第21話 1歩前進?

温泉街の告知期間が終わり、いよいよオープンの日にちを迎えた。

この日は天気も良く祭事を行うには最高の日だ。

サットも王都からこの日の為に戻ってきており、ナリアと共に先に式典会場に向かっている。

リックはと言うとサラと共にある場所にいた。


「いよいよ、この日が来ましたね。リック様。」


「うん、このネスト領が生まれ変わる日だ。この財団も無事にできたし!」


リックは温泉街を運営するために財団を設立していた。

その名はリック財団。

土木省ネスト支部の隣にあった空き地にその事務所を構えた。事務所は土木省の力を借りて5階建て大きな建物である。財団職員はまだおらず、現在採用中である。

また、代表をリック、副代表をサラが務める。


「今日の式典にはダグリット公爵、リッツ侯爵とレイネ嬢、ハーバトン伯爵とイーナ嬢がいらっしゃいます。式典後には実際に温泉街に宿泊もするからサラ嬢よろしくお願いしますね。」


「はい、リック様!」


サラは自信満々に返事をした。準備万端ということだろう。


「さあ、会場に行こうか、」


リックがそう言うとサラに呼び止められた。


「リック様、お待ちください。」


「どうしました?」


リックが振り向くとサラは少し顔を赤らめていた。


「その、私のことはサラとお呼びいただけないでしょうか?」


突然の要望であった。


「私とリック様は婚約者です…呼び捨てで構わないかと…」


「…なるほど。確かにそうですね…」


「それに今日はリッツ侯爵とハーバトン伯爵のご令嬢もいらっしゃいます…」


「それが何か?」


リックはサラに詳しく聞く。


「当家の者が実はリック様の事、ネスト伯爵家のことを調べておりまして、レイネ嬢、イーナ嬢と親しい間柄だど…」


サラはどうやら心配しているようだ。リックの女性関係を。


「あー、なるほど。ですがお二方ともこの前の社交界でお会いしただけですのでそんな心配入らないかと…」


「そうでしょうか?お二方ともリック様の事が気になっていらっしゃるご様子。その様に聞いております。」


サラは強く言ってくる。

自信があるようだ。


「ダグリット公爵家の情報網を疑うわけではないですが、サラ嬢に心配をかけないようにします。」


「いえ、私は別に婚約者が増えても構いません。ただ平等に愛してほしいのです。」


「なるほど。僕は婚約者であるサラ嬢の事をとても大切に思っていますよ。なので心配しないでください。それにサラと呼ぶようにします。なのでサラも僕のことはリックと呼んでください。」


「ほんとですか!?」


サラは嬉しそうに言う。


「本当です。ではサラ、会場に行きましょう。」


「はい、リック!」


リックとサラの仲はより深まった。

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