【いったん連載お休み】乙女ゲームのヒロインに転生! これはハーレムめざすしかないっしょ!!
尾岡れき@猫部
序章 チュートリアル
第1話 乙女ゲームにログインしたら、とりあえずゲーム始めるしかないっしょっ!
爽やかな風が吹き込む、
私は、この時間が好きだ。
おもいっきり、背伸びをして――深呼吸をする。
狼の刻。
旧世界で言えば、日本時間、午前5時。そういえば、この時間に私は予習をしていたっけ。とっとと終わらせて、ゲームを。うん、懐かしい。思わず、前世を振り返ってしまう。
パンパン、と頬を叩く。どうにもならないことは、振り返っても仕方がない。
もう一度、深呼吸。
祖父がくれた、若人の弓に触れる。いわゆる、初心者用の弓だ。
元弓道部の感覚まで
(……上手くいかないよね、せっかく
今でも、信じられない。
そんな感傷を振り払うように、私は村のなかを駆けた。
男性達のように、
「サリア、おはよう!」
「おはよう!」
「おはーっ!」
「おはようございます」
「おはよう」
女性陣の朝は早い。共同井戸から水を汲むのも、大切な仕事の一つだった。本来なら私もそうなのだが、優しいこっちの姉は私の行動を片目をつむってくれている。
ちなみに3番目に発せられた軽い挨拶。あれがうちの姉さん。多分、日本だったら間違いなく、黒ギャルと言われるような人。ファンションに対する嗅覚がとことん鋭い人けれど、私達は残念ながら平民で田舎育ち。
「サリア、また頼むわね?」
「……獲れたらね?」
私は苦笑しながら言う。いつだって、獲物にありつけるほど、狩は甘くはない。それは男性陣の戦果を見れば、明らかで。
(……まぁ、私のはちょっとズルもあるけれどね)
皮袋の中にあるスマートフォンを撫でた。
「それはそうと、サリアは三傑を一目見たいと思わないの?」
私の心臓が、一瞬跳ね上がる。
第三王子、ウィリアム・アスレイ・ローデンブルク。
その側近候補、騎士団長の息子であるレン・ラースロット。
同じく側近候補、ジェイス・ボルノモード。
思う返すだけで、喉が渇く。唾も上手く飲み込めない。
まさか、って思った。
ウスウス感じていたことだ。
課金もした。
容赦なくやりこんで、サブシナリオもとことん、踏破しコンプリート率98%。
乙女系オンラインRPG【天球儀の契り】
そのメインキャラクター、三人と巡り会った元灰ゲーマー衝撃を5文字で述べよ!
――マジで!?
いや、それってすごくない?
マジ?
私が、ヒロイン?
リアルの話で?
これって、すごくない?
そう思ったのも、ほんの数十秒。
(イヤイヤイヤイヤイヤ――)
あっという間に冷静になる。
ちょっと、考えれば、よく分かることだ。
メインキャラクター3人に対して、どれだけの乙女達がプレイしたことか。でも、この
辺境と言われた、はじまりの村で――。
優しい姉の顔を見る。彼女なら、メインヒロインに相応しい。
私なんか、どう考えてもヒロインになれない。
だから、いつも通り笑って見せた。
「三傑様に、なんて……恐れ多いよ」
そう、自虐気味に笑んで。
踵を返す。
誰がヒロインなんだろう。
誰が、主人公でも。
1人は、犠牲になり。
1人は、悪魔となって墜ちる。
このシナリオは、絶対に覆せない。
風を切るように走る。
スマートフォーンに触れる。
――三傑になんか興味はない。
そう、村を飛び出したヒロインは、ぶつかってしまうのだ。その前の主人公に割り振ったパラメーターや、質問への回答が、これからのシナリオに直結する。
そう思考を目くぐらしていると、ぐらんと足下が揺れた。
(え――?)
五臓六腑にまで響く、地鳴り。
私は、これを知っている。
縦に大地が揺れて。
つい、体が竦む。
地震だ。
誰かが、遺跡の封印を解いたのだ。
今回、三傑が始まりの村を訪問したのは、王家の慣習。成年の儀を執り行うため。王族は、この儀式を経て、王立魔術学園に入学する――。
これは、
ぱふっ。
私は何かにぶつかって、よろめいた。
(へ――?)
私が倒れるより早く。
抱きしめられ、て。
これって――?
え?
▶天球儀の契り
▶序章「運命の出会い」が開始されました。
▶ユーザーデータをダウンロード中。
▶過去のセーブデーターをロード中。
▶認証されました。
▶課金アイテムは、学園寮図書館に保管されました。
▶メインヒロインのデータをシステムに報告。
▶認証されました。
▶全てのヒロイン候補データを削除します。
▶認証されました。
▶サリア(16)女性 職業、狩人をメインヒロインと認証。
▶ユーザーレベル、387。フレンド数、4枠を確保。
▶それでは引き続き【天球儀の契り】をお楽しみください。
私の視界の片隅で、山の木が抉れて。
轟音が鳴り響く。
そして――土砂が河のように、流れていく様を、私はただ呆然と見やるしかなかった。
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