長年の憧れ!さっぽろ雪まつり~ウポポイ(民族共生象徴空間)
夏目碧央
第1話 憧れ
子供の頃から、と言っても自分で買い物をするようになってからだが、憧れていたものがある。さっぽろ雪まつりだ。テレビで見たから、というのもあるが、それよりも何よりも、福引の一等賞品だったからである。
地元のショッピングモールでは、毎年年末に福引セールが行われていた。3千円分買うと1回引けるもの。補助券を集めて、もしくは3千円の物(音楽CD)を買って、毎年1回か2回、祈りを込めて引いたものだ。大抵、当たるのは末等のポケットティッシュだったのだが。福引を引く為に並んでいる間、1等賞のさっぽろ雪まつりのポスターを見ていた。いつか行ってみたい、いつもそう思っていた。
雪まつりは2月なのだ。大学生の間は春休みだったが、社会人になり、結婚して子供が生まれ、子供が学校に通うようになると、2月に旅行に行くわけにはいかない。もちろん、土日を使って強行する事も出来るが、そんな事を考える事もなく、年月が流れた。
一度飛行機に乗ると、それからセールだキャンペーンだとメールでお知らせが届く。また今度も、ANAのセールが目についた。羽田―新千歳空港、片道7600円~。それが目についた時、セール期間がちょうど1月~3月だったので、雪まつりの事を思い出したのだった。
そうだ、今子供たちは大学生。2月は2人とも春休みだ。長男はもうすぐ卒業して社会人になる。その前に、息子が2人とも大学生の内に行くのはどうだろう。そう考えて、子供たちに話してみた。今年のさっぽろ雪まつりは2月4日~11日だ。すると、
「ああ、そこはちょうど卒論の提出日の直前だから無理だわ。」
と、長男。次男は、
「何も真冬の北海道に行かなくても……。それに、春休みは香川に行こうと思ってるから。」
と言われた。なるほど、子供たちは行かないと。しかし、置いて行く事は出来る。そんな年齢になったのだ。もちろん、置いて行く気なら来年以降でもいいのだが、ふと思ったのは、自分の眼の事。そして体力全般の事。最近更に目が悪くなり、矯正視力さえも下がってきている。これ以上目が悪くなる前に、雪像を見ておきたい。寒い所へ行くにしても、これ以上歳を取ってからよりは、なるべく早く行くべきではないか。
ということで、飛行機をおさえる事にした。まだ11月の事。3か月先の予約だ。でも、とにかく雪まつりは1週間しかやっていないのだ。その中で、いつも都合の良い水曜日から金曜日まで、札幌旅行に行く事に決めた。
さて、あとは誰と行くかだ。1人で行こうか、どうしようか。2年前に金沢へ一人旅デビューをし、去年は出雲大社へ行ってきた。また一人旅でもいいか?でも、なんとなーく寒い北海道へ行くのに、1人は不安なような。いや、1人でもいい。でも、最初から1人で行くと決めてしまっていいのか?一応、夫にも行くかどうか聞いてみないとまずいのではないか。まあ、3か月も先の事。夏休みでも年末休みでもない時期に、平日休みが取れるかどうかなんてわかるわけがないだろうが。でも、土日に行くつもりはなかった。混んでいるのは嫌なのだ。
「さっぽろ雪まつりに行こうと思うんだけど、行く?」
一応、聞いてみた。
「2月7~9日にしようと思うんだけど。」
すると、夫は意外にも行くと言った。休みが取れるかどうかは分からないけれど、
「行かれなかったらキャンセルすればいいでしょ。」
と。もしそうなったら、私が1人で行けばいいのだな。よし、そうと決まったらホテルを押さえなければ。
2人で泊まれる宿を予約した。雪まつりの最中は、きっと札幌市内のホテルは混むだろうと思ったので、早くしないと。流石に3か月前だったので、予約できた。今回は素泊まりで。夫は雪まつりに行きたいというよりも、
「何食べようかねー。」
と、北海道グルメにしか興味がなさそうだったが。
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