第49話 品定め(二)
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拠点で武器や馬具の点検をしていた趙雲は呂布から声を掛けられた。
「趙雲、護衛を頼めるか?」
「承知致しました」
丞相に用があるという呂布は護衛役に趙雲を指名して丞相府に向かった。張遼と華雄は郭嘉から用事を頼まれたと言って早朝から外出していたので待機しているのが趙雲のみという事情もあった。
「昨晩連絡があって劉虞と簡雍が処断される事が正式に決まった」
「今から実施されるのですか?」
「劉虞は利用価値があるからな。さっさと処断するのが得策だ」
「なるほど」
「自分に歯向かえばこのような最期を迎える事になるぞという御上からの忠告の意味合いもあるだろう」
呂布は丞相府に到着すると趙雲に待機を命じて中に入った。しばらくすると呂布は何進を護衛する形で外に出て来た。
「この男が趙雲だ」
「趙雲と申します」
「なるほど」
何進は一言だけ言うと値踏みするように趙雲を見た。呂布は何も言わず黙って見ているだけなので趙雲は訳が分からず首を傾げた。しばらくすると何進は一変して趙雲に色々尋ねるようになり、趙雲も丞相相手に無礼があれば呂布に恥を掻かせてしまうと考えて丁寧に答えていた。
「呂布、この男なら安心して任せる事が出来ると思うぞ」
「そうか。薛蘭と鍾繇に感謝だな」
「呂布殿、何の話をされているのですか?」
趙雲は二人の会話が意味するところが全く理解出来なかったので我慢できず口を開いた。
「用が終わってから伝えようと思ったが、丞相どうする?」
「お前に任せる」
「趙雲、丞相の娘である貂蝉殿は知っているな?」
「はい。晋陽に戻ってから護衛を任されておりましたので」
「俺は丞相から貂蝉殿の相手探しを任されていたのだ」
「どういう意味でしょうか?」
「貂蝉殿をお前に嫁がせる事が決まった。たった今だ」
趙雲は降って湧いた話について行けず呆けた表情になった。
「呂布、経緯を含めて説明してやってくれ」
「俺がするのか?」
「その方が理解しやすい筈だ」
「そういう事なら仕方ない」
呂布は劉弁と何進から貂蝉の婿探しを依頼されたので并州の関係者から選ぶ方向で考えていた。帰国後、薛蘭・鍾繇・郭図・郭嘉の四人を交えて人選を進めて趙雲を候補者に決めた。その後に長城での役目を終えた華雄と趙雲が晋陽に戻ったので趙雲を貂蝉の護衛役に付けて相性を見定めた。趙雲は貂蝉の素性を聞いたが変に畏まる事なく普段通りの態度で接したので貂蝉も構える事なく趙雲に接した。折を見て貂蝉に訊ねたところ趙雲なら信頼出来ると返事が来たので何進に書簡を送って機会があれば趙雲を洛陽に連れて来ると約束した。
「縁談は幾度となく打診はあったが儂の権力目当てで手を挙げている奴が大半で頭を悩ませていた。御上から呂布に打診するのはどうかと助言されたので依頼したのだ」
「お前に黙っていたのは悪いと自覚しているが、変に構えられても困ると思っていたからな」
趙雲以外の兵士は貂蝉が丞相の義娘だと聞いてぎこちない態度を取る者が多数を占めたが趙雲はそのような事がなかった。自身は兵士に対して客人を緊張させるような態度を取るなと注意していた。その事も貂蝉の好感度を上げる事に繋がっていた。
「今すぐにとは言わん。熟慮した上で返事を聞かせてくれ」
「若輩者ですがお受けしたいと考えております」
「良いのか?」
「この期に及んで断るようなら男が廃ります」
喜んだ何進は心配の種が一つ消えたと喜び涙を流した。それを見た呂布は丞相ともあろう男が泣いてどうすると言って呆れていたが、心の中では子の幸せを願う親なら当然の事だと納得していた。
*****
劉虞が処断される日、呂布は城外に設けられた刑場に入った。少し遅れて近衛軍に護衛された劉弁と何進も刑場に到着した。
「劉虞、言いたい事はあるか?」
「貴様が暗愚であれば儂が天下を治めていた」
「そうか」
「そうか、だと?」
「他に何と言えば良いのだ?」
「ぐぬぬ…」
劉虞は感情的に喚き散らし、対する劉弁は淡々と答えていた。
「配下を軽んじて信頼だけでなく国を失った者を暗愚とは言わないのか?」
「儂が…」
流れ者である簡雍の口車に乗せられてその仲間の張飛に軍権を与えて冀州軍を壊滅に近い状態に陥れた劉虞はこの期に及んで自身が暗愚だと気付かされた。
「謀叛を起こして失敗すればどのような最期になるか分かっているな?」
「…」
「劉虞と簡雍を死罪とする。速やかに首を刎ねよ」
劉虞と簡雍はその場で首を刎ねられ見せしめの為に晒された。呂布たちは傍らにて一部始終を見届けると刑場を後にした。
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