33 午前8時の脱走計画
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それは夜に作戦を立てていた時のこと。一通り話し終え彼女に作戦を伝え終え、私は仮眠につこうとしていた頃、見張りの彼女が私に話しかけてきた。
「なあ、お互いに仮眠と見張りをするのは分かるが何故朝の8時頃なんていう目立つ時間帯に作戦を開始するんだ?仲間を集めてるかも知れないだろ」
「恐らく相手も気を張って私達の動くまで警戒してると思う。だから私達も最低限警戒はするけど、今は睡眠をとって体力を回復しよう。このまま戦っても集中力が持たないしね」
「それは相手もだろ?それに数が増えた方が厄介だ」
「大丈夫、増やさないよ」
「なんで分かる?」
「私達が”
「でもお前が使えないのはあの男も見てるだろ?」
「土壇場の状況で死なば諸共でやりかねないって考えられるし、あなたがいるでしょ?」
「俺ならやりかねないって判断か。けど大勢で来た場合はどうする?」
「作戦は変えない、それにあの人ならそんな馬鹿な事しない。必ず大規模の問題にしない。ましてや極秘で話を進めてたなら住民の件は知らず存ぜぬで通せても部隊の人間が少なくなればそうともいかない。
恐らく内密の作戦だったはず」
「なあ、お前の言う"
思い出したくも無い記憶。その時には必ず彼が絡んでいた。とても苦手な人、知り合いと呼べる程親しい訳では無い距離感だけど、嫌という程彼のやり方を見てきた、それを全て説明すると長いので彼女にも説明を省きながら伝える。
「知り合い・・・といえばそうかもしれないけど、私にはあの人の考えも正しさも理解出来ない・・・、何を考えているか分からない怖い人。けどやり口は分かる。だから私の伝えた作戦は筋書き通りとはいかないかもしれない」
苦々しい記憶が蘇る。顔に出ていたのだろう、彼女は「そうか、分かった。もう寝ろ」と一言残し私1匹はしばしの就寝に入った
。
それからは時間を決め交代でリフレシアと見張りを入れ替わり、彼女は眠り。再び交代し眠りにつくを繰り返し朝を待った。
朝日は登りしばらくギリギリまで休息を繰り返し
午前8時頃と思われる時間。作戦は遂に開始する。
「リフレシア、準備は良い?」
「待て、まだこの不味い飯食べてる」
ガツガツと手持ちにあった残りの食料を全て平らげ満足そうにする彼女、手際良く”
「リリース・”
膨大な今にも爆発しそうな程の衝撃と魔力が箱から溢れ出し、箱から飛び出るように現れた”
膨大な魔力を纏い、まるでそれは旗のよう靡く大きな魔力のカーテン、どこからかバサバサと靡く音が聞こえきそうになる程に揺らめいていた。
「これが完全の”
それを持つ手は自然と震えていた。怖い。
こんな力私が操れるのか?土壇場のこの引き返せない状況。私は緊張と恐怖で強ばる体を無理矢理動かし”
「たかだか魔力が強い棒ッキレだ。馬鹿みたいに頭で考えるな」
ポイと彼女は私に向け乱雑に投げ渡してくる、受け取った時には不思議と手の震えは止まっていた。
「ありがとう・・・私頑張る。」
「俺が使っても良いんだがな、お前がどうしても使いたいんならお前にやらせる他無いだろ?
良いか?俺の足を引っ張るなよ」
「分かってる・・・行こう、リフレシア」
私達は体制を低くしながら地面を力いっぱい蹴り上げ、家の外へと飛び出す様に走り出す。
開幕に一発目の銃弾が飛んで来るも銃弾は飛び出し走り出す私達に掠めること無く地面に虚しく散る。
「やっぱ近くにいたか馬鹿どもが!」
「リフレシア!右の方から飛んできた!だから左に迂回してこの町から出よう!」
「クソ!打ちのめしたい!!」
「我慢して!遮蔽物が多いこの町にいる方が不利なんだから!」
彼女を先頭に足を止めず器用に方向を変え、町の入口とは反対側の方へと走り出し、民家の壁の方へと走っていく。
「お願い!」
「逃げるのは性にあわんのだがな!!」
崩れ掛けてた民家の壁を次々と素手や蹴りで破壊しながら町の外へと走り続ける。その間にもいくつもの銃弾が飛んでくるが民家の壁や中に狙いづらい場所に入りながら移動を続ける私達には当たる事は無かった。
「下手くそが!当たらないぞ馬鹿が!」
「煽らない!声で場所割れちゃうんだから!もう直ぐ外に出る!このまま突っ切ろう!」
次々に彼女の手によって道は作られ、次々に壊されていく民家の先、遂に辺り一面が砂の世界の光景が私達の目の前に現れた。
「出れた!」
「遠くから打ってた卑怯者だ、直ぐに追いつくことは無いだろ」
耳をすませば遠くから、ザッザと音をたて砂を強く踏み走る音を鳴らしこちらに近付いてくる音を町の方から察知し、再びリフレシアと共にトリル・サンダラから抜けられる南西の方へと迂回しながら走る。
「来てる!」
「あいつの姿を見える前に使え!」
息を整え、”
「あの馬鹿そうな奴でも使えたんだ!お前使えなかったらあいつ以上の馬鹿だからな!」
「ちょっと・・・、今話しかけないで」
「誰が馬鹿だこの野郎!!」
遠くから数発の銃弾を放たれた。男は少しキレながらこちらに向かって来る、照準を合わせる時間等一切見せず放つ弾丸は的確でどれも正確なまま撃ち続ける。
しかし、放たれた弾はどれも虚しくもいつの間にか龍の鱗を両腕に纏う彼女により弾かれ一発も当たることなく逃走は続けられた。
「す・・・凄い」
「下手くそ!!」
「なんでそう煽るの!!」
「早くお前はそれを使え!これ以上庇わないぞ!」
集中。目を閉じ”
意識し、想像、創造。
凄まじい轟音をたてながら私達のいる砂一帯は突如として大きな魚、"オペラ"へと形が作られていき、私達を乗せ空高くへと飛び出した。
「凄い・・・全く魔力を使っていないのにこんな事出来ちゃうなんて・・・」
「このまま逃げ切れそうだな」
巨大な砂の塊の上、空高くへと飛び立とうとする"オペラ"はまるで空へと跳ねる魚。とてもでは無いがあの男の銃弾は届かない上に私達を狙い撃ち出来ない。
ほっとしたのもつかの間だった。
油断をした私達の更に高い所、太陽と重なる1つの人影は私達を乗せていた巨大な"砂上の夢"を一撃で破壊し空に浮いていた"オペラ"の姿は散り散りに爆散し、私達は地面に叩き落とされてしまう。
「クソ!!なんだよ!!」
「大丈夫?!リフレシア!」
「直接の攻撃は受けてないが、折角の遊覧飛行が台無しだな・・・あの野郎本気で許さん」
「でも一撃であの巨大な砂上の夢を潰されるなんて・・・」
私達は周りを見渡すと目の前にはニヤニヤと笑みを浮かべゆっくりと近付く男、”エリミネーター”の姿があった。
「よお、逃げ切れると思ったか?」
「二人だなんて随分羽振りが良いな?人望が無いなお前」
「うるせえ、二人で十分ってことだよ小娘とケモノ一匹な。そうだろ?」
「二人?」
私は彼女の向く方、後方に振り返ると見覚えのある大柄の男がゆらゆらと揺れる蜃気楼の中から現れた。
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