第12話

楓さんの案内で東方の国の魅力がたくさんわかった。

美味しいものも食べました。楓さんがうちの商家の方に来たら、逆に案内したいなぁ。私に戦闘能力ないけど。


とか思っていると、賊がなぜか襲ってきた。

賊の目的はルリを攫うこと。あ~、多分あの王子が差し向けたんだろうなぁ。

ルリを手中に収めてから、うちの商家を操るって算段かな?

結構な人数いるけど大丈夫かな?


楓さんは私とルリをかばって善戦していた。

でも、多勢に無勢って感じで徐々に押されて来てしまった。

そこに颯爽と現れたサムライ?


楓さんに「遅いのよ!」と怒られている。

どうやら味方のようだ。が、刀を抜くや否やそこらの賊の刀は切られ、さらにボトムスも下着を残し、斬られていた。

正直恥ずかしい。どうやって家に帰ればいいんだろう?レベルだ。途中で警羅隊に逮捕されないだろうか?


などと私が思っていると、隣のルリは通りすがりのサムライをじーっと見つめている。熱い視線。

確かにイケメンだと思う。でも年齢差ありませんか?


「ルリ色…」

と、ルリは言う。はぁ?よくよく見ると、この青年は豊かな黒髪をポニーテールにしているイケメン。で、その前髪から覗く瞳の色が確かにルリ色だった。


「ルリ…年の差あるからね!」

と、とりあえず言っておいた。


楓さんがこの青年を紹介してくれた。

青年だと思っていたけれど、少年?青年?年齢が16才。

どっちにしろ、年齢差がすさまじいと思う。ルリは今8才だし、倍の年齢…。

「挨拶が遅れて申し訳ありません。俺は…あっ私はケイゴと申します」


楓さんにはルリがケイゴさんに一目惚れしたかも~と伝えた。

「なんてこと!主にそんな想いを抱かせるなんて!!」と、楓さんは憤慨していた。

そうかなぁ?

ケイゴさんの剣術はすごいし、ルリを嫁がせるにはいい相手だと思うんだよね。

バードにも相談しよう♪


ケイゴさんの実家は何をしているの?

「しがない刀鍛冶ですよ。俺のカタナも親父が作ったものです。国一番とか言われてますけど、俺にはわかりかねます。俺はカタナと育ったので、護衛を生業にしているのです」

はぁ、なるほどねぇ。


「これから、どうやってそんなに美しいカタナを作るのか見に行ってもいいかしら?」

楓さんは困っている。予定にはなかったからだろう。西から来たんだもん。興味ある~。

「俺は構いませんが…楓さんは?」

そっと覗き込んだ。ケイゴさんは楓さんの事好きなのかしら?

「仕方ありません。望んでいるのですから。参りましょうか!」




そういうわけで、私達4人はケイゴさんのお父さんがやっているという刀鍛冶の現場に行くことにした。

まさかそこでバードとライクと合流することとなるとは思わなかったけど。


ライクは自分用によく切れるカタナを一振り欲しいそうだ。そのお願いに来ていた。

さすが職人。頑固一徹。

「興味本位では俺の息子みたいなのはあげられないな」


「いえ、あのきちんと報酬は出すつもりです」


「そういう問題じゃないんだなぁ。おっ、ケイゴ。帰ったのか?護衛の仕事は慣れたのか?」


「今日は私たち二人をお守りいただきました」

鍜治場が酒臭い…。これは正直な感想。


「ほう、これはこれは西からの客人で随分な別嬪さんとお嬢さんだなぁ」


「あの、私の妻と娘です。息子が無理なお願いすいません!あなたの打った美しいカタナに心を奪われてどうしてもほしいようでしたので、足を運んだ次第です。妻と娘の用件は知りません」


「正直に言いますと、娘のルリがケイゴさんに一目惚れしたようで…。今は結婚できないでしょうが、10年後にはできるでしょう?あ、8年くらいでいいかな?ルリは今8才です。結婚できるような年齢になったら是非こちらのケイゴさんと婚姻をと思った次第です」


バードに「俺は聞いてない」と耳打ちされたけど、兄さまラブ♡のルリが興味を持った方だもの。逃したくないわ。

それに、この場で婚約してしまえば、王家は何も言えまい。あー、平民のままごととかいうのかなぁ?



「それなら、この『ラルク商会』が仲人になるぞ?」



渡りに船というのだろうか?『ラルク商会』が後ろ盾になってくれたら、世界各国が後ろ盾みたいなものだから、あの王家もそうそう手を出せないだろう。

バードは複雑だろうけど、当人同士はそれでOKみたいだし。王家にうちの商家に介入されるより全然いいと思う。


ケイゴさんは刀鍛冶職人の一人息子で、剣術は超一流。ルリを守るくらいの物理的な力は持ってる。後ろ盾を得ることで、王家はうちに介入できなくなるのよ!

政略結婚じゃないし、王子の所にルリを差し出すよりいいと思うんだけどなぁ。

…バードは気持ちが付いていかないのか?


「バード、このままスツール王子にルリを差し出すよりも、ケイゴさんとルリを婚約させる方がいいよ。気持ちがついていかないの?」


「ああ、突然だから」


「ラルク商会が二人の後ろ盾になってくれるみたいだから、王家は二人の邪魔しないでしょう?物理的に邪魔しようとしたら、ケイゴさんがルリを守ってくれるし。ね?」


「うーん」

まだ迷うの?可愛い娘だもんね!


「仕方ないなぁ、バードは。子離れできないの?」

私は奥の手として、「家族が増えてもいいなと思うんだけどなぁ」とつぶやいてみた。

別にルリの弟妹ではなく、ケイゴさんが家族になるわけだし?


「わかった!ラルク殿、ルリとケイゴ殿を頼む」


「頼まれた!」


よって婚約は締結し、ルリとケイゴさんはラルク商会という強い後ろ盾を得た。

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