25 クローリーの養殖
ローラさんからは、あの後の事を聴くことができた。
あの3人はギルマスに怒られ、暫くギルドを出禁になったようだ。
最近の3人は依頼を失敗しまくっていて、ドンドン落ちぶれていることを笑顔で教えてくれた。
ステータスもそれなりにあるはずの3人が落ちぶれたのは、きっと『軽量化』の効果が切れてしまったのだろうと推測した。
剣や盾を持たず、装備でさえもあの時の物ではなく安物を身につけていたことからも、効果切れは容易に想像できた。
それなりに長く話しをしていると、カタリナが「そろそろ行かない?」と僕の腕を軽く引いてくるので、ついでに良い依頼は無いかと確認する。
最近は小さい魔石が不足気味というので少し買取価格が高くなっているのだとか。大した金額にはならないが、クローリーはレベル1なので修業に丁度良いと「できるだけ取ってきます」と伝え迷宮に向かった。
さっそく迷宮へ向かい、1階層からゴブリンを押さえつけ、クローリーのレベル上げを始めた。
流れ作業の用意2人でゴブリンを捕まえてはクローリーの元まで引きずってくる。
僕が貸した短剣で「死ぬでーす!」と物騒な掛け声と共に止めを刺してゆくクローリー。レベルに合わせて少しづつ階層を上げつつ、ゴブリンとウルフの魔石を集め続けた。
「これでレベル10に成ったです!」
「「おめでとー!」」
ピョンピョン跳ねて喜ぶクローリーと、拍手でそれを祝福する僕とカタリナ。
「新しく『浄化』を覚えたです!」
「おお?」
「それって、解毒とかするやつだよね?」
「多分それです!『あらゆる毒を洗い流す』と書いてるです!『回復』も合わせれば無敵でーす!」
――――――
『回復』傷を癒す治癒の光
『浄化』あらゆる毒を洗い流す
――――――
クローリーが神託の儀で授かっていたのは『回復』であった。神官の基本のスキルではあるが、聖女であっても同じものなのだろうか?さらに今回『浄化』を得たので、回復職として頼れる存在になるだろうと期待が高まる。
それなりに魔石も集めたので、多分大丈夫だろうと10階層のボスへ挑戦した。
見慣れた召喚陣からボスが登場する。
以前はサクッと3人が倒していたハイウルフにまたがるハイゴブリン。ウルズの迷宮とはレベルが違い、10階層からそれなりに強敵に見えた。
一応僕がクローリーを守るように陣取り、カタリナに頑張ってもらおうと思っていた。
カタリナが一気に距離を詰め、『爆裂拳』でけん制し、時折両手のガードから火薬入りの球を飛ばし攪乱する。そして怯んだハイウルフに『正拳突き』に『連撃Ⅱ』を付与して強烈な一撃を放っていた。
さすが帝都の迷宮ボス。
一撃でハイウルフは倒し切ってはいないが、かなり嫌な鳴き声を上げながらぐったりと倒れ込み、乗っていたハイゴブリンが横に転がった。その隙に、もう大丈夫だろうと僕も飛び出し、ハイゴブリンの腹部に剣を突き立てた。
「それほど苦戦もしなかったね。それにまだ死んでないからね…クローリー、やっちゃって良いよ?」
「そうだね。手加減したわけじゃないけど、ハイウルフもまだ生きてる。ちゃんと押さえつけとくから、頑張って!」
少しビビってしまっているクローリーが、恐る恐る近づき僕から短剣を受け取る。
そしていつもの「死ぬでーす!」と気合の一撃で止めを刺した。だがその叫びに反して、クローリーは少し涙目であった。
「怖かったです」
そうぼやくクローリーだが、レベルは13まで上がったようだ。
この調子で11階層から養殖を続けようと、出現した階段を登った。
「そういえば、初回特典の宝箱は無いのです?」
階段の途中で立ち止まり、クローリーが首をかしげながら質問してきた。
「ああ、失敗したね。これならカタリナとクローリーの2人で一度討伐してもらった方が良かったかも…」
「そっか!イテイオは一度ここ通ってるんだもんね」
迷宮のボスは一人でもその階層のボスの討伐者がいると、初回特典の宝箱が出てこない。そのことをすっかり忘れてしまっていた。
「僕は何もしないで素通りしてただけだから忘れてたよ。次の20階層も通過してるから、そっちは2人でやる?」
「えっ?2人で行けそう?」
カタリナにそう言われて、20階層で
あの3人の戦いは参考にならないかな?カタリナならいける?同じ
「もう少しレベル上げたらいける?」
僕は半信半疑で答える。
「無理はしない方が良いかも。でも行けそうなら行ってみようね。その前に、20階層まで何があるか分からないしレベル上げなきゃ!」
「そうです!レベル上げでーす!」
階段を抜ける前に、その段差に腰掛けながら遅めの昼食を食べる。
お腹を満たすと夕刻までは時間があるので、もう少しだけ狩りを続けることにした。
11階層からはオークとオーガ、上の方に行くと稀にその上位種も出る。
後は本当に稀だが
そして14階層まで進むと徐々に魔物の強さも上がり、今のレベルでは厳しくなってきたのを感じた。
暫くレベル上げをしなくてはと思った。
「そろそろ帰ろうか」
「そうだよね。もう良い時間だし、お腹も減ったしね」
「減ったです!」
確かにお腹が減ったと感じ、戻ることに決め13階層への階段に向かって足を進めた時、見知った冒険者と遭遇してしまう。
「よお。両手に花とは良い身分だな」
立ちふさがる3人。
僕たちの後でも付けていたのだろうか。
その3人の様子から、和気あいあいと話をする雰囲気では無いということだけは感じ取れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます