第65話 化身《アバター》と今後の目標
なぜナオが人の姿になっているか疑問を抱いていたわけだが、その答えは本人から聞くことが出来た。
「この姿、ですか……? それならダンジョンコアの拡張機能。一種の
その話だけでは理解不能だったが、続けての説明で、なるほど。と、納得することとなった。
そもそも、ダンジョンコアはダンジョン最奥に鎮座しているわけだが、
しかし、それでは万が一敵対者が部屋に到達した場合、破壊をまぬがれる手段がない。それはつまりダンジョン崩壊につながるわけだ。だが、それでは困る。特にダンジョンマスターたる俺は一蓮托生なわけでどうしようもない。
もっとも、それでは困るものもいる。それはダンジョンという事象。ダンジョンという構造自体を設定したもの。それが神、と呼ばれるものか。あるいは魔王と呼ばれるものかまでは不明だが、そうそう簡単に摂理を破壊されては困る。ということでダンジョンコアに自衛機能を持たせるため、自立可能な
とはいえ、そんな便利な機能があるなら初期から実装すべき。と、こちらは思ったのだが、どうやらあちらはそのような考えではなかったようだ。
と、いうのもあちらからするとダンジョンがぼこぼこ崩壊するのは問題だが、同時に保護したところで粗製。使えもしないダンジョンが増えても困る。という考えらしく、一種の試用期間が設けられていたらしい。それをクリアして初めてアバターが使用可能になる。
つまり、アバターが使用可能になるまでがある意味チュートリアル期間であったわけだ。本当、ひどいチュートリアルもあったものだ。失敗すれば死ぬチュートリアルなんぞ、実際にあれば炎上不可避だろう。こちらは実際に体験したわけではあるが……。
それはともかく、実はそのチュートリアル。俺はもっと早い段階、だいたいリーゼロッテがルディアを出発した段階でクリアできていたらしい。
なのに、ナオが今までアバターを解放していなかった理由。それはある意味俺のせいでもあった。
とはいえ、一概に原因。と言えるほどではなくどちらかといえば特殊な事情といえた。なぜなら、本来初期のダンジョンに大量の侵入者が入り込む、なんてケースはまれで普通であれば試用期間は三ヶ月から半年かかる。
しかし、俺はそのレアケースを引いてしまい、なおかつその状況で生き残る豪運を見せつけてしまったわけだ。
そんなわけで、本来試用期間が終わればアバター化用のDPは確保できてしかるべき、なのだか俺の場合。あの時点ではまだかつかつ、とてもじゃないがアバター化用のDPなんてなかった、というのが真相だ。
ただ、ナオがアバター化したわけではあるが――。
「マスター、このアバターはあくまで一番性能が低いアバターですので」
「……なんだって?」
どうやらアバターにも複数種類あるらしい。その中で現在のナオのアバターはあくまで一番最安値のものを使用している、とのこと。
そもそも、アフターはダンジョンコアの自衛用、とは先ほど言ったわけだが。自衛用、と銘打つようにある程度の戦闘能力を有する。
それは下からゴブリンやスライムと同程度から始まり、最終的にはドラゴンですら片手でくびり殺せるようになるほど。ひとつの例えになるが、とあるゲームの世界の半分を~~や、滅びこそ我が喜び~~などといったセリフを言ってしまえるほどの戦闘力を身に付けることが出来るわけだ。……どちらとも勇者に敗れているので縁起が悪そうな気もするが、そこは置いておく。
とにもかくにも、最終的にそこまでの強さをアバターは得られるということだ。まぁ、それだけの強さになればナオだけで国の1つや2つ、単騎で落とせそうな気もする。だからこそ、そこを目指すのも良いかもしれない。
それらを加味して今後の目標を定めると――。
短期的な目標として。
1.リーゼロッテと合流、改めて協力関係を結ぶ。
2.帝国の司令官とも
3.2ヶ国と協力、もしも関係を結べなかったとしても独自に動き、公国を解放。それと同時に王国の捕虜を得てダンジョン拡張の土台とする。
長期的な目標として。
1.ダンジョンの軍備増強。現状の兵力だけではなく、新たなモンスターの召喚、ないしは繁殖で戦力を増やす。また、同時に総兵力を増やすことで国相手だろうと簡単に攻め込めない抑止力化を目指す。
2.ダンジョンの拡張。2ヶ国との国交を樹立できるのであれば開拓されていないアルデン大森林を中心に、樹立できなかった場合は地下へダンジョンを拡張。また要塞化することで簡単に攻め落とせないようにする。
3.ナオのアバター強化。最終的には一騎当千、万夫不当の強さとなり得るアバターを完全強化する。そうすればコア破壊によるダンジョン崩壊、という可能性を限りなく低く出来る。
そして最後、努力目標として。
1.ダンジョンマスター、俺自身の強化。今後、コアのナオが強化された場合、相対的に俺が狙われる可能性は否定できない。その時のため、最低限、増援が到着するまで生き残れるようになる。とはいえ、具体的な方法はまだ未定。DPで強化できるのか、それとも他の方法か模索する必要あり。
まぁ、こんなところだろう。
今後はこれらの目標を達成するため行動することになる。そのため、まずはリーゼロッテたちへの使者を考えなくては。まぁ、既に色々と考えていた合間に、そちらの方は思い付いたし、なんとかなると思う。
それらが出来るかどうか、念のため思案する必要があるかもしれないが……。
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