第三部まとめ

六章 アクアとボア 限定SS 347話辺りの裏

こちらも初出し。サポーター限定SSです。ボアのキャラが定まっていないです。

サポーター様に感謝を!


374話 一回お別れ、辺りの話です。



「ふあ~。やっぱり私の温泉は最高よね」


 ターナー領の領民が年末の祭りで楽しんでいる。その喧騒を聞きながら、私アクアは一人温泉で寛いでいるのよ。いいじゃない。私がみんなに与えた温泉なんだから。


 私を祀っている領地は三つある。でも本当に心から私を信じて祈りを捧げてくれ続けたのはここだけ。祈りの強さが私達の力のみなもと。多くの同僚が力を失い人を見限っている。神と人との相互関係は、ほとんどが機能しなくなった。


 真面目過ぎたのよね。私達は。まあ、私がいい加減だったのかもしれないんだけど。


 こうやって温泉に浸かるだけで、デトックスできるのに。


 教会が教会らしくなくなったのが残念でならない。


 今、ターナーの教会は昔みたいに楽しんでいる。祈る人間側も私も。


 私達は、仲の良い世界を作りたいだけ。人間同士、人と神の関係、共存できる社会。


 争うために魔法を与えたんじゃない。幸せになるために与えたはずなのに。


 みんな温泉につかればいいのよ。この領だけね。温泉の本質を間違わなかったの。


 だから、領民と私が認めたものだけが入れるように変えていったわ。

 今は私の貸し切りね。


 と思ったら誰か来た。


「お久しぶりですね、アクア」

「久しぶりね、ボア。なあに、誰にも相手されずに眠ったままだったんじゃない。今さら需要があったの? よかったわね」

「ええ。レイシアという子が私に聖歌と聖詠、それとよく分かんないけどスーハー? ってものを捧げてくれたからいろんなことを思い出したの」


「レイシア……。何やってるのよ」


「わたくし、レイシアの守護になろうかと……」

「ちょっと待った―――――!」


 何やってるのレイシア! 人たらし? いや、神たらし!


「レイシアは私が育てたの! 私が守護してるのよ!」


「あら? 独占してませんよね。何人かの神の影響がありましたわよ」


 ……あいつらのせいか。


「それにしてもお疲れのようですね。忙しいの?」

「ええ。私のレイシアのために温泉をもう一つ湧き出させようと思っているのよ。やっと災害の復興はできたから、次はレイシアのためにね。レイシアから直々に願われたんですもの。あなたとは違ってね」


 でもさ、温泉出すのって難しいし大変なのよ。地下水で土掘るのってかなりの難易度なのよ。


「あら、でしたらわたくしがお手伝いしましょうか? ご存じの通りわたくしは森の女神。木々の根っこをずらしたりすれば、地下に細い道筋を作ることぐらい簡単ですわ」


「本当?! いやいや、何を要求されるか分かったものじゃないわ」


「疑り深いのね。大したことじゃないわよ。たまにこうして温泉につからせてもらうのと、レイシアに祝福をかけさせてもらうくらいね」


「めちゃくちゃ要求してるし!」

「大したことじゃないでしょ。あなたから奪う訳じゃないし。温泉早く湧き出させたいんでしょう?」


 はぁ~。まあいいか。女神同士けんかしてもしょうがないな。こうして裸の付き合いしているんだし……って、プロポーションよすぎじゃない、ボア。


 なんだろう、この敗北感。いやいや、私だって女神。負けていられないわ。


「いい! レイシアは私が育てたんだからね。持って行かないでね」

「はいはい。分かっていますよ」



 月の光がきれいだ。温泉に美女二人。ボアか。あんまりつるまなかったけど、仲良くしてもいいかな。


 ……温泉無礼。この温泉のモットーだしね。温泉で喧嘩しても意味ないわね。


「酒飲める?」

「もちろん」


 よし、温泉で一杯やりますか。この間オヤマーの米酒が奉納されていたよね。

 わたしは、教会から酒を引き寄せ、ボアと義兄弟のグラスを交わした。

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