アナスタシアちゃんのぬいぐるみ

@J0hnLee

第1話 私達のカンフーの師匠•馬香香先生

「イッ、アル、サン、スー、イッ、アル、サン、スー」馬先生の号令に合わせてカンフーの基本の突きの稽古です。

それが終わると今度は蹴りの稽古です。

脚上げ、脚外回し、脚内回しをしていると道場の床に汗か落ちます。

馬先生は汗をかいたらすぐに「水分飲んで」と言います。

地下にある道場は本当に暑くてたまりません。

それでもみんなは頑張って五つの基本のカンフーの型を一緒にやります。

「準備式!」と言われると私達は両方の肘を後ろに引いてから拳を下に降ろして手のひらを下に向けます。

今から型が始まりますよ、と言う動きで気持ちを落ち着けます。

基本の突きの時よりも馬先生の号令は気合が入ります。

私達のカンフーの師匠は女の先生で名前は馬香香と言います。

台湾出身のとても綺麗な先生です。

台湾では漢字を二つ重ねると可愛らしいって意味だそうです。

「香香」なんていい香りがしそう。

そういえば可愛らしいパンダも凛凛とか蘭蘭だもんね。

イクライノにはパンタがいないので残念です。

馬先生はイクライナ語を上手に話します。

イクライノ人の旦那さんと結婚して、ここイクライナに住み始めて10年だそうです。

40歳です…って年齢は言っちゃいけないんだった。

いつもママに「私の年齢言っちゃだめ」と叱られてるのを忘れてました。

馬先生のカンフーは長拳螳螂門と言います。

小さな頃から習い始めたそうです。

長拳は飛んだり跳ねたり腕を振り回したりします。旋風脚ってうジャンプしながら蹴る技がかっこいいです。

螳螂拳はカマキリの動きを形どったカンフーです。

カマキリの格好は敵の手首と肘を固めています。

洪堂成老師と言う強い先生が離れて戦う長拳と、くっついて戦う螳螂拳を合わせて作ったカンフーなんだって。

二つの間合いで闘えるってわけね。

馬先生の道場には洪堂成老師のお写真が飾ってあります。

お供物も欠かしません。

私には怖い先生には見えないけど馬先生はいつも怖かった怖かったって言います。

なんでも言う事を聞いてくれそうな笑顔です。

髪の毛の短い優しそうなおじいちゃんです。

眉毛も太いです。

いつも稽古の前に一人ずつ線香を立てて老師に挨拶してから稽古を始めます。

両手で線香を持って頭を下げます。

私はこの線香の匂いが好き。


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