メリーゴーランド

第1話

雑木林の奥、地面に日常品とブルーシートが、ぶちまけられていた。

そのなかに薄汚れた男が突っ伏している。

顔には幾つかの痣（あざ）があり、苦しげな呻（うめ）き声をあげていた。

男は住所不定・無職であり、雑木林の奥まった場所を生活拠点にしていたが、10分ほど前に若者グループから襲撃を受け、この惨状（さんじょう）となったのだ。

うつ伏せで呻（うめ）く男に1人の人物が、そろそろと近づく。黒いパーカーのフードをかぶり、マスクと眼鏡を着用している。

パーカーの人物は男のそばに紙袋を置き、どもりながら言った。

「あ、あ、あの、こ、これ、つ、つ、使ってください…」

言い終えると、逃げるように離れて行った。

男はうつ伏せのまま紙袋を引き寄せ、中身を確認する。中には食料品か飲料水、医療品が入っていると思われたが、そこには想定外の代物（しろもの）があった。

紙袋の中にあったのは鈍い光りを放つ拳銃だった──。

　to be continued.