第15話

「あの~」

ライクは訝し気に私達母親sを見るけど、ライクだって18才よ!婚約者がいたっていいじゃない?

ケイゴは16才で婚約者がいたし、バードだって18才の時に私と婚約したのよ?


「あのですね。母様、ケイゴのお母様。落ち着いてください。俺は小さい頃から母様の顔を見て育ってるんです。最近ではルリも増えました。なので、重度のメンクイという病です。故に生涯の伴侶については今後多くの国を見て回り、決定したいと思っています」


「でも、ライクが商会の受付の子と付き合ってるの知ってるけど?」

そうなんだよね…。ライク、女遊びはやめなさい。


「彼女を生涯の伴侶とするつもりはありません!」


「彼女の方が吹聴してるわよ「自分は将来この商会の商会長夫人!」って。だから知ってるんだけど」

ライクは頭を抱えてしまった。

「これだから、女は…」


「「女をひとまとめにしないでよ!」」

ライクの口からそのようなセリフを聞くことになろうとは…。


「彼女とは清い関係なんでしょうね?後から「この子も商会を継ぐ権利がある」とか連れてこられたら面倒よ?」

あり得るから嫌だ。


「ああ、それは大丈夫。彼女は絶対妊娠してないから」


「そうじゃない。妊娠するようなことをしたかどうかを聞いてるのよ!」

ライクはこんな子だったかしら?


「妊娠一歩手前でやめてるから大丈夫♪」

はぁ。こっちが頭抱えたくなる。


ライクの手綱をしっかり操作できるような子をあてがいたい。

ケイゴにもそんな子いないか聞いてみよう。ケイゴは元気よね?明日…より明後日の方が親切かしら?



ケイゴに聞いてみた。


「ライクの手綱を操れるような美人は東方の国にいないかしら?」


「うーん、いると言えばいるんですけど…」

何よ、もったいつけて。キッチリ話せばルリの小さい頃の肖像画を上げると言えばペラペラと話してくれた。ケイゴはルリが大好きなんだなぁ。ルリは人を見る目があるな。


「姫です。ライクは現在18才でしたっけ?それだと、国王の溺愛している第3王女ですね。もちろん見目は麗しく、芯はしっかりしていて、教養もあります。しかし、国王が溺愛してますからねぇ…」

超難関。他国の商会長の長男に嫁がせるだろうか?


バードにも相談しようかな?


おう、まだ初夜の時に飲み明かした酒が抜けていない!

東方の国の酒は強いなぁ。あ、このお酒を使ってバーテンできないかな?うちの国でだけど。

輸入するの!バード商会が酒の強さは商会長が身をもって体験中だし。

お酒自体は無色透明。ダメかなぁ?とにかく、交渉はできるよね!



「ライクなぁ、いつまでも子供じゃないよなぁ」

と、バードは笑うけど笑い事じゃないよ?もし妊娠せてたとか、後から後継者候補とかやめて欲しいし。


「それで、ケイゴにライクの手綱を取れるような美女は東方の国にいない?って聞いたら、事もあろうに第3王女!国王が溺愛してる第3王女ですって!商会同士、ラルク商会を通じて国王に謁見できないかしら?第3王女の事とは別に、東方のお酒をカクテルに使えないかなぁ?と思ってるのよ。それで、輸入できないかって話ついでにライクと第3王女の話できないかな?国王と会う時にライクも連れていってよ!」


「えーとライクに合うような美女は東方の国には第3王女以外いないという話と東方の国の酒をカクテルに使いたいから輸入したいって話を国王と交渉して欲しいという事だね?」


「ライクを連れていってね。偶然でも第3王女を見初めたらなんか変化が起こるかもしれないし…」

ライクが「いらっちゃいまちぇ」と言っていた頃が懐かしい。こんな風に育つとは思わなかった…。誰の影響だろう?



バードは『ラルク商会』に包み隠さずに交渉してくれた。

「色々大変なんだね」と同情されたとか。『ラルク商会』の商会長は子供が生まれたばかりなので、夢を見させてあげたいが。こんな現実…。


「うん…。俺も人の親になったばかりだけど、大変そうだし力になるよ。国王の謁見の方は、国王に伝えておく。後日謁見できるようにスタンバイするよ」

なんか本当に申し訳ない。ラルク商会長には個人的に子育てに役立つものリストと使い方を書いた書簡を送ろうと思う。性別がわかったら。



後日、ラルク商会長がスタンバイしてくれて、国王との謁見が実現した。

「バード、ライク行ってらっしゃい!!」

東洋の儀式のようで火打石をカチカチと鳴らした。何の意味があるんだろう?




「国王様におかれましては「よいよい、ラルク殿の紹介じゃ」

やっぱり『ラルク商会』はすごいと思う。

この場に第3王女はいないようだ。


「先日、私の娘の結婚式がありまして。恥ずかしながら私、新郎の父親と飲み明かしました。こちらのお酒は強いのですね。二日酔いどころか、完全にアルコールが抜けきるまで1週間くらいかかりました…」


「それはそれは、お主が飲み過ぎじゃ。そういやお主の名はなんと申す?」


「はっ、私は『バード商会』商会長のバードと申します。以後お見知りおきを。後ろにひかえているのは私の息子のライクと申します」


「ふむ、そしてお主の目的はなんだ?」

国王は顎にたくわえた髭に触りながら言った。


「酒の味を妻に伝えたところ、カクテルに使うのはどうか?との話が出たのです。是非我が商会でこの国の酒を輸入したく思います!」


「ふむ、使い方は自由だがなぁ。『ラルク商会』と既に独占で契約をしていてなぁ。さて、ここで提案!お主の息子ライクの元に私の娘を嫁がせることができたら、『ラルク商会』を含めた3者協議をしようじゃないか」


「国王!王女とはどの王女ですか?私の方でも商会に嫁いでくる子ですので、ある程度聡明な娘であることを願います。王の娘ですから、聡明でしょうが…」


「第2王女である。第1王女はすでに別の国に嫁いでいる。第3王女は論外」

論外なのか…


「恐れながら、ライクはすさまじくメンクイでありますが大丈夫でしょうか?人見知りでもあります」


「これでも、我が王妃には別嬪を選んでいるつもりだ。実際に会わせよう。第2王女を呼べ」


そしてこの場に第2王女も現れた。

うちで生活をしてケイゴもそうとう目が肥えたのではないだろうか?

第2王女もかなりの美形だと思う。


ライクの反応は、無反応…。

ライクはそこらの男とは違った。生まれた時から近くにリラがいる。


「ライクはダメなようですね。では各国にて東方の国の酒を使ったカクテルの販権を得ることとしましょう。この旅で、各国を巡ればライクの目に留まるような美女にも会えるでしょう。3者協議ができなくて残念です。では、御前失礼します」

流石に第3王女を引っ張り出すのは無理かぁ。


「ちょーっと待った!我が国の美女に無反応とはライク、相当のメンクイだな」

困ったことに、相当のメンクイなんです。


「仕方あるまい。第3王女を呼べ」

遂に現る第3王女。ライクの反応や如何に?


豊かな黒髪に黒真珠のような瞳。陶磁器のように滑らかな白い肌。


国王が大事に囲っていた理由がわかる。


「お父様。わたくし、ライク様と婚約しとうございます」


向こうから言ってくれた。ありがたや~。


「平民になるのだぞ?商会長夫人といえども少しは働くのだぞ?それでもライクがいいと?」

「ライク様をお慕い申しています」

良かったなぁ、ライク。美女が降ってきた。


「ところで第3王女様はおいくつでいらっしゃいますか?」


「16才じゃ。名は椿。非常に悲しいが手放さなければならないのか?」

わかる。わかる!俺はルリの時に苦しんだ。


「ライクと年も丁度いいな。椿様は婚姻までここで暮らすか?それともけ…」

ケイゴみたいにひとつ屋根の下で暮らしていたら、ライクが絶対手を出す。結婚までここで暮らしてもらおう。


「実際に結婚するまでここでお暮しください。18才になったら、ライクが迎えに来るので」

はぁ良かった。リラにも伝えよう。


「では、3者協議をしますか?」


協議の結果、3割を『バード商会』が輸入することとなり、東方の国の酒を使ったカクテルの販権については5割が『バード商会』ということとなった。


目的の半分は達成したから万事OK?

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