♪ 中止宣告

重く暗い和音を2つだけ。

少ない音でかなしみを簡潔に表現。


このシーン、大垣から中止を知らされて

電話越しに落ち込むみんなの姿が

顔の表情を映さずに描かれてるのが印象的。


その時のなでしこはどんな顔をしていた…

リンの落ち込む顔は無表情だったのか…

犬山の泣くときの顔って存在するのか…

斉藤の落ち込む様子が想像つかない…


2回目行っても、鳥肌が立った。

桜通線乗る前のリン。

町中を歩いていた恵那。

家の廊下を歩いていた犬山。

部屋でくつろいでいたなでしこ。

みんな顔の見えない落ち込みの描写。


本当に何気ない日常を過ごしていたら

ドドーンと絶望の雷に打たれたみたいで。


一番辛いのは大垣ですよね。

自分からキャンプ場作りに誘っておいて、

やっぱり計画中止になりましたなんて。


中止宣告がなされた後、

物語は7月から翌年の3月へワープ。

雨の降るシーンから始まります。


犬山の勤める小学校は廃校です。


職場とはいえ、自分の生活の一部。

そこを失うと同時に、キャンプ場建設の夢も

一緒に消え失せてしまった。


♪ 寂しいなんて、うそやで


ここまじで天才。どうして思いついた。


映画の本編の中に、犬山家の「嘘目」、

(表記は多種多様ですがここではそれ)

で、「嘘目」は一度も登場しません。


スタッフロールの中や、パンフレット中に

小学校の授業で嘘目使ってるイヌ子が

描かれているのみでそれ以外に出番無し。


次の学校に転任するだけで、

仕事を辞めるわけではなく。

生徒達と会えなくなる訳でもなく。

でも今の学校にはさよならする。


別に寂しいことじゃないよね。

「寂しいなんて、ウソヤデー」と。

その犬山の目は嘘目ではなかった。


必死に嘘目を作ろうとして、

単に黒目(緑)が上向いただけの変顔。

大垣の方もそれが嘘でないと見抜いた上で

犬山の冗談に乗ってやってるのまじイイ。


もう一つ心が動いたのはちく恵那。

ちく恵那って茶化して言いますけど。

そもそも映画の中でちくわが出るか。

もう死んでるんじゃないかって心配でした。


テストキャンプ前で出てきたときは

ひとまずホッと安心したけれど、

それでもおじいちゃんなのは間違いなくて。


帰省した恵那をちくわがお出迎え。

リードをくわえて、散歩をねだりますが、

かなりの土砂降りで断念。

しゅんとなるちくわが切ない…


ちくわ、本当に切なかったよ。

散歩中の恵那の「急がなくて良いよ」とか。

散歩の休憩でちくわをなでて

「暖かい…」と言うシーンとか

飼ってた猫がまだ暖かいのを思い出して。


リンは仕事に専念していました。

キャンプ取材のアドバンテージを

取り返そうと躍起になっています。


終電ギリギリまでの残業をしながら

バリバリと働くリンに、刈谷さんは

ひとくちツカぽんを差し入れ。


なでしこは魂が抜けたようになって

しかし Forest Owl で働いていました。


5人はプロジェクトが中止になっても、

それぞれの生活を送っていた。


当然と言えば当然なんですが、

物語によりリアリティを与える

いいパートだったと思います。

折り合いと、再出発。

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