第30話目に見える事だけが真実とは限らない









「「「「いただきます」」」」




 風呂から避難し、夕食を全員分作り終えた俺達は、食事をしながら明日の予定についての話し合いをしていた。



「……つまり、馬車じゃなくても馬に乗馬したコナー君が樹海を抜けれれば全員脱出する事は可能なんだね?」



「はい。ただ、俺には戦う手段を持ってないのでゴブリンや弱い魔物が襲って来ただけでも【アイテムボックス】に避難しないといけないんですけど」



「この樹海で魔物に遭遇しないで駆け抜けるのはほぼ不可能……やっぱり怪我をしてねぇ俺とポート、それとアーデリアの3人でコナー君を護衛しながら進むのがいいんじゃねぇか?それなら魔物が草陰に隠れていたとしても守ってやれるからよ」



「だが、それだと馬の単騎駆けでは無く、馬車での移動を余儀なくされる……あまり時間を掛け過ぎるとまた奴がやってくる可能性も……」




 奴……それがこの騒動の元凶であるビッググリズリーの事だというのは言葉にしなくても全員が理解出来ていた。



 ビッググリズリーが何故、この樹海の外縁部に出て来たのかは謎だが、すでに時刻は真夜中。



 楽観的に考えれば住処である樹海の中心側へ帰ったと考える事も出来るが、万が一まだ樹海の外縁部に残っているのだとすれば、馬車でゆっくりと移動していたらまた襲われる可能性がある。



「だったらまたコナー君の【アイテムボックス】に逃げ込めばいいだろ?」



「……まぁそうなんだが…俺達はすでに帰還予定の時刻を過ぎているんだ。万が一明日も野営をする事になったら…」



「あ、未帰還者登録……」



「未帰還者?」




 ゲルトの話しでは冒険者には依頼を受けた際に“何時何時までに帰還する予定”をギルドに申請しているらしい。


 その申請した日時を超過し、しばらくすると【未帰還者登録】というものに割り振られ、事実上の死亡判定を受けるのだ。



 何故そう言った規則があるのかは知らないが、この未帰還者登録をされてしまうと、ギルドに預けた金銭や自身の保有する賃貸や建物をギルドに回収され、登録された者の遺族や親戚に分配されるらしい。



「俺はあまり知らないが、昔死んだ冒険者を偽って金貸しにかなりの金をだまし取ったアホが居たらしいから、死んだらさっさと遺品整理をする規則が出来ていてな……もちろん予定を1日2日遅れた程度なら資産を没収される事はないんだが…一応な」



「なるほどですね……ならやっぱり俺が1人で樹海を抜けた方がよさそうですね…」



「だがなぁ…」




 話は堂々巡り…早く帰るなら俺1人で馬を走らせた方が早いが、安全面を考えれば馬車で俺を護衛しながら進んだ方が確実。



 さてどうしたものかと頭を悩ませていると、夕食前にお風呂で鉢合わせてから何となく顔を見づらく思っていたフォルンがズイっと俺の横に腰を落とす。



「よっと!……なぁコナーよ。お前は戦う手段が無いと言ってたが、立派な反撃手段があるじゃろ?」



「え、じゃ、じゃろ……?って近いんだけど……えっと、立派な反撃手段って…」



「もちろん、おてて魔法」




 おてて魔法ってフレーズ、気に入ったのか……。



「えと、確かにフォルンの魔法を使わしてくれるなら反撃も出来るし、ある程度の魔物なら気にせず進めるけど……それならフォルンが直接魔物を魔法で撃ってくれた方が助かるんだけど…」



「私は寝てるから撃てる訳ないよ?何言ってるの?」




「あ、はい……」




 なんだろう…?なんかさっきまでフォルンの顔を見るのが妙に恥ずかしかったんだけど……寧ろフォルンに照れてしまっていた事に悔しさ?の様な感情が湧き出てきた気がする…。













◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「たはぁー……なんかすごい濃い一日だった…」



 夕食を済ませた俺達は、そろそろ明日に備えて寝ようと解散し、各々が各部屋に帰還し、俺とルイも≪自室≫の部屋に戻って来ていた。




「……ふぁあぁ……オレも疲れて…結構眠い……かも…」




「ルイはエココ村を出て、いきなり魔物との戦闘だったからね……最初から俺の【アイテムボックス】を周知させておいたら中に入ってもらってるだけで良かったんだけどね」



「……ご主人は……悪く……なぃ………Zzz……」




 寝ちゃったか…。かなり疲れを溜めさせちゃってたのかな?なんだかんだ子供なんだから無理させ過ぎたか。



「……お休み、ルイ」




 俺はベットに倒れ込むように眠っているルイに掛け布団を優しく掛けてあげ、自分も睡眠を取る為、自分のベットに寝転がる。



「ん、んぅーー……はぁ……あ、そうだ“ステータス”の確認しとこ」



 ふと、しばらくステータスの確認をしてなかった事を不意に思い出した俺は、なんとなく今確認しておこうとステータスを開く。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 【名前】 コナー


 【年齢】 15歳


【スキル】 アイテムボックス:Lv9


 【SP】 25/26


★アイテムボックス★


【ルーム操作】


≪自室≫    10×10:【ルイ♀:睡眠】【コナー♂】【その他▼】


≪メルメス≫ 10×10:【その他▼】


≪シングル≫  5×5:【その他▼】


≪シングル≫  5×5:【その他▼】


≪シングル≫  5×5:【その他▼】


≪シングル≫  5×5:【アーデリア♂:睡眠】【フォルン♀:睡眠】【その他▼】


≪シングル≫  5×5:【その他▼】


≪シングル≫  5×5:【その他▼】


≪ダブル≫  10×10:【ゲルト♂:負傷】【リードディヒ♂:睡眠】

          【ポート♂】【おっさん】【その他▼】


≪ダブル≫  10×10:【その他▽:家具一式・馬・馬車etc】


≪ダブル≫  10×10:【その他▼】


≪ダブル≫ 10×10:【その他▼】


≪トイレ≫   5×5:【その他▼】


≪水場≫    5×5:【その他▼】


≪ゴミ箱≫  10×10:【その他▼】






【装備】


≪頭≫     :無し


≪胴体≫    :普通のパジャマ


≪腕≫     :無し


≪足≫     :普通のパジャマ


≪武器≫    :無し


≪アクセサリー≫:無し



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 家具一式を全部の部屋に配置した所為で、全部の項目に【その他▼】が表示されていて見えにくいが、きちんと全員分の名前はあるし、【その他▼】の中身も確認しているが、特に問題は無さそうだ。



「流石にこの間レベルが上がったばかりだからレベルアップはまだだよね……レベル10じゃどんな能力が手に入るんだろ……………ん?」




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


≪シングル≫  5×5:【アーデリア♂:睡眠】【フォルン♀:睡眠】【その他▼】


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「……うん、いや、もうね?色々と慣れて来たし特に驚きとかも無いけどさ……うそじゃん……?」




 …デジャビュ?アーデリアって男の方ですかぁ…?





「……よし、今日は寝よう…」




 俺は何かを見て見ぬふりをする為、一つ深い深呼吸をした後、夢の世界へと旅立つのだった。







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