幼馴染が好きな人に告白するんだってさ

猫の集会

シュウマイ残っててよかった

 あー、暇だなぁ。

 そして心は、ズーンと重い。

 

 今日は外が雨だというのに、その外で鳥がピーピーと鳴いている。

 

 

 元気かっ⁉︎

 まったく。

 

 

 …オレは元気じゃないんだけどなぁ。

 あーあー…

 

 

 …

 

 ベッドに転がり、部屋の真っ白な天井を見上げてオレは大きなため息をついた。

 

 

 するといきなり、

「おつー」

 と、隣に住む幼馴染ミクがやってきた。

 

「あーミクか」

 

「なによ‼︎わたしじゃ不満⁉︎」

 

「うん。」

 

 …

 

 少し間が空いてミクが、

「はあ?何それ」

 とご立腹のご様子だった。

 

「だって、ミクは昨日彼氏できたんだろ。そんなやつは、とっとと彼氏とデートでもしてきなさいな。」

 

 と、オレはイジケンボ人間になった。

 

 なんだよ、ミクはオレと結婚するっておままごとしたとき言ったのにさ。

 

 つっても、もう何年も前の話だけどさ…

 

 オレが元気ないのは、何を隠そうミクのせいだ。

 

 まぁ、別に何も隠してないけどさ。

 

 昨日ミクがオレにメールで、好きな人に告白する‼︎彼氏ゲット〜♡

 なんて送ってくるからさ…

 

 

「あー、それってイヤミ?」

 とミクは、オレをジロジロと見入った。

 

 

 …

 イヤミってなんだよ…

 ウザ絡み人間め。

 

 いや、ウザ猫とでも言おうか。

 

 彼氏できたからのろけ聞いてくださいってわけか?

 

 餌やったのにまだにゃーにゃーいうくらい騒がしい猫、ミクは今オレにとってそんな状態だ。

 

 

「餌なんかやらねーからな。飼い猫のくせにさ。」

「はぁ?何をおっしゃっているのか意味がわかりません!」

「あーそう。別にわかってもらわなくて結構ですので。お客様そろそろお時間なのでお引き取りください。」

 とオレは言い放ちベッドから手を伸ばして本を読み始めた。

 

 

 スンッ、くっ…スズッ

 

 なにやらあまり心地よくない音が耳から入ってくる。

 

 なんでしょうか?と音のするほうをみると…

 

 ⁉︎

 

 まだいたミク‼︎

 って、そこじゃない…んですって。

 

 ミク…⁇

 

「え?ミク…さっきまで雨に濡れてなかったよね?なんでいまさら土砂降りにふられてるみたいになってんだよ⁉︎顔びしょ濡れだよ⁇どうした?」

 と思わず聞いてしまったよね。

 

 オレの家、雨漏りすんのか⁉︎

 

 思わず天井を見上げた。

 

「違っ…泣いてるんだよ‼︎」

 とブチ切れるミク。

 

 

「あぁ、泣いて…って…なんで⁇なんで泣いてんの?え⁉︎」

 よくわからないけど、ティッシュを急いで差し入れした。

 

「どうぞ。ねえさん」

 

 キレ気味のミクがオレからティッシュをひったくった。

 

 

 …

 

 猿みてーにひったくりやがって。

 

 

 それにしてもミクが泣くなんて珍しいな。

 

 …

 

 これは新彼氏のせいか?

 ミクを泣かしたのは…新彼氏なんじゃ…

 

 まさかミク…そのシンカレに心をひったくられたとか⁉︎

 

「ミク、もしかして…ひったくりにあったのか?」

 

 …

 

 しばし無言のミクがいきなりオレを睨んで、

「は?ひったくりってなに?」

 といい、怒りだした。

 

 泣いてるんだよね?でも、泣きながらも怒ってるミクは、とても器用だ。

 

 

「ミクって、器用だね。」

「はぁ?さっきから心太しんたなに意味のわからないこと言ってんの?つぶすよ?」

 と、またしても怒られた。

 え…オレ潰される?

 

 でも、どうやって…?って、それよりもミクはなぜ泣いているのだろうか?

 

 外で鳥が鳴いているのとは、わけが違う気がするけど…

 

「ミク…なんかあった?」

「そりゃあるから泣いてるんでしょうよ」

「あー…そうね。で…?」

 

 …

 

「でって…なによ‼︎無関心男‼︎」

 

 とにかくオレは本日怒られまくりです…ね。

 

「えとー…か、彼氏と早速ケンカでもしたのかなぁ?」

 

 …

 

 …

 

 無言のミク。

 

 えと…この彼氏ってワードは、禁止でした?

 

 地雷踏んだ?

 

 

 …

 

「もー、わかんねーよ。泣いてるだけじゃなんもわかんねーって。」

 

 オレはミクを怒らせるのは、得意だ。

 でも…笑わせられるのは…優しく抱きしめるのは…オレじゃなくて彼氏なんじゃないのかな…。

 

「心太って、心が太いって名前だよね?なんでいつもそうなの?心太に心ってあるの?ほんとは、細太ほそたなんじゃないの⁉︎心ホッソホソかっ‼︎」

 とオレの名前をディスるミク。

 

「細太って…くっ…おもしれーじゃんか。ミクすげー才能だ。怒ったり、泣いたりさ…。まぁ、なにがあったか知らねーけどありのままのミクを彼氏にぶつけてみたらいいんじゃね?オレの前で何言ってもオレはなにもしてやれねーからさ。行ってこい、そんで仲直りしてこいよ」

 と、オレは心にブサブサとトゲが刺さりまくりでも我慢して、ミクの恋を応援してやった。

 

 そしたら、ミクは…

「素直に…素直になれないーー…好きなのにいつも怒ってばっかで…だからわたし…っ…だから…好きって言ってもらえないのかなぁ…?」

 とまた泣き出した。

 

 昨日付き合い出したんだよね?

 どっちからの告白?

 

 まさか、ミクから好きって言ったのかな。

 まぁ、そうか。昨日告白するって言ってたし。

 

 …

 

 でも、まだ付き合ってまもないんだから…そんなに好きを要求しなくてもね…。とりあえずオッケーもらったんなら、それでまずは…いいのでは…?

 

 ミクって…めっちゃ欲しがりさん…なのかな⁇

 

「ミク…とりあえずオッケーもらったんならいいじゃん。焦んなよ」

 

 

 …

 

「…ってない」

 

 ?

 

「ん?」

「オーケーしてもらえなかったじゃん」

 

 …

 

 え…

 

 

 じゃあ、昨日告白して彼氏ゲットって言ってたってやつは…もしかして…できてない⁉︎

 フラれた⁉︎

 

 あ、でもたしかに…告白するとか言ってたけど…結果聞いてなかったかも…だな…。

 

 えー…

 

 そういう時って…どう声かけたらいいん?

 

 ドンマイ‼︎とか?

 いや、

 諦めるな‼︎諦めたらそこでって…熱血マンみたいにいう?

 

 …

 

 わからん…

 

 えー…

 

 そういうのは、事前に連絡欲しかったわー…

 

 知り合い、失恋したらどう声かけ?とかで検索できたじゃーん…。

 

 いきなりそんなお題とか…無理だろー…

 

 うーん…

 

「ミク…オレの胸貸す?…いやなら…このクッションを…」

 

 オレがクッションを差し出すとミクは、クッションをベッドにぶん投げてオレの胸に飛び込んできた。

 

 

 そして…

 

「バカ‼︎なんで優しくすんのよ……好き、好き好き好き‼︎」

 と連呼した。

 

 …オレに言われてもなぁ。

 

 オレは傷つく一方だった。

 

 

 好きな人に抱きつかれて、好きって言われてるけど…それは、オレに向けてじゃないもんなぁ…。

 

 

「なぁミク、昨日のシュウマイ残ってるんだ。それ食って元気出せよ。ミクが急に帰るからいっぱい余ってんだぞ。まぁ、からしぬんねーけどな。」

 

 するとミクは、ガバっと顔を上げた。

 そして、

「えっ?」

 とオレをみた。

「ん?」

「待って…からし?」

「うん。昨日からしぬってっていったよね?美味しいよって」

「え、昨日シュウマイ食べてるとき…彼氏になってって言ったら…嫌いだからやだって言ったよね?」

「は?からし、ぬってって言ったんじゃねーの?美味しいよって言ったよね?」

 …

「違う…彼氏になって。愛おしいよって言った。」

「えっ…まさか…まさか昨日オレに彼氏になってって…言ったんだ?てか、愛おしいよってなんだよ?でもなんでかあちゃんの前でそんな…」

「証人になってもらいたくて…」

「はぁ?あ、でもだからミクが帰ったあとかあちゃんが、女心わかんないんだ?って言ったのか。」

 

「からしと彼氏か…聞き間違いしたんだ?」

「にてるだろ⁉︎オレ…そんなこと言われてるなんて思いもしなくて…てっきり告白してミクに新しい彼氏できたんだって思って落ち込んだんだぞ。すげーショックだったんだからな。」

「え、そうなの?」

「あたりめーだろ。オレは、ずっとミク一筋なんだから」

「え、じゃあ…それって…」

 

「そうだよ、ミク‼︎オレ、からしは大嫌いだけど、ミクは…ミクは…世界一大好きだかんな‼︎」

 と恥ずいセリフを声を大にして言ってしまった。

 

 するとミクは、ふふって笑って

「わたしは、からしも心太も大好き」

 と微笑んだ。

 

「なんだよミクー、もっと早くいえよー」

 とオレは、ミクを優しく抱きしめた。

 

 そして正式に、

「ミク、オレと付き合ってください」

 と告白した。

 すると、

「はい♡」

 と、ミクが返事をくれた。

 

 こうしてオレとミクは、無事付き合うことができました。

 

 

 シュウマイが残っててよかったわー。

 でも、オレはシュウマイよりも先にミクをいただくのでありました♡

 

 

 チュ〜♡♡

 

 

 

 

 おしまい⭐︎

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幼馴染が好きな人に告白するんだってさ 猫の集会 @2066-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ