第四話 私の視点

私は、そこそこ腕のいい発明家だ、と少なくとも自分自身では信じている。


私はこれまで、好きで長年科学に携わってきたつもりだ。


が、多くの発明品を生み出し、利用し、色々考えた結果、私は科学が純粋に好きだからやってきたのか、それとも科学ばかりが得意であるが故に生業にせざるを得なかったのか、あるいはその両方か、はたまた何か見えない力の影響を受けてそうするように仕向けられてきただけなのか、わけがわからなくなってしまった。


そして、今のまま科学的探究に明け暮れるのが私にとっての本当の幸せなのか、自分の心に問うた。


すると、もはや幸福とは何であるかがわからなくなった。


結局、私は真の幸福を見つけるべく、幸福体験装置なるものを考案し、その開発に成功した。


そこまでは良かったものの、誰かに試す前に自分で試して見たところ、ついのめり込んでしまい、今やもう何度使ったかわからない。


正直言って、今私がいるの場所が現実なのか、装置の創り上げたプログラムの中なのか、自信がない。


振り子が揺れるように現実と装置を行き来しながらも、装置を実用化し、幸福探究を謳う店を開き、そこそこ繁盛したように思う。


が、この記憶も現実のものなのか怪しい。


たった一つ、確かに言えることは、早かれ遅かれ、私はこうなる運命だったのだ。


これが運命ならば、受け入れよう。


この運命の中に、幸福を見出す他ならないのだ。


科学の行き着く先は、興味深くも、恐ろしい。


(第五話に続く)

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