第31話 夜景(+お詫びとお知らせ)

[ここまでのあらすじ]


 夏休みの終盤、母・文佳の引き金により旅行に来た一之進、有澄、鞠亜の三人。

 しかし、三人でいると毎回喧嘩のようになってしまう。

 それを気がかりに思う一之進と、ぎこちない空気の有澄、鞠亜姉妹。

 二人の告白に答える期限である夏休みの終わりまで、あと少し。三人はどうなってしまうのか……?




――――――――――――――――――


[本編]




 遊覧船を後にした俺たちは、軽く食べ歩きなんかもしながら街をブラブラ歩いたり、周りにあったお土産屋さんを巡ったりした。

 そして、近くにあった美味しそうなご飯屋さんから出る頃には、既に外は暗くなっていた。


 有澄さんと鞠亜はと言うと……やはり少しぎこちない雰囲気だ。

 お互いの会話はあるのだが、何かが引っかかっているかのように。


 もしかしたら先程遊覧船でお互いきついことを言ってしまった事を気にしているのかもしれない。


 そして今俺たちは、今日最後の目的地である展望台に向かっていた。


 ここから歩いてもそんなに距離がない所に、夜景が綺麗なスポットがあるらしい。


 周りにも数組カップルのような二人組がいるので、恐らくいい雰囲気の所なのだろう。


 というか男一、女二の俺らはかなり異質で、目が合った人からは奇異の視線をいただいている。



 そんな視線を受けながら歩くこと数分。



「おぉ……!」


 目の前に、町全体がキラキラと光る広大なパノラマが飛び込んできた。


 高台のようになっている大きな芝生の広場からあたりを見渡すと、今日行った神社や湖も見える。


 『百万ドルの夜景』なんて言葉を聞いたことがあるけど、宝石のように輝く景色を見ると夜景に『百万ドル』と名付けた人の気持ちが分かる気がした。


 思わず夜景に見入ってしまう。


 すると、俺の横にカップルだろうか、男女二人組が俺の横にやってきた。

 ちらりと横を見ると、恋人のように指を絡め合って手を繋いでいて、肩が触れる距離で並んでいた。


「綺麗だな……」

「そうね……」


 そこには、まるでドラマのようなロマンチックなワンシーンがあった。


 この二人の人柄も関係も全く分からないが、きっと今は二人にとってかけがえのない瞬間なのだろう。


 夜景とカップルについ見入ってしまう。


 ……こんな他人をガン見するのはよくないな。


 ふと良心の呵責かしゃくさいなまれ、我に返る。


 俺は有澄さんと鞠亜とここに来ているのだ。


 二人の様子を見ると……、



「「…………」」



 そこには夜景に目もくれず、背を向けて何かを話す二人がいた。


「……あっ、一之進先輩。ちょっとわたし忘れ物しちゃったみたいで――」


「……取りに行く間――」


 俺が見ていることに気づいた二人は、何かを言おうとする。


 ……まただ。


 今日の、いつものパターン。


 なにか理由を付けて、二人で一緒にいることを避けるように。


 楽しい旅行のはずが、果たして二人は楽しめているのだろうか。


 せっかく旅行にきて、沢山楽しい所に行っているのに、楽しみきれていない。


 これじゃあではいい思い出にはなってくれないと思う。

 二人と、もう一人で旅行に来たかのような。そんな中途半端で気を遣った記憶ばかりが残ってしまう。


 このままじゃ、ダメなんだ……っ!


 俺は二人をじっと見て――、



「――三人で一緒に見ないか?」






――――――――――――――――――


[お詫び]



 また更新期間が大幅に空いてしまい、本当に申し訳ありません!


 何度も何度も更新が空いてしまい、楽しみにしてくれていた方には本当に顔向けができません。

 構想はあるのですが、忙しい日常と自分の不甲斐なさにより、なかなか最新話が書けずにいました。

 もしまだ続きを見ていただける方がいましたら、この作品は完結まで必ず投稿するので気長に待っていただけたらとても嬉しいです。


 自分にとってすごく思い入れのあるこの作品ももう終盤です。

 最後まで、魂込めて書きます。

 引き続き応援いただけましたら本当に嬉しいです。



[お知らせ]


・今作とは別の、短編小説を更新しました。

 一万字程度の熱いラブコメとなっております。


 かなり力を入れて書いた作品です。自信作なのでもしよろしければ読んでみていただけると嬉しいです。

https://kakuyomu.jp/works/16818093089418983269


 今後ともよろしくお願いいたします。


不管稜太

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