呂布が行く
あひるさん
第一章 十常侍の乱
第1話 徐州にて死す
ご覧頂きましてありがとうございます。
ご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
◯◯が行くシリーズの第三弾になります。
人間関係や登場人物が演義・正史とは大幅に異なりますのでご了承下さい。
「織田信行が行く」と平行掲載なので不定期掲載になります。
=====
呂布は徐州において、自身の失態に加えて味方の離反が重なり曹操軍との決戦に敗れた。囚われの身になった呂布は曹操の前に引き出された。
「曹操、俺を配下にすれば天下は容易く手に入れる事が出来るぞ」
「その理由は?」
「お前の前に立ちはだかる敵を俺が全て薙ぎ倒してやるからだ」
「確かに貴様の武があれば天下を手に入れるのは容易いだろうな」
「丞相、お待ち下さい」
「劉備殿、どうされた?」
「丞相は四人目になられるつもりですか?」
「四人目?」
「丁原・董卓・某。呂布に裏切られた者で生きているのは某だけ」
呂布は丁原と董卓を裏切りの末に殺害、劉備から徐州を簒奪した。劉備はそれを指摘して過ちを繰り返すのかと曹操に問い掛けた。
「よく言ってくれた。危うく甘言に騙されるところだった」
「曹操、騙されるな。劉備こそお前にとって獅子身中の虫になるのだぞ!」
「そうなるかもしれんが、そうならないかもしれん。だが貴様の場合は既に前科があるからな」
「後悔する事になるぞ…」
「夏候惇」
「はっ」
「呂布の首を刎ねて軍門に晒せ」
「御意」
「曹操!」
呂布は首を刎ねられて軍門に晒された。徐州の民からは劉備に助けれられたのに裏切るからこのような姿を晒す事になるのだと嘲笑された。
*****
魏王曹操が病に倒れて余命幾ばくも無いという噂が流れ始めた直後、大将軍に任じられていた夏候惇が見舞いに訪れた。
「夏候惇、儂は後悔している」
「何を後悔している?」
「或る男を配下に加えなかった事だ」
「関羽か?」
「違う。あの男はどう足掻いても手に入れる事は不可能だ」
「なら誰なのだ?」
「呂布…」
「ちょっと待て。丁原や董卓と同じ末路を辿るつもりだったのか?」
「馬鹿な事を言うな。丁原と董卓は配下に恵まれず呂布の台頭を許した。だが劉備はどうだ?」
「関羽と張飛」
「奴の身近には猛将と呼ばれる者が居たから呂布も安易に手を出せなかった」
「言われてみればその通りだが…」
「あの頃の私には許褚と夏侯淵が居た。それにお前も控えていた」
「あの頃なら呂布が不穏な動きをしても抑え込めたな」
「それに呂布が言った事を覚えているか?」
「劉備はお前にとって獅子身中の虫になる、だったか?」
「私はそれを無視して呂布を斬ったが、劉備の台頭を許して多くの友を失った」
「曹操…」
「あの時呂布を用いていれば」
「劉備の台頭を許さず、天下をその手に握っていたか?」
「間違いなく握っていた」
「魏帝曹操か…」
「その通りだ」
「さぞかし滑稽な姿に見えただろうな」
「失礼な事を平気で言うのはお前と郭嘉くらいだ。ゴホッ、ゴホッ」
「大丈夫か?」
「あぁ」
曹操は劉備の口車に乗って呂布を斬った事を悔やみ、夏候惇は曹操の意思を読み取って命令を違えなかった事を悔やんだ。
今回の対面は盟友と称された二人が顔を合わせる最期の機会になった。曹操はこれから半月後に亡くなり、夏候惇も一年後に亡くなった。
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