魔石回収の手記

譽任

第1話 プロローグ




プロローグ



魔石回収。



文字通り魔石を回収する仕事だが、これがこの世界を知る上では中々面白い事が分かった。この世界はありきたりな剣と魔法の世界で、人と魔族が終わりのない争いを延々と繰り返している。今では双方共に何故争う事になったのかさえ覚えている者は居ないと聞く。まぁ俺がこの世界に来る遥か昔の事なのでどうでもいい。



さて、重要なのは『魔石』だ。



剣と魔法の世界だが、この世界の人間は自らの力で魔力を持てない。だから人々は魔石を見つけ、それを研究し文明を築いてきたらしい。魔石と言ってもその採取方法も用途も種類だって多岐に渡る。一番イメージ出来るのはやはり魔法を扱えるようになる事だろう。だが、それよりも前に人は魔石が、正確には魔石を砕いた欠片を火にくべたら何年も火種が消えない事を発見した。それがこの世界で動物が人になった瞬間とも言われている。



じゃあその魔石は一体何処から存在していたのか?



後世の歴史家達は、失われた古代文明の遺産であると主張し、半生に渡って魔石を研究した者は魔石そのものが人体には非常に有害である故、その説を否定した。




結果的に分かった事実は人類にとってわりと残酷な結末だった。



魔石は魔力の結晶。つまり魔力ある者が強力な魔法を使ったり、魔物が体内に宿していたり、人類が今までに争い続けた魔族や魔物によって魔石は存在しているという事だった。何とも皮肉な話だ。人を肉としか見ない魔族が残した残滓で人はその文明を切り開いてきたと言うのだから・・・。だからこそ人と魔族は争い続けるのか、はたまた別の共生共存の道があったりするものなのか、何にせよ今の俺の仕事はそんな魔石を回収し、調査する事である。まぁ他にも色々とあるが、その辺はおいおい分かってくるだろう。



何故なら俺が消える事は、しばらくは無いのだから。

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