桜とラーメン

ハルノヒ

桜とラーメン

今年も春の季節を感じる景色がやってきた。

朝から、小鳥の鳴き声が部屋に響き渡る。

心地良い朝の風景だ。

窓を開けて外の暖かな空気が部屋の中に染みこむ。

春風は暖かい空気も運んでくれる。

アパートの隣に咲く桜の蕾が花を咲かせている。

春の音が聴こえる。

保育園の園児達が、公園へ向かって歩いて行く。

保育士の先生と楽しく会話する声

「あっ、桜だ、桜が咲いている。こっちはタンポポが咲いているよ」

「咲いてる咲いてる!綺麗だね!」

春の景色は、空からは小鳥の鳴き声、地面からは咲いた花や緑色に茂った葉っぱが元気良く咲いている。

人も元気に咲いてしまいそうな気配だ。

いつも通り過ぎる緑道公園の桜も花が咲き始め、満開まで待ちきれない花見客でベンチは占領されている。

花見に来た人は、花より人の顔を眺めて楽しんでいる。

ほのかに桜の香りが漂っている。

自然を感じる風情は都心では中々味わえないが、花見見物で人が楽しんでいる風情はどこでも味わえる。

お祭りが好きな日本人にとってはそっちの方が盛り上がっていいのだろう。

そして、今のご時世、どこでも飲食が出来てしまう。

花見ともなるとお酒につまみ、お弁当やオードブルなど何でも持ち込める時代だ。

特に、匂いが立つものが多い。

桜の木の横に止まったラーメンの屋台からは醤油の出汁と麺の匂いが溢れ出ている。

桜の香りも消された屋台の匂いは食欲を誘う。

春の匂う景色の中にラーメンを啜る音と美味しそうな湯気だつ醤油の香りが桜に勝る。

花見客は桜からラーメンへ季節が変わり、そのラーメン客を見物している客は花見よりラーメン見物に列をなして行く。

春の匂いは、醤油ラーメンの屋台だった。



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