女の子は瓜を抱く

清瀬 六朗

第1話 瓜と空気、朝

 おなかのまんなか、いや、まんなかよりちょっと下にうりを置いていなければいけない。

 両手で軽く支えて、瓜が落ちないようにしなければいけない。

 だから、体は右にも左にも傾けられない。

 姿勢よくしていなければ。

 両手は、ひじをついて、手のひらを下腹のところにやって、微調整できるようにしておく。

 瓜の位置を。

 だから、顔はまっすぐ上に向けて、姿勢正しく寝て、膝は、両膝を均等に軽く折る。

 瓜。

 瓜。

 おなかの上には瓜はない。

 空気が、あるだけ。

 だから、両手の幅を少しずつ縮めていっても、手は何にも触れない。

 両手に縮められた空気の圧力で目が開く。

 オレンジ系のフレグランス、温かい感触でいいんだけど、蒸れるとしつこいな。

 だいたい、オンラインなんだからフレグランスは関係なかった?

 いや。

 そうもいかないか。

 フレグランスでこっちの気分が変わるからね。

 見えているのは白い天井。

 その天井に似合う白い照明はいまは消えている。

 リビングの向こうの窓からほのじろい光が入っているらしい。

 「あ」

 朝になったんだ。

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