シニガミと呼ばれる男
希塔司
BATTLE9 間違った正義をかざす科学者
EP.1 「シニガミと呼ばれる男」
「はぁはぁはぁ...」
街が崩壊し、おれは1人で戦っている。
相手は11人、どこから現れたんだかわからない。過去の行いの罰なのか、破滅の神の刺客なのか、あるいは別世界からの侵略なのか。
空には巨大なワームホールが広がり、街を少しずつ吸い込んでいる。ボスであろう女の子の目を見ると、その目はおれと同じ赤黒い瞳だった。
まるで全てに絶望したかの様に見つめてその子はこう言った。
「どうしてあなたはまだ戦い続けるの?
あなたは私と同じ...」
え、よく聞こえない。なんて話しているんだ?
大事なところが聞こえないなんてご都合主義すぎる。街の人々の声援がうるさいからか、今更すぎるだろと感じる。
「シニガミ様がんばれー!」
「負けないでー!またこの世界を守って!」
だが悪くない。声援を武器にして最後の力を振り絞る。
「ビリーヴアロー!」
右手に魔力をこめながら前にかざして弓の形状を作り、弦を引き矢を放つ。
だがあの子も同時に技を仕掛けていく。
「ショックスペースディストラクト」
彼女の両手に黒い球上のエネルギーが作られておれに向かって放たれる。おれの渾身の技がその黒い球に吸い込まれさらにエネルギーを増していく。
そんな、幾多の敵を倒したおれの技が全て完封されてしまった。
そしてその黒い球はおれに直撃をして想像を絶する痛みがおれを襲った。
「ぐわぁぁー!!?」
ーーーーーー
「はっ!」
そこで目が覚めた。
.......
時計を確認したらまだ夜中の3時。
ああ、またあの夢か...
一体いつまで続くんだ。このわけわかんねえ夢は...
あの日からおれはずっと1人で生きている。
いやそれがおれにとって罰なんだから。
そう、これでよかったんだ。
例え世界の理だったとしても、普通の人間なら失った過去を取り戻せるとしたら誰だってそうするだろ?
そう、これでみんな幸せなんだ。
気がついたら2度寝をしてしまっていた。
再び時計を確認したら朝の10時。
そうか、あれからすぐにまた寝落ちしたんだな。あんな夢を毎日繰り返されたらさすがにいつか病んでしまいそうだから無理もない。
起き上がりカーテンを開き陽の光を浴びる。
そして体を伸ばしてリラックスをする。顔を洗い口の中をキレイにし、その間にコーヒーを淹れる。
これがモーニングルーティンの最初だ。
それからベランダに出て高層マンションが立ち並ぶ繁華街を見ながらタバコを吸う。
住んでるマンションもそこそこ階数や部屋が広いからそこからの眺めを見て心を落ち着かせる。
そう、最近は毎日そんな感じだ。
それからテレビをつけて大まかにニュースを見たりAIデバイスを開いて事件などがないか確認する。
なにをやってるかは後ほどわかる。
それからシャワーを浴びて支度をして出かけた。
普段はバイクで出かけるからエンジンをかけて今日はどこを回ろうかを決める。
風を切る感覚、春になってようやく暖かくなったおかげで少し薄いコートコーデでバイクを運転できるのはすごい楽になった。
よし、今日はデバイスで調べたあのオシャレなカフェにいって美味しいコーヒーやスイーツを食べに行こう。
それから欲しい服を買ったりしてご飯を食べに行こう。
バイクを走らせると見覚えのある並木通りを通った。
ちょうど桜が咲いている。風で桜の花びらが舞ったり道路の隅に溜まったりしている。
そういえばあれはいつだったろ、あいつらと一緒に歩いたり後ろに乗せて走らせたりしたなぁ...
そう懐かしい気持ちになった。
ーーーーーー
さぁて華山に着いた。
ここはファッションの流行地。たくさんのオシャレな店が立ち並ぶ若者の街そのもの。
このスクランブル交差点だったり待ち合わせには名猫クー像が立っていて観光客が写真を撮ったりしている。
バイクを駐車場に停めて目的地へ向かう。
まずは有名なスイーツを出しているカフェだ。街のビジョンをふと眺める。
「ファッションモデルNaNa 絡庵出身の一般人と交際疑惑」
「物理学者 遠山日菜 最優秀物理学賞受賞」
「連合国首相 松早優 結婚 お相手は高校時代の同級生」
「さまざまなイラストを描いていく現代のハイデン 一ノ瀬 絵里那」
いろいろなニュースが流れてきた。
最近確かにいろいろとビッグニュースになりそうな記事ばかり出てくるからなー。
そうか...
みんな今を幸せに生きているんだな。よかった、本当によかったよ。
ーーーーーー
さぁて、カフェに着いたな!
今日はこのチョコチップパンケーキにしよう。
昔からチョコは好きだからいろんなカフェに行き、コーヒーに合うチョコのスイーツを食べ歩いたもんだ。
しばらくデバイスで最新情報だったり作曲をしたりしていった中なんだか外が騒がしくなっている。
ふとガラス越しに外を見てみると...
なんだ?うずくまってる男がいる。
そしてその男の周囲に漂うまるでよくアニメにでてくるようなゴミやドブの匂いを出すような黒味がかった緑のものを撒き散らしている。
すぐに会計を済ませて外に行って様子を見る。
一体なんなんだと思い近くに寄ってみると...
「た、助け...助けて...くれ.....う、うぐ、ぐぐぎ...」
一体なんなんだ...この異臭。
まさかこの男...
溶けてきてるのか.....!?
男は悶え叫びながら溶けていった...。
その瞬間、建物が次々と溶け始めていった。
これはマズイと今までの経験から察した。
「みんな、早く逃げろ!!このままじゃあの男のようにみんな溶けて死ぬぞ!」
そうおれが言うと周りの人たちがきゃーやうわーと言い出し逃げようとした。
「無駄だ、もうお前らに逃げ場なんてない。お前らもあの男と同じように溶けて死んでいくんだよ。そうさ、みんな液体のように溶けて一つになるんだよ。」
横路地からそう語りかけてきた男が現れる。
その男の頬や肌は若干火傷のような痕がある。
「お前、誰だ?なんであの男は溶けて死んだんだ?」
少しでも情報を知りたいおれは相手にそう聞く。
「知りたければおれと戦え、まぁおれに勝てるようなやつはいない。この能力があればおれは無敵だからな。」
「どうしよ、私たち死んじゃうの?」
「こんなときあの人がいれば...」
周りの人たちが恐怖の顔で引き攣っている。
いかにもな挑発をしてきた。
いくらおれでもこんな得体もしれないやつと戦いたくなんてない。
ただ、もしいま戦わなければ周りの人がみんなあの男と同じように死ぬと思うと...
なぁ駄女神さんよ。これもおれに向けての罰なのか...
もしそうならとんだ痛い女神だこと。
そう内心で思いながら、覚悟を決める。
「はぁ~...全く無知は罪ってこのことだな。これで戦うのは何回目だ?9回目か。戦いすぎだよな全く。」
「何を言ってる?おれは貴様のことなんて知らないぞ。」
「そりゃそうさ、おれのことなんて知らないはずだ。それがおれにとっての罰なんだから。ただ、例えみんながおれのこと知らなくたって。例えおれが1人になったって...」
「それでもおれは、おれの信じる希望を貫くだけ!」
おれは信道瑞希、おれを知る人間はいない...
to be continued
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