第7話 躍進

 二十八位にランクインしたことはネットのニュースで小さく取り上げられたが、その際、自分の境遇を「ぶっちゃけて話すキャラ」であることが強調された。

 そのことを面白いと感じたテレビ関係者がいて、いきなりゴールテンタイムのバラエティー番組出演の声が萌菜にかかった。

 萌菜は緊張で舞い上がるようなことはなく、いつもどおりの「ぶっちゃけキャラ」をそつなくこなした。

 それには、今まで培ってきた、公演の楽曲の合間のトークコーナーで鍛えた話術、多様なSNSでの発信力、ファンとの握手会で身についたアドリブ力が大いに役立った。

 この番組の出演をきっかけに、萌菜の元に、様々なテレビや雑誌の仕事の誘いが舞い込むようになる。

 加えて、地元の埼玉のFM曲のレギュラー番組も決まった。

 メディアへの露出が増えるに従って、アイドルファンのみならず広く一般に、萌菜の認知度・好感度も上昇していった。

 CDシングルの歌唱メンバーにも初めて抜擢され、楽曲披露の際にはグループの中心に近いポジションでのパフォーマンスを任されるようにもなる。

 高校進学を諦めてアイドル活動に専念することにした萌菜の決意が実を結んだ形で、順風満帆を絵に描いたような躍進ぶりだった。

 その勢いのまま、四回目の「全日本アイドル・クイーン・フェスティバル」に突入。

 十二位という満足のいく結果を得た。

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