十部 246話裏話 限定SS ボアの話
※これはサポーター限定SSの作品を手直ししたものです。本編には入っておりません。サポーター様に感謝を!
久しぶりに教会からオルガンの音がする。
今更、何を求めようというのでしょう。
神父たちが俺を無視するように仕向けたのはどれほど前でしょう?
心ある領民たちが年老いなくなった今、誰がわたくしに気をむけるというのかしら。
せいぜいが困りごとを頼みに来ただけだろう。
なぜ、わたくしを信じぬものに力を貸そうと思うのかしら。いい加減すぎるわね。
って、あれ? 拝んでいるんじゃないの? なに? 領民みんなで何しているのよ! 変な動きなのに楽しそうね。……じゃないわ! 何してくれてんのよ! 教会よ、ここ!
そう思っていたら、神父が祈りの言葉をわたくしに捧げ始めました。今までぼんやりと聞こえていたのは祈りの言葉だったのね。なるほど。神父が変わってから少しはましになっていたようです。気がつくほどではなかったけれど。
それまでが酷すぎたからね。それに神父一人じゃどうにも届かないのは仕方ないじゃない。
……いまさらよ。
それでも、祈りを捧げられるのってやっぱりいいわね。まあ、これくらいじゃどうにもできないけどね。
歌? 聖歌? なぜ!
遥か昔に途絶えたんじゃないの?
これ、わたくしに?
ちょっと! どういう事? だれ? 誰が歌っているの? よく見えないわ!
雲をどかせて光を届けた。可憐な少女がわたくしのために聖歌を捧げている。
わたくしの目から涙がこぼれた。レイシア? レイシアって言うの? そう。気に入ったわ。私の加護を与えようかしら。
領民が感動している。私に祈りを捧げている。
そうね。この森も荒れ果てているわね。少しくらい森の加護を強化してもいいわ。
・・・皆がわたくしをこれからも祈るというなら。
まずは、危険な魔物が入ってこないようにしましょうか。信仰には恵みを。それが節理。上辺だけでない、心からの信仰を取り戻せるかな? わたくしが恵みを与えたいと思えるほどの信仰が領民に溢れた時、昔のように祝福を与えましょう。
神を見捨てた地は多い。そこは神に見捨てられた地になる。ここクマデも一度はわたくしを見捨てた地。元の関係に戻れるほどの願いと祈りが来ることを、わたくしは願おう。
選ぶのはあなた達よ。気づきなさい。祈りこそ神に力を与えるものよ。
久しぶりの聖歌と大勢からの祈りに、わたくしの意識が覚醒された。
明日から、祈りが続きますように。また見捨てないといけない事が起きませんように。わたくしはこの森を、領民を守る神でありたいのよ。
なるほど。レイシア、あなたのおかげなのね。気に入ったわ! やはり祝福を与えましょう。
これで、あなたがどこにいても、わたくしはあなたを感じることが出来るわ。
本当に困った時は私を頼みなさい。いつでも力になってあげるわ。
こうして、レイシアに祝福をあたえたが、何この子! 祝福貰い過ぎじゃない! 他の神の影響をどれだけ受けているの! と驚くほど祝福の多さに戸惑った。
わたくしのいとし子にしたかったのに……。
それでも、この子を逃す気はない。見守ろうと決めた。
領民よ! わたくしに力を与えるため毎日祈るのよ! レイシアを見守るためには力が足りないわ。みんなで幸せになりましょう!
わたくしは俄然やる気になった。この領を幸せにして、祝福を与えまくろう。そうして神と人の楽園を作って、レイシアに会いに行こう! 力をつけねば! わたくしのレイシアのために。
これからどう領民を導くか。わたくしは、考えるだけで楽しくなってきた。
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