魔狼群の護衛

蒼キるり

プロローグ

 神様、どうかこの人を助けてください。

 幼い少年の看病をしながら俺はそう祈った。

 寝台に横たわる少年の体は怖いほどに熱を帯びている。俺より小さなこの体でこの熱に耐えるのは一体どれだけの苦痛だろうか。

 冷たくした布で熱い肌の汗を拭ってやる。体の至るところが傷だらけで包帯を巻いていない場所まで細かな傷が幾つもあり痛々しい。

 抉られたような傷がどれほど痛いか、俺はよく知っているから少しでも痛みが少ないようにと優しく触れた。

 どうか、どうか。そう祈ることしかできない自分の無力さが憎いけど、でも祈りが無意味とも思わない。何年も神に尽くしたと言っても過言ではない俺の願いなんだ、一つくらい叶えてくれたっていいだろ、神様。

 荒い呼吸をしながらも必死に生きている姿を見ていると泣いてしまいそうだった。

 この人は、俺をすごいと言ってくれたんだ。敵を倒したからじゃない。敵を殺さずに勝ったからすごいと言ってくれたんだ。それから守ってくれてありがとうと言ってくれた。

 俺はずっと守りたかったんだ。敵を殺したかったわけでもないし、倒したかったわけでもない。ただ誰かを守りたかったんだ。

 だから神様、どうかこの人を助けてください。俺からこの人を奪わないでください。

 そうしてくれたら、俺がずっとこの人を守るから。

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