幸運値最大の俺が一目惚れした絶望値最凶の彼女に告白する話~PLUS LUCKS~

@situationX

第1話 これが神様との邂逅ってやつか

「もしもし、コホンっ、もしもし」


 誰かが、電話口で言うようなセリフを連発している。

 それも、声の調子を整えながらだから、鬱陶しさがすごい。


 せっかくだから、現実味はないけど、いい気分でふわふわな寝心地の邪魔をしないでほしい。

 まだ、眠い。


「もし、コホンっ、もしもし」


 けれど、もしもしを続ける人=モシモシさんは同じ調子で同じ言葉を繰り返す。

 かれこれ、10分くらい。


「もしもし、もしも、もしもしも」


 ん?


「もーしもしもし、もしもしも、もしもしもしも、もしもしも」


 おや?


「もーしもしもし、もしもしもしも、もーしもし」


 なんか、言葉の調子が、韻を踏んでいるように変わってないか?


「もーしもし、もし、もしもしもーしも、もし、もし、もしもしも」


 なんの曲だよ。

 知らないリズムだ。


 それに、なんか目が冴えてきた。

 あいにく、機嫌はすこぶる悪化していく。


 なので、「いい加減」という言葉を突き付けてやっても良い頃合いと見た。


「あの、睡眠の邪魔です。どこかへ行ってください」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 返事がない。


 わざと、言葉だけ言って、顔は見ていないから正直怖い。


「あの、これは夢ですよね?」


 体感的に、まったく現実味がない。

 体の感覚はあるが、重量感が一切ない。寝転がっているはずなのに、どこに寝転んでいるのか、左右どちらに寝転んでいるのか、さっぱりわからない状態。

 無重力ってこんな感じ?


「・・・・・・その通り」


 さっきのモシモシさんの調子は、無かった。

 声の感じから女の子、それか声変わり前の男子のような愛嬌ある声だった。


 だが、俺はこれで安心できた。

 もしも、声が偽物で、声の主が化け物だったらと考えただけで、ずっと目が開けられない状態が続いてしまうところだったのだ。


 そう、俺は、さっきから目を閉じたままなのでる。

 かなり怖かった。


「うわ、白」


 俺は、目を開けた。

 真っ白な、モコモコの綿の上。いや、雲の上か?

 無数にあるモコモコは、どこまでも続いていて、その真ん中に俺はいた。


「おはよう・・・」

「あぁ、おはよう」


 声の方を見ると、印象通りに小さく、可愛らしい女の子がポンと座っていた。


「ございます・・・」

「え?」

「私、一応エライ存在・・・」

「あ・・・」


 やっぱり。

 未知との遭遇って感じを期待したけど。


「えっと、おはようございます」

「よろしい。」


 ふむ。

 納得がいったようだ。

 ついでに、聞けることを聞いてもいいかな。


「あの」

「うん、聞きたいことは全部私に聞いて」

「あ、先読まれた」

「エライから」

「エラさ関係あるんだ」

「ある。ある。」

「二回言うんだ」

「です、ます」

「あ、はい」

「で?」


 なんなんだよ。

 聞かせてくれよ。


「あー・・・じゃぁ、俺は死にましたか?」

「うん、まとまってないにも関わらず、まとまった問い」


 腕組をして、感慨に耽っている女の子。

 なんか、見た目のわりに年を感じるような。


「答えは、否。死んでないよ。生きてるよ。ダイジョブ」

「なら、俺はなぜここへ? ここのことも知りたい・・・です」

「いいよ。簡単。ここは意識の中。君の。幸多(コータ)君の意識。ちょっと中に入らせてもらった代わりに、良い感じに模様替えさせてもらった」

「はー・・・」


 さっぱり理解が追い付かない。


「じゃあ、あなたは・・・?」

「エライ存在。神様。宇宙人。高次元の存在。いろいろ呼ばれる。私は、そんな中の一人。で、エライ」

「俺の頭の中の出来事・・・って解釈でもいいですか・・・もう無理そうです」

「うん。じゃあ神様でいい?」

「理解の最短距離です。それでお願いします」


 もう、他の言葉は聞ける状態じゃない。


「それじゃあ、なぜ神様は僕の意識へ来たんです?」

「そう、それが、本題」


 女の子の神様は、言葉を続けた。


「君は〝イレギュラー〟だから。私は、君の異常性を正しに来た」


 神様、もう無理ついていけない。ごめんなさい。



 


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