クロマチック・クローバー ~人心喰らいの竜狩り~

鴇色 大葉

第1話 漂着-①

 ミー二は普段とは違う風の匂いで目が覚めた。ぼやけた目で部屋を見渡すと、天井は崩壊しており、折れた梁の隙間からは、階層世界の綺麗な青空が広がっているのが見える。

 

 目覚めの景色としては悪くないが、自身に降りかかっている問題の原因であることを段々と思い出し、意識が覚醒していく。


 ミー二はベッドから起き上がると左手で前髪をかき上げ、大きなあくびをした。      (クシュウィルを抜けるのに三日、ミナルデンにたどり着くのに五日はかかる。 さっさとこの島から動けるようにしないと…… よし!)


 ミー二は短く息を吐き、目を開けて立ち上がった。眠気とはここでおさらばして、一日を元気よく生きていくために切り替える。

 片手で簡単にベッドを整えると枕元に置いてある義手を右肩にはめ込んだ。


 ミー二は義手を左手で押さえながら自身の中に広がるを開いた。

 

 黄金の光に照らされる一面の野原。無重力。英雄の背中。

 

 ミー二はその世界の中から取り出すように一本の糸を撚る。糸は半透明で少し黄色。体の中心で生まれたその糸は右肩から義手の腕へ。そこから手首を通り、親指に辿りつく。

 そして、義手の中にある世界へと糸で接続すると、垂れ下がっていた義手の親指に感覚が

 また一本、糸を撚っては指へと接続していき、拳を握って力加減を調整する。

 (こんなもんかな。 魔術の調子は悪くない)

 

 右腕を動かせるように戻した後、そこからのミー二の動きは速かった。寝間着を脱ぎ、畳んでまとめる。クローゼットから少し大きめの白いシャツを着ると、左袖のボタンはすべて留めて、右袖は少し捲る。昨日脱いだまま、椅子に掛けてあった緑の制服のスカートを穿いて、シャツをしまい、赤の革ベルトで留める。


 腕に巻いた組紐でベージュの髪を後ろで一つにまとめて、ブーツを履いた。作業机にある手袋をスカートのポッケに入れると部屋を出た。

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