大きな絆を築く第一歩になるとは。

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