第17話 人気寿司店
地下道を歩き、夫がここだという所で地上へ出ると、既に暗くなっていた。テレビ塔がライトアップされており、とても綺麗。コバルトブルーの空に、青と金色の光が映える。もう17:13になっている。
そこから少し歩くと、街路樹の電飾がきらびやかに光る通りに出た。おしゃれだ。「すすきの」に入ったのかな?写真を撮ったが、その後に雨粒が流れているような電飾だと分かった。後でもう一度写真を撮ろうと思ったが、実はもうここには戻ってこなかったので撮れなかった。しかし、すごく明るい。
お店が入っているビルに着いた。まだ時間も早いし、全然人の気配がしない。既に並んでいる事を危惧していたが、
「大丈夫そうだね。」
と、言い合いながらエスカレーターを上って行った。寿司屋は2階にあるそうだ。2階が見えてきた。あまり広くないビルだ。2階で営業している店舗は1つしかない。そこがお目当ての寿司屋だろう。すると……なんと、寿司屋の前に数人が座っているではないか。ここにだけ人がいた。
まだ開店前なのかと思ったが、店の前に行ってみると開店17時と書いてある。とにかく名前を書く表があったので、書いた。待っているのは2組の客だった。2人の小さい姉妹を連れたご夫婦がいて、小さい子が一丁前な事を言うのが面白い。
トイレに行くと言って、1人でトイレを探しに行った。同じ階にはなさそうで、エスカレーターで1階に下りた。すると、誰でもトイレを見つけた。車いすで入れるやつ。他にはなさそうで、ここに入った。やっぱり変な匂いがする。テレビ塔のトイレと同じ匂いだ。そうか、この辺で主流の洗剤か何かの匂いなのかな?(と思ったのだが、この後はどこのトイレでもこの匂いはしなかった)
寿司屋に戻った。じきに1組は呼ばれて中に入って行った。良かった、しばらく誰も入れないから、まだ店が始まっていないのかと思ったよ。それにしても、まだ開店して間もないというのに、そして中を覗いた感じでは空いているようなのに、なかなか入れないというのはどういう事なのか。予約が18時からたくさん入っていて、今入れるわけにはいかないとか?そうしたら一体いつになったら入れるのやら。とはいえ、今私はお腹があまり空いていないので、すぐ入れなくていいのだが。
家族連れが呼ばれて入って行った。そこで、夫がメニューを見ておけば、と言った。店の入り口に手書きのメニューと、印刷されたメニューが置いてあった。居酒屋によくあるパターンだ。私が立ってそれを眺めていると、
「写真撮れば?」
と夫が言った。なるほど、本当に楽をする為の知恵が働く人だ。メニューの写真を撮り、椅子のところに戻った。あ、私に写真を撮らせて、座って一緒に見るのが目的だったか。
まあ、寿司だからけっこう高額だ。でも、ここで2人してあれも食べてみたい、これも食べてみたいと言い合って、有意義な時間を過ごせた。そして、18時になる少し前に店内に入れた。
カウンターか、テーブル席かを選べた。テーブル席は、もうじき団体さんが来るから賑やかになってしまうかもしれないと言われた。カウンターはがら空き。カウンターにした。でも、奥の端っこに座れるのかと思ったら、一番手前(通路脇)に案内されて、ちょっと想定外だった。
大きな店だ。明るくて新しそう。割と広いスペースに数人の料理人が入っていて、その周りにカウンター席がある。さて、まずは飲み物を頼もう。夫は相変わらずビールだが、私は日本酒。聞いたことのある名前「鬼ころし」にしてみた。ガイドブックに載っていたのだ。日本最北の酒蔵で作られた酒だとか。
鬼ころしは面白い器に入って来た。面白いというか、ごつい。黒くてごつごつした、醤油さしのような。いや、うーん、注ぎ口の付いた湯のみ茶碗のようなものか。お猪口の方も同じように黒くてごつごつしている。一口飲めば、とてもスッキリ。超辛口だ。とても美味しい。でも、すごくアルコールがキツイように感じる。後で土産屋に売っているのを見たら、かなりアルコール度数の高いお酒だった。20度だったかな。焼酎並みじゃないか。
寿司の方は何を注文したかと言うと、特上旬7種と、こぼれイクラサーモンと、白子ポン酢。それは口頭で注文したが、単品のものは紙に書いて渡すそうで、単品でイカ、イクラ、ネギトロ軍艦を注文した。
まずはこぼれイクラサーモンが来た。イクラがこぼれている。あと、ちょっと形がいびつなサーモンも。早速食べてみる。イクラ軍艦の海苔がパリパリ!こんなの食べた事ない。パック詰めの寿司や回っている寿司では、こんなに握ってすぐ食べる事はないからな。いずれにしても、美味しい。
次に特上旬7種が来た。2階建てほたて、寒ぶり、花咲ガニ軍艦、寒平目昆布〆、網走にしん、へべす〆さば、真鯛明太子の7つ。これを2人で分ける事に。何せ高額なので、これを2人前という訳にもいかず。まあ、大してお腹が空いていないという事もある。むしろ空腹じゃなくて良かった。そう思わざるを得ない。酒を飲むと食欲が出るので、実際には満腹だという感じではなかった。もう18時だしね。
私は網走にしんを食べた。にしんを生で食べた事があっただろうか。すっごく脂がのっていて旨い。幸せである。帆立とカニは思ったほどでもなかったが。後の4種は夫が食べた。白子ポン酢も美味だ。とろける。酒に合う。白子もなかなか普段食べられないから嬉しい。
後から単品が出てきた。イカは、切れ目が数本入れてあったものの半分に噛み切れず、一貫を全部口に入れてしまった。ねっとりとしたイカは案外硬くて、まだ大きいのに飲み込みそうになって涙目に。危ない、危ない。なかなか噛み切れない。もっと頑張って半分に噛み切ってから口に入れれば良かった。美味しさなんてわからなかったぞ。イクラをもう一度頼んだのは、さっきのは筋子だったのでは、という憶測があったから。でも、同じだった。美味しかったから良い。
お腹が空いていたら、もっとあっという間に平らげてしまうところだったが、ゆっくりと酒を飲みながら食べられた。それでも、18時半には店を出たのだから、やっぱり早食いか。そういえば、店内では生後1年は経っていないであろう赤子が泣いていて、ちょっと驚いた。こんなお店に赤子を連れてくるなんて、よほどのセレブか、と思って。うちの子が赤子だった頃は、ファミレスが精いっぱいで。とはいえ、例えば親がご馳走してくれる、なんていう場合もあり得るから、一概に本人がセレブだとは決めつけられないが。ま、どうでもいいか。それにしても、まだ団体さんは来店していなかったから、テーブル席だったとしても回りは静かなままだったな。
店を出る時に改めて暖簾の写真をパチリ。店の名前は「四季花まる」だった。このクオリティにしては、お値段はお手頃だった。なるほど、夫の知人がお勧めしてくれたのも分かるな。あと、私たちが食べている最中に、カウンターの中では掃除が行われていた。営業が終わってからではなく、合間にも掃除を念入りにしているのだな。まあ、客から見えるから安心パフォーマンスかもしれないが。
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