第14話 雪まつり~大通り会場

 テレビ塔に入ろうとする人の行列が出来ていた。混んでいてびっくりしたが、今はテレビ塔に入るわけではないので、気にする必要はない。

 屋台がけっこう出ていて、雪像もあるのだが、あれ?一方通行じゃない?と戸惑う。なんか、思ってたのと違う。雪像も思ったよりも小さい。すると、

「あれ?セミ?」

どこからか、ミーンミーンとミンミンゼミの鳴く声がした。うそでしょ!夏にしかいないはずのセミ。暖かい地方に来たら鳴いていた、と言うならまだ分かるけど、寒いところで2月にセミ?そういえば「冬のセミ」ってどこかで聞いたような……。むしろ寒い所だから、季節感が狂ってしまうセミもいるとか?それともまさか、偽物?いや、それは目的が分からない。

 セミに驚いてキョロキョロしている私に夫が、

「ここに立ってみ。」

と言った。前に立たされて写真を撮られたのは、雪像ではなかった。札幌国際芸術祭というのが同時開催されていて、その展示作品だった。バルーンアートのようだ。カーリングコートがあって、体験できるようでもある。この時は誰も体験していなかったが。

 とにかく進んでいくと、道路を渡った。そうしたら、そこからは一方通行になっていた。よかった、本格的な雪像はここからだった。

「雪があんまり降ると、形が変わっちゃうね。」

と、私は言った。雪像がたくさん並んでいる。市民が作ったという雪像が。アニメキャラとか、色々。大谷翔平さんの雪像もあり、遠くからでも良く分かった。似ている。その前には人だかりが出来ていた。

 気に入った雪像を写真に収めつつ、進んで行った。雪の上を歩くから、滑らないように慎重に。とくに信号を渡る時、道路へ降りて、また上る。大抵は坂で、たまに雪で作られた3段くらいの階段もあった。多くの人が歩いていて、みんなよく転ばないよなーと感心してしまう。私も転んでないけれど。やっぱり、レインブーツは良かった。これは滑らない。それに、道路のぐちゃぐちゃな雪を踏んでも滲みない。

 おお、大きな雪像が出てきた。ゴールデンカムイ?

「ああ、アニメのね。」

と言ったら夫が、

「知らないでしょ。」

と言った。まあ、よくは知らないけれど。

 所々「さっぽろ雪まつり公式グッズ」の屋台が出ていた。屋台というか、テントというか。シマエナガがモチーフになっている、公式バッジとか、諸々。可愛いから買いたいと思うものの、ぬいぐるみも、その他バッジなども、どうもイマイチのような……。いや、私個人の意見だが。

 どこかから歌が聞こえてきた。何か音楽を流しているのかと思ったが、どうやら舞台で歌っている人たちがいるようだ。上手……かな。と、やっと見えた。競馬のでっかい雪像と、その前で歌う紫色のミニドレスを来た女の子たち。馬娘?違うか。

 続いて芸術的な雪像がいくつかあり、太田胃散とか、アニメのハイキューや呪術回戦などの雪像も。太田胃散は面白かった。「ありがとう いいくすりです」と雪の壁に書いてあり、太田胃散の缶をそのままでっかくした雪像があった。その横に「太田胃にゃん」という猫の雪像がスプーンを持って立っていた。あのスプーンは、太田胃散をすくって摺り切りして飲む、あれだね!最近は個包装の太田胃散を買っているから、あの摺り切りやってないな。

 お次は……ああ、待ってました、こういうの。ドイツのノイシュバンシュタイン城だ。大きい。だが、大きさがどうも実感できない。自撮り写真も撮ってみた。もう、自撮りのように近くから撮る時には、写真加工アプリを使って撮らないと、見るに堪えない。アプリを使って撮影すると、気分良く撮れる。だがまあ、自分を一緒に写真に収めてみたところで、雪像の大きさは分からない。むしろ分かりにくい。

 次も大きな雪像だ。後で旧札幌停車場なのだと知るが、この時は何やら建物だとしか思わなかった。陸上自衛隊制作と書いてあり、その文字がとてもきっちりとしていて、そこがいかにも自衛隊っぽいと夫が言った。通り過ぎる時、横から見たら、建物の横もきっちりと作ってあって、思わず横からも写真を撮った。

 次はまた、小さい雪像が続く。こちらも市民が作った雪像だそうだ。指をでっかく作ってあった雪像が、何となくうちの次男が美術の授業で作ったハンコウみたいで、写真を撮った。うちの次男、なぜかリアルな親指を彫り、白い指のハンコウという、気持ちの悪い物を作ったのだった。とてもリアルで上手なのだが。今目の前にある雪像の指も、なんだかすごくリアルで、よく見るとハートに指を掛けており、ハートポーズがどうのと書いてある。ああ、あのハートの半分を片手で作り、もう1人も同じように作り、くっつけてハートが出来た、というあれだね。

 信号を渡って次のところへ行くと、見た事のあるカップが巨大化していて、人だかりが。カップはカレーメシと書いてある。人だかりは、滑り台に並んでいるようだ。浮き輪のようなものに乗って、巨大な雪の滑り台を滑る事が出来るらしい。目の前を、お子さんを抱っこした人が滑ってきた。なるほど。我々には用がない。

 もう1つ、大きな雪像があった。スノースライダーと書いてあるが……滑り台のように見えない。誰も滑っていない。どうやら日本ハムファイターズと関係があるようで、サングラスをしたスーパーマンみたいな雪像がある。サングラスをしていないスーパーマンみたいな雪像もある。両方とも新庄監督か?ん?誰も滑っていないわけでもないのか。スタッフらしき人たちが雪像の中に入り込んでいるようだ。まあいいや。

 うう、かなり足が疲れてきた。まだ終わらないのか。と、思っていたら、なんだか五輪マークが。夫に

「いいの?五輪マークだよ?」

と言われ、そうだ、これは私にとって重要だった、と思い直し、少し戻って写真を撮った。なぜ重要なのかと言うと、オリンピックのボランティアを通して知り合った友人がたくさんいるから、とでも言っておこうか。どうして五輪マークがあるのかとよく見れば、ここは国際雪像コンクールの会場だった。少し行くと優勝と書いてあって、赤ちゃんがゆりかごの上で寝ているような雪像が。モンゴルだった。次に準優勝と書いてあるタイの雪像も。龍のようだ。

 コンクールはまだ続くが、一方通行なので反対側は後で。先にハローキティ50周年の雪像を見た。おお、ここが最果てではないか。やっと折り返しだ。いやー、かなり疲れた。しかし、キティも50年か。私が生まれた頃に出来たのか。知らなかった。そして、その横にはスノーミクの像があった。この雪まつりの事を調べた時に初めて知ったスノーミク。雪ミクと書くのか?初音ミクと関係があるのだろうなあ。

 さあさあ、折り返しだ。さっきの国際コンクールの続き。3位は韓国だそうだ。どんぶりが繋がっているような雪像だった。それと、順位はついていないが、シンガポールの雪像に惹かれた。でっかい頭。ヘッドホンをして丸いサングラスをして、おしゃぶりを咥えている?面白い。「見ざる言わざる聞かざる」と書いてある。でも猿ではなく、人間。猿は3匹いて、それぞれ目や耳や口を覆っているが、これは1人。だから、色々道具で覆っているというわけか。しかしおしゃぶりだから赤ちゃんだよな?最初はスキンヘッドの大人かと思った。丸いサングラスがいかにもお洒落な人って感じで面白い。

 疲れた。くたくただ。それにしても、足元の雪面に黒いつぶつぶがあって、なんだか汚い感じなのだけれど、見ると目がチカチカして遠近感が分からなくなる。そんな事を言っていたら、

「滑り止めだと思うよ。」

と夫が言った。そして、その後に職員と思われる人が、その滑り止めと思われるものを撒いて、ならしている場面を見た。そうか、こうやって滑らないようにしてくれていたのか。汚いなんて思ってごめんなさいね。

 疲れたから転ばないように、と夫が私の腕を掴もうとする。

「それって、却って共倒れになるんじゃない?」

と言って、解除してもらった。しかし、こっち側、つまり復路はあまり見る物がない。さっき、遠目で見たものがほとんどだ。これじゃ、疲れもあって余計に退屈してしまう。

 が、また市民の雪像が出てきて、面白いものがあると私はパシャパシャと写真を撮った。市民の雪像はたくさんあるので、さっきは見えなかった物もあった。そんな風に私ばかりテンションが高い感じだったが、一度夫がテンションを上げた事があった。それは、クイーンの雪像が見えた時の事。ライトアップされている。QUEENと書いてあるのは私にも分かるが、そこに描かれたマークこそが、QUEENのジャケットのマークだそう。夫には分かるらしい。それを写真に収めていた。

 さっき馬の前で歌っていた女の子たちが前を通った。うわ、足が寒そうだな。しかし、誰?アイドル活動している子たちなのかな。

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