17 初めての宝箱
ボス部屋の入り口がガコンという大きな音を立て閉まった。
そして光りを放つ召喚陣。
この10階層はオークと一緒にコボルトが5体程度湧くと聞いている。
コボルトの湧く数はある程度ランダムのようだが、それだけを聞くと問題ないように思えた。
だが実際はオークと言ってもボス部屋前に居たオークとは少しだけレベルが高く手強いらしい。
少しだけってどれぐらい?
そんなことを思いながらも警戒しつつ召喚されてゆくオークたちを見守った。今回はコボルトが3体のようだ。当たり?いやハズレかも。ギルドからは数が少ない方が各個体が強くなるという話も聞いていた。
2人で臨む初めてのボス戦。
気合の声をあげながら、左端のコボルトの1体に突っ込んでゆくカタリナ。
走り込んでからの『正拳突き』により、コボルトの左肩がはじけ飛んでいた。
僕も負けてはいられないと新調した剣を握り締め、駆け出して右側から一気に横薙ぎにした。標的となったコボルトの脇が嫌な音を立てつつ『く』の字に曲がり、そのまま地面を転がった。
これなら何とかなるだろう。そう思ってカタリナの方を見ると、あっさりもう1体を倒し終わったようで、中央でオークと向き合っていた。
ここはカタリナに任せるか。
歯ごたえの無い相手に拍子抜けしてカタリナに丸投げした。
どうやらそれは正解のようですぐにカタリナの『正拳突き』によりバインとお腹が撃ち抜かれ、そのまま後ろにひっくり返るオークを眺めていた。
「なんか拍子抜け…だけどこれで初踏破だね!」
「そうだね。簡単過ぎて最後はもうカタリナに任せていいかな?って思ったもん」
僕の言葉に嬉しそうにしながら笑顔を見せていたカタリナだが、中央に湧いた宝箱を見て動きを止めた。
ごくりと喉が鳴ってしまう。
やっぱり緊張するよね。
「じゃあ、開けようか…」
「うん」
僕たちは示し合わせたように2人で宝箱に近づき、一緒に宝箱を開けた。
「これは…」
「杖と腕輪?あっ、宝石も少し入ってるね」
カタリナがそう言いながらも装備を両手に持ち僕に見せてくる。
「思ったよりしょぼいね」
「でもこの腕輪とか、意外とレアだったりするかもよ?」
「まあ10階層だし…」
「だよね」
そんな感じであっさり制覇してしまった僕たちは、一旦11階層に進むと帰還用召喚陣を使い入り口へ出ると、軽い足取りでギルドまで戻った。
「10階層突破したのですね。おめでとうございます。これで御二方はE級となります。ギルドカード更新しときますね」
受付のレイティアさんがそう言って拍手してくれた。
初めてのギルドカードのランクアップ。そう言えば帝都ではランクアップのことは言われなかったな。そう思ってレイティアさんに聞くと、パーティでは貢献ポイントを設定しておくそうで、今は均等に設定しているとのこと。
パーティの役割によっては貢献度設定を低く設定したり、荷物持ちの臨時メンバーなどは『無し』で設定することもある。と教えてくれた。
気落ちするものの、十分に有りえる話だと思った。
でなければ僕は今頃、肩書だけはCランク冒険者だったかもしれない。
そんなことで少し気落ちはしたものの、宝箱のアイテムの査定に移るとすぐに忘れてしまう単純な僕。きっと『精神耐性』が仕事をしているのだろう。
「これは、火の杖ですね。品質はDと言ったところでしょう。腕輪は…敏捷強化のようです。+5で品質は同じくD程度でしょうね。一応迷宮産なので杖が銀貨5枚、腕輪は銀貨7枚ってところでしょうか…宝石は銀貨1枚で」
宝箱から出た物をギルドの鑑定員が値踏みした後、元の持ち場へと戻っていった。
「まあ、迷宮の10階層じゃ当たりじゃないですか?売ります?」
それなりの物が出たようで、2人で相談した結果、杖は不要だけど腕輪はカタリナに装備してもらうことにした。
そしてオーク肉や魔石も一緒に買い取ってもらい、銀貨7枚と銅貨が5枚。できれば金貨1枚ほどあれば魔法の袋の一番小さなのが買えたのに、と思ってしまった。
「明日からまた少し頑張れば、すぐに手が届くわよきっと」
「そうだね。で、どうする?」
「ん?迷宮先に進むんじゃないの?」
僕の言葉にカタリナが首をかしげる。
「えっと、この近くの遺跡の方も、実は気になってたりして…」
そう言いながら素材の査定中に暇を持て余した僕が、何気に見ていた掲示板で見つけた依頼書をカタリナに見せる。
それには街の西の遺跡内部に大量の赤毛猿が確認されたらしく、至急駆除してほしいと書いてある。
受付に話を聞くと、赤毛猿は獰猛で頭も良く統率力があるようで、かなり厄介者らしく、このままほっておくとさらに数を増え、それらが周りに広がってしまうのだと教えてもらった。
今のところ被害もないため、依頼のランクはDランクなので「2人は丁度Eランクになったし受けれるわよ」と言ってくれた。
依頼書を見ていた時は依頼のランクなど気にしていなかったからホッと胸を撫でおろした。
これでランクアップしていなければレイティアさんに『僕ちゃんにはまだ早いわよ?レベルを上げて出直しておいで』と冷たい目で言われ恥をかくところだった。
「報酬は1体で銅貨5枚?どのぐらい湧いてるんですか?」
僕が妄想を繰り広げている間に、カタリナが詳細を確認している。
「どうでしょう。一応20体ぐらいは確認できてるって話のようです」
「20体で金貨1枚、100,000ロゼか…魔法の袋に手が届くね」
「やるなら他のパーティはまだ受けてないので受理してお任せしますよ?」
カタリナが僕の方を見てくるので頷いておく。
どうやらカタリナも納得したようで依頼を受けることになった。
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