第5話 告発
そして翌日。臨時休校と言うお知らせが電話で私たち生徒に告げられた。それを見ると……どうやらある先生が死去したという事であった。この時点で嫌な予感がした。これは奴の仕業だ。
そのことに気づいた私は、すぐに由美たちに連絡をした。私自身こういう話は苦手だが、学校の教員、つまり身近な存在が殺されたとなれば話は別だ。そしてテレビ番組を見る。ビンゴだ。亡くなったのは、福原雅と出ていた。あの先生だ
私たちを厳しくも優しく数学を教えていた先生。その先生が今夜亡くなったのだ。
これは、私も……
精神的にもうだめかもしれない。このままじゃあ……
「愛華大丈夫?」
そんな声が聞こえた。振り返ると、お母さんがいた、そして下を見ると、汚らしい液体がこぼれていた。そして私の口の中に、嫌な感触が残っている。吐いた。きつすぎて吐いていたのだ。
寝不足の影響もあるのだろう。だが、まさか吐いてしまうとは思わなかった。
寝ることにした。寝るしか、この体調と精神を回復させるすべはない。運のいいことにすぐに寝ることが出来た。
だが、夢の中で私は起きた。いかにも夢とわかるような夢だった。その中で、私はまたあの悪魔に出会った。その夢は私が地獄に落ちてゆく様だった。地獄とは言ってもみんなが思い浮かべるような地獄ではない。ただ、苦しい地獄へと向かっていくことはわかる。苦しい苦しい苦しい。その夢の中でそう感じだ。
その地獄に何分いたのだろうか。いや、分では測れない。たぶん何時間とかそう言う単位だろう。なのに、目が覚めない。こんな苦しいことは今までなかったのに。
そして、その悪夢から解放されたのはそれから体感五時間程度たった後の事だった。時間は九時十分。まだ一五分しかたっていなかった。
もう完全に分かった。やはり犯人は悪魔たちで、そのことに気が付いた私に警告してるんだ。「もう、詮索はするな」と。
しかし、もうあんな夢は嫌だ、もうあんな悪夢は見たくない。ただ、もし本当に悪魔たちが犯人なのだとしたら私に黙っていることなんてできるのだろうか。いや、できない。あんなグロ死体はもう見たくない、由美や、彩香が死ぬような所は見たくない。
それに何より、このことで苦しむ人をもう見たくない。そだけど、私に出来ることはあるのか、私にこの悲劇を終わらせられる手はあるのだろうか。そう考えるとないとしか言えない。
とりあえず私はSNSにこの仮説を出した。フォロワーは三〇〇人程度だ。それでは不十分。そこですぐに別アカウントを作り、それっぽいことをステータスメッセージに書いた。
私は知っているのだ。フォロワーの数はフォロー数の数で決まる。フォローバックで集めればいいのだ。とりあえず、追加でそれっぽいことを投稿し、そして、フォロワー数=フォロー数の人をフォローしまくった。もう私はひるまない。私は勝つ! 勝って見せる。
そして、フォロワーが一五〇〇人になったところで、活動を開始した。そうあのことを投稿した。
「例の連続虐殺事件の私の仮説なのですが、この事件、裏があるように思っていて、実は悪魔が関与していて、悪魔の愉悦のためにこうした事件を起こしているんじゃないかと思います。根拠はあります。私の夢に悪魔が出てきたのです。そしてこういいました。これ以上の詮索はよせと。実際、私は友達にこの仮説を言ったことがあるのです。そして誰かこの説をさらに裏付けする情報を持っていませんか?」
そう書いたところで、いったんやめにした。こんな硬い文章ではだめだと。そして、もっと緩い文章の方がいいと。実際、ばずっている投稿は何々じゃねとか、そう言う友達に語り掛ける系の文章が多い気がする。
どちらの方がいいのだろうか。真面目感のある文章か、それとも友達に話しかける文章か。迷った結果緩い文章で行くことにした。
「あのさあ、わたし、この事件さあ、悪魔の仕業じゃないかって思うんだけど。だって私の夢の中に出てきたし。それで、この事件について詮索するなって言われたし。だからもう間違いないと思うんだよね。みんなこの説どう思う?」
そんなことを迷った結果写真を張り付けて投稿した。これでもしバズったらいいなあ。そしたらみんな私の説を信じるかもしれないし。そしたらこの状況に何か手が打てるかもしれない。
そして、ついでに私の普段のアカウントでも拡散しといた。これで、上手くいくだろう。そんなことしてたら急に眠たくなってきた。ああ、寝たらまたあの地獄に放り込まれるんだろうな。嫌だなと思いながら寄る眠気にはかなわず、眠りに落ちた。
「愛華? 愛華?」
お母さんが起こしに来た。時計を見る。もう五時半だった。それを見るとどうやら今度は悪夢は見なかったらしい。
最悪殺されるかと思ったけど、良かった。
「え? もうそんなに寝てたの?」
とぼけた感じで言う。ほんの一時間二時間程度寝るだけのつもりだったのに、まさかこんなに寝てしまうとは。
「ご飯で呼んだの?」
「ええ、そうよ。ゆっくりでいいからね」
「うん。すぐ行く」
そしてお母さんが下に降りたのを見て、すぐにスマホをチェックする。どうやら残念ながらそこまでバズってないようだった。それに不謹慎な話だし。一六七いいね一七リライト引用三八件。いまいちだな。まあ、私も昨日の夜まではこんなことをするとは思ってなかったから、仕方ないけど。
そして、リプライランを見る。すると、いい説ですねと言うものが来ていた。
ただ、それ一つだけだ。自分一人で何とかなると思っていた自分がばかだった。この世の中ぼっと出にやさしくしてくれる人なんていなかった。それによく考えたらこの説が正しい根拠なんて、あの夢だけだし、よく考えたらこのような結果になるのは当然んのことか……
さて、もう打つ手はなくこの残場のなった。本当、もうこの地獄に耐えきるしかなくなったのかもしれない。私はなんて無力なんだろう。この現状の原因をおそらく知っているのに、何もできやしないなんて。
「はあ。もうだめだ」
明日からもこのニュース類で心を痛めるのだろうか、この事件の被害者に。本当嫌になる。私が何をしたって言うんだ。被害者の方たちが何をしたって言うんだ。悪魔たちよ、君たちの遊びに我々人間が被害を被っているんだ。本当どうしてくれる。
「はあ、これが聞こえてたらまた警告するのかなあ、それとも私が無力だからもう無視されるのかなあ。どちらにせよ、気が滅入ってしまう」
そんな独り言をつぶやいた。無力な私には何も救えない。その事実がさらに突き付けられさらに嫌になる。考えれば考えるほど。
「あああああああああ!! もう!!!!!」
叫んだ。もう、自分のストレスを外に放出した。もう耐えきれなくなったのだ。このどうしようもない気持ちに。
私は……私は……
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