転移JKの異世界行進曲
甘い梅干し
1. 裸
「..........ぃ......い.....ぉい......おい!」
声がした。
「.........んぅ〜、もう朝ぁ?もちょっとだけ寝かせてぇ、、」
とは言いつつ、いつもと違うアラームに薄目を開ける。
普段より視線が床に近い。というか硬い?
いつの間に床に落ちたんだろうと微睡みの中で考えながら、ゆっくり目を開ける。
そこには爽やかな晴天と心配そうな(多分)顔の男がいた。
「え、なんかめっちゃ目覚めた。なにその耳」
「なにその耳って言われても、耳は耳だが」
「いやいやいや、え?それケモミミだよね?てかなんかスースーする」
そう、ケモミミである。全人類が人生で一度は憧れたであろうケモミミが、ピクピクと動いている。
かわいい。
ついでに体がスースーすると思ったら裸だった。
おそらく男のであろうマントを羽織っていて、裸エプロンならぬ裸マントなうである。
ケモミミに気を取られていたが、この人私の裸見てるってこと?
それか私の服をご丁寧に剥ぎ取って、マントを着せたのかな。
ていうかここどこ?
分からんだらけで頭パンクしそう。
「ねぇそのケモミミって本物?人の耳もついてるのにどっちで音聞いてるの?ていうか私の裸見たよね?あとここどこ?」
「質問が多い」
ですよねー。
にしてもこの人イケメンだわ。
表情はあまり動かないが、濃紺の髪とケモミミに、べっこう飴を透かしたような金色の瞳に光が入り、そこだけ別世界の人みたいだ。
表情筋が凝り固まっていても、かえってそれがモテ要素になりそう。
......あれ、ここって多分恐らくメイビー地球じゃないかも。
とあれこれ考えていたら、ケモミミ男が小さくふぅ。とため息をついて口を開けた。
「貴方はこの路地で倒れてたんだ。裸で。
それからケモミミは俺の『ハイル』のことだよな?
これは獣人だけが聞き取れる音を拾うための耳だ。普段は人間族と同じ耳で音を聴く。
ここはアレシア王国の首都レシアスだ。あなたはここで倒れるの前の記憶はあるのか?」
わぁ、情報量が多い。
裸で倒れてたのは結構恥ずかしいけど、襲われたりしなかったのは不幸中の幸いだな。
あとケモミミってただの飾りじゃないんだ。名前までついててすごい。
で、やっぱりここは地球じゃなさそう。少なくとも日本ではないな〜。
「いやアレシア王国って......ルルシア王国じゃあるまいし」
と苦笑すると、ケモミミ男は途端に視線が鋭くなった。
「ルルシア王国とはなんだ?まさか我が国を騙った組織か国があるのか?
もしくはお前、諜報員か?」
え、怖い。
あと私的にはアレシア王国の方がパクリっぽいけど。
「あ、いや架空の話で似たような国の名前が出てきたから、ちょっと言ってみただけデス」
「そうだったのか。......まぁ諜報員ならこんなバカなやり方で潜入するとは考えにくい。疑ってしまってすまない」
「バカって、それはそれで複雑ですけど......ところで地球とか日本とかアメリカっていう場所知ってます?」
「いや、聞いたことないな。それも架空の話か?」
「あ、ソウデス」
助けてくれたのはありがたいし裸も見られちゃってるけど、完全に信用するにはまだ早い。
本当は地球とか言わない方が確実なんだろうけど、やっぱり縋っちゃうのは仕方ないよね。
「そうか。今は深く聞くまい。ここで座り込んでいるのも何だし、移動しないか?」
確かに裸マントでいつまでも路地裏にいるわけにもいかない。
「どこ行くんですか?」
「俺の家だ」
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