ドラゴンハート

バリバリさん

第1話 首切りハイドと弟のウロ

 大地を揺らし、木々を手に持った棍棒で薙ぎ倒しながら迫り来る。

 豚顔に巨大な体のモンスター【オーク】。

 オークに怒り狂いながら棍棒を振り回す。

「お兄やばいよ!!」

 杖を持った青年が、暴れ狂うオークを見ながらそう言い放つ。

「落ち着けウロ」

 片手剣をオークに向けながら後ろにいる弟のウロに向かって優しく声をかける。

「ごめんお兄」

 ウロは兄の声かけによって落ち着きを取り戻していく。

「で、でもどうするあんなに大暴れしているオークと正面で戦うのはお兄でもきついと思うんだけど…」

 オークが振り回す棍棒にすこしでも当たればさすがの兄でも大怪我は免れない。

 ウロは、そのことを心配しながらどう戦うかを兄に聞く。

「いいかウロあいつの腕を一瞬でいいから止めてくれ」

 兄は一言ウロに指示を出した。

 指示を出した後すぐに剣を構える。

「わかったよお兄」

 ウロは、兄の指示を聞きすかさず魔法の準備に取り掛かる。

 杖を前に出し暴れ回るオークに向ける。

「チェーンロック」

 ウロは、静かに魔法を放つ。

 するとオークの足下から鎖があらわれ腕に巻きつく。巻きついた鎖は地中に戻るようにオークの腕を引っ張る。

 オークは突然の出来事に驚きながら鎖に抵抗するが、抵抗むなしく前へと倒れ込む。

 倒れ込んだと同時にオークの首に向かって剣が振り下ろされる。

 オークの太い首をものともせずに一撃で首を断ち切った。


–––––––––––カチンッ–––––

 

 一瞬の戦闘の世界を終わらせるように剣を収める。

「大丈夫かーお兄!!」

 ドタバタと足音を立てながら兄に抱きつくウロ。

「…ん、ああ大丈夫だよありがとな」

 抱きつくウロの頭に手をのせ撫でる。

「いやーさすがだねお兄はこんなに太い首を一発で…首切りハイドで有名になるわけだ」

 ふむふむとハイドが切ったオークを見ながら感心するウロ。

「やめてくれーそのあだ名」

「えーかっこいいじゃんか首切り」

「いいやかっこよくない物騒で怖すぎる…」

 ハイドの首切りが怖くて嫌と聞いて『そこなんだ』と心の中で思った。


「まああだ名の話は今はいいよささっとこいつを解体して持ち帰るぞ」

「了解!!」

 ウロは、ハイドの言葉にすぐに反応して切り替える。

 兄弟は、オークの死体の前に立ち目を閉じる「「いただきます」」

 兄弟は必ず解体などをする前に目を閉じこの一言を言う。

 三秒程経った後に目を開け彼らは解体開始した。

「やるぞ」

「うん、今回はどうする」

「歯と爪だけだな…」

「わかった」

 解体が終わり残った死体は、火で焼いて処理をした。

 

 昼間にオークと接敵しそれから時間は過ぎ日は完全に沈み夜中、兄弟は持ってきた干し肉を、食べながら談笑していた。

「にしてももったいないことしちゃったな」

 ウロは、オークからとれた牙などを見ながらそう呟く。

「仕方ないだろ、もともとゴブリンの群れを探しに来ていたんだし」

「確かにそうだけど…」

 ウロは、少し不満を持ちつつガブっと干し肉を食べる。

 ハイド達は、ギルドの依頼でゴブリンの群れの捜索をしていた。

「ていうかさゴブリンの目撃が多くなってるのってオークのせいだよね。」

「そうだな…多分それで間違いないな」

「なにか気になることがあるの?」

「うん…あのオークは何かを恐れてる感じがしたんだ…」

「恐れってオークが」

「そう恐れ…何か分からないけどこの森には何か強大な存在が生まれたのかもしれない」

 ハイドは、オークと対面していた時から今までずっと嫌な予感がしていた。

「大丈夫かお兄震えてるぞ」

 ハッとハイドは驚く見てもいない何かにいつの間に恐れていたからだ。

「大丈夫ありがとな心配してくれて」

「お兄は一人でよく考え込むからな。もっと僕を頼ってくれよ」

「そうだな俺達ならドラゴンだって怖くないもんな」

「うん!!」

 ハイドの言葉に首を大きく縦に振って肯定した

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