第36話 フラウムの行方
フラウムがやってくる。そう聞いたのは、午前中だった。
皇太子妃の部屋を作っている所だった。
今夜までに仕上がるか聞いてみたが、やはり無理だった。
「では、貴賓室で構わない。すぐ住めるように準備をしておいてくれ」
使用人に指示を出して、執務室に入って仕事をして、昼に行こうとした時、レースがポンと姿を現した。
「フラウムは、ドラゴンと三日、天上に行くそうだぞ。一族に追われているから逃げると言っていたぞ。三日経ったら、また連絡すると言っていた」
「レースはどこから飛んできた?」
「田舎だ。キールの村だと思うぞ」
「フラウムの魔力は幾つなのだ?」
「知らぬのか?無限大だ!だから、オレ様が契約したのだ。オレ様は雷獣の皇子だ」
「無限大だと?」
「オレ様の話を聞け!」
「それどころじゃない。フラウムは逃げたのだな?それなら、ここに、本家が来るな」
シュワルツは、部屋から出てこうとして、振り向いた。
「レース、お疲れ様。また知らせてくれ」
「おい、どこに行く?」
「フラウムを探しに来るやつを迎え撃つ」
「電撃なら任せておけ。スクレも呼ぶか?」
「喧嘩をする訳ではない」
「命を狙われておるのだろう?」
「狙われておるが、警護がいる」
「オレ様も守ってやろう」
「そうか、それなら、そこにいてもいいぞ」
シュワルツはレースを置き去りにして、宮廷の中を歩く。
準備をするように言っていた貴賓室は、客人が来ないことを告げた。生けられた花は片付けられた。キッチンに行き、客人が来なくなったと知らせる。
この宮廷にフラウムの気配を消しておきたかった。
三日後にここに隠れやすいように、しておくべきだろう。
妃の部屋も三日後にはできている。
+
数刻後に、テクニテース・プラネット侯爵が、アミ・プラネット侯爵と宮廷にやってきた。
「フラウムを出してくれ」
「フラウムは来ておりません。昨夜は、突然、使いの者が来て、ダンスレッスンが中止になったと手紙を受け取りました。早く就寝したのなら、この寒空の中で風邪を引いてしまったのかと心配しておりました」
「そんな前置きは、どうでもいい。フラウムを囲っておるのだろう?」
「フラウムに何か起きたのですか?」
シュワルツは何も知らないふりを続ける。
「グヌヌ、貴様、孫娘を手込めにしたのではないだろうな?」
「言っている意味が分かりません」
シュワルツの従者が、間に入ってきた。
「貴様、皇太子殿下に対して、貴様とは何事か!」
「まあよい。エルペス・ノア、どうやら、フラウムが行方不明になっているようだ」
「この宮廷にいないのか?調べさせてもらう」
「どうぞ」
「捜索、フラウム」
テクニテース・プラネット侯爵は魔法で捜索を始めた。
「いないぞ。アミ、おまえも調べてみてくれ」
「ええ、捜索、フラウム」
アミ・プラネット侯爵も同じ魔術を放った。
「フラウムに何があったのです?」
「何でもない」
「フラウムは私の婚約者です。知る義務がある」
「婚約は、なしだ。正式に解消のお願いをするつもりだ」
テクニテース・プラネット侯爵は顔を真っ赤にさせて、苛々している。
「私は婚約破棄も解消もしません。私の婚約者は正式にフラウムです」
「喧しい!」
「不敬罪であるぞ!」と従者が前に出た。
「フラウムはどこに行ったのですか?一緒に捜索しよう」
「要らぬ。邪魔をした」
テクニテース・プラネット侯爵は宮廷の外に出ていく。
アミ・プラネット侯爵は、頭を下げて、その後を追った。
シュワルツは、フラウムを探すふりをした。
馬に乗り、騎士団を動かした。
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