転生したら魔族だったからスライム達の王になってみた

不定形

第一章

第1話

 う、ん…あれ…布団がない…


「お布団どこぉ……あれ?」


 起き上がって辺りを見ると、草木が生い茂っていた。いや、ここどこ?


「な、何が起きて………???」


 髪の毛が視界に入る。真っ白な髪の毛が。あれー?私って黒髪のはず。


「えーっと、えーっと、なにが??」


 もうわけわかんないよ。

 混乱して目を回していると、隣の草がガサガサと揺れ始めた。ぱって見ると、水色の、アニメとかで見るような、スライムが出てきた。


「す、スライム?え?い、異世界?」


 必死に現状を理解していると、スライムが寄って、体をこすりつけ始めた。

 か、かわいい…


「声も違うし、髪の毛も違うし、体のサイズも違うし、異世界転生ってやつ?」


 あれ?なら、なんで森の中に居るの?この体の記憶とかないし、あれ?


「もうわかんない…喉乾いたなぁ」


 一旦落ち着くと、お水が飲みたくなってきた。


「はぁ…《水でろ》」


 んー、おいしい!


「………ふぁ!??!」


 私の声でびっくりしたのか、スライムが、ぴょんと跳ねた。

 じゃ、なくて!


「なななななに今の!?お水!お水出た!!」


 ど、どういうこと!?


「え、えっと、《水出て》…?」


 おわ!出てきた!魔法?魔法なのかい!?え、でも当たり前みたいに出してたけど、え?


「あ…スライムくん…ちゃん?」


 ずりずりと這って、また体をこすりつけ始めた。


「よ、よし…!落ち着こう…最近じゃ、人だけじゃなくてモンスターとかエルフとか、そんなのに転生することもあるから、多分そんなんだろう。魔法が使えて当たり前的な種族なんだろう」


 うん、きっとそうだ。そうに違いない!


「ふぅ…落ち着いたら眠たくなってきた…安全、かくほしなきゃ…」


 たくさん頭使ったから…つかれた…

 あ、スライムがおおきくなった…冷たくてきもちぃ…


「《どうぶつよけ》《おへや》」


 野生の動物とかが寄ってこないようにして、透明な板で小さいお部屋をつくる。そして、そのままスライムに寄りかかる。


「人をだめにするそふぁだぁ…」


 おやすみなさい…




 もぞもぞ、て誰かが私を揺らしてる。


「んん…?すらいむさん…?どーしたの?」


 完全に覚めてない、寝惚けた頭で起き上がる。スライムさんが、体が少し伸びていた。


「わぁ…すらいむさん、いっぱいだぁ…」


 十数匹くらいのスライムさんが透明な壁にくっついていた。そこのところだけ、アーチ状に壁を消して、中に入れる様にする。全員入ったら、また壁を閉じた。


「ふへへ…ぷにぷにぃ…」


 たくさんのスライムさんに囲まれて、瞼を閉じた。




「ふわぁ……んぅ…あれ、おっきいスライムさんがいっぱいいる」


 なんでおっきくなってるんだろう?

 まあいいか。


「んーー!っと…あ、消しとこう」


 伸びをして、魔法を全部消した。


「えっと…お腹が空いたから、食べ物探したい、んだけど…」


 立ちあがろうとすると、最初に近づいて来た、寄りかかってたスライムさんが、腕?みたいなのを出して阻止して来た。


「わわっ!?」


 そのまま抱き上げられて、スライムさんの上に座らせられる。

 驚いてると、紫色のスライムさんからりんごを渡される。


「く、くれるの?これ」


 当然何も言わず、動かなかったから、一口食べてみる。


「ん!おいしい!」


 瑞々しくて甘い、今までで一番美味しい!

 そうしてると、他の、緑とか赤とか、ピンク色なんかのスライムさんが、りんごと、他の果物を持って来た。


「こ、これもくれるの?」


 私に差し出す様に置かれた果物達。聞いてみても、また、動かない。

 ブドウを一粒とって、食べてみる。みかんは皮を剥いて、梨は齧って。全部、今までで一番美味しかった。

 山の様にあった果物は、気がついたら全部なくなってた。私が食べたんだけど、あんなに食べられる大きさじゃないのに。ふしぎ。


「ありがとうみんな」


 お礼を言うと、みんな嬉しそうに体を揺らしてる、気がする。




 その後も、最初のスライムさんは私を離してくれず、お腹が空いたと思った時にたくさんの食べ物をもらう、っていう生活を一週間過ごした。そろそろ、散策とかしたいんだけどなぁ…


「ねえスライムさん、私、周りのこと知りたいなぁって…」


 だから離してほしい、って言う前に、うにょにょって動きだした。連れてってくれるらしい。


「い、いや、そう言うことじゃ……いや、うん、ありがとう」


 もう諦め、だよね。

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