第4話 十常侍の乱(一)
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呂布の仲介で丁原の配下に加わった郭図と鐘繇は朝廷への出仕も引き続きしており、半ば間諜的に動いていた。十常侍側に付いている郭図が行きつけの酒家に顔を出すと、呂布が一足早く飲み始めていた。
「呂布殿、何皇后が裏切りましたよ」
「それはおかしいだろう。あの時に何進が直接注意して聞き入れた筈だぞ」
「十常侍が何進と手打ちをしたいと申し出たので弁皇子の即位を条件に承諾したようです」
「手打ちなんてするわけないだろう。何皇后は馬鹿じゃないのか」
「それだけ焦っているのですよ」
「確かに協皇子の方が聡明だと評判だからな」
「董太后が協皇子に執心ですから」
「後宮の内部抗争も絡んでいるのか。俺たちからしたら迷惑極まりないぞ」
前世と同じ流れなので呂布自身も状況を把握しているが政治を顧みず権力争いに終始する連中の様子を聞いて馬鹿らしくなっていた。
「呂布殿はどちらに付くのですか?」
「大将が何進に付くと言っている以上従うのが筋だぞ」
「でしょうね。私も同意見です」
「流れ的には何皇后が何進を宮中に呼び出して十常侍と手打ちをさせる形か」
「表向きはそうですが…」
「そこで暗殺する気だな。どさくさ紛れに何皇后も殺られるんじゃないのか?」
「ご明察です。董太后が指示を出したときいています」
「とんでもない婆さんだな」
「平民が皇后の地位に居るのが許せないと」
「貴族様は恐ろしいな」
呂布は自分の立場が悪くなろうとも主の地位にある者を裏切らないと誓っているので主の丁原が味方すると言った何進に付く事にしているが、郭図の話を聞いている内に獅子身中の虫になっている何皇后もどさくさ紛れに始末した方が丸く収まると思うようになった。
「何進の護衛を増やした方が良いでしょう」
「大将に申し入れするとして俺が付くべきだろうな」
「呂布殿が居れば安心ですよ」
「いや、俺一人ではどうにもならん。高順に頼んで焔陣営を出してもらう」
「焔陣営…」
「連中が居れば俺も安心して暴れる事が出来る」
焔陣営は高順率いる部隊の総称であり、呂布率いる部隊を差し置いて幷州軍最強と謳われている。高順以下将兵の力量は平均して高い水準にある事から百戦すれば必ず百勝すると言われている。味方からすれば頼もしく、敵からすれば厄介極まりない存在である。
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「何進の護衛にお前と焔陣営を使えと?」
「十常侍にビビって外出も控えていると言うじゃないですか。大将軍がそんな姿勢なら将兵の士気に関わりますよ」
「何進は健在で十常侍には屈しない姿勢を内外に見せつけろと言うのだな」
「そんな所です」
「高順、お前の意見を聞かせてくれ」
「呂布殿の意見に賛成です」
「ならば呂布と高順で護衛に当たると何進に伝えよう」
話を終えた丁原はその足で大将軍府に向かったので呂布と高順がその場に残る形になった。高順は椅子に座ると目の前に置かれていた水を飲み干すと呂布の方へ身体を向けた。その表情は普段と異なり不満を抱いているのが明らかだった。
「呂布殿、本音を言えば焔陣営を使いたくないのだ」
「言いたい事は理解しているつもりだ。俺もあんな奴の警護なんてやりたくない」
「醜い権力争いの道具にされるのが腹立たしい」
「朝廷がそれだけ腐っているという事だな」
「古より宦官が力を持てば碌な事が無いのは明らかなのに上の連中は分からんのか…」
「分からんから俺たちのように巻き込まれる者が居るわけだ。まあ大将が我々と同じ気持ちを抱いている事が救いだな」
「そうでなければやってられんぞ」
「近いうちに十常侍が喧嘩を売ってくる事は間違いない。その時には精々憂さ晴らしをするしかないだろう?あんたも俺と同じ気持ちを抱いてると思っているが」
「当たり前だ。儂も徹底的にやらせてもらうぞ」
大将軍府で何進と対面した丁原は十常侍による襲撃の可能性が高い事を示唆した上で幷州軍の精鋭を護衛に付けたいと申し出た。何進も自身の手勢が役に立たない事を理由に大将軍府で閉じ籠っていたが幷州軍の護衛が付くなら外に出られると了承した。
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