暗殺者、異国の王子に溺愛される
月読ユウ
序幕 今宵も月は光り輝く①
俺は暗殺者のラシトエルだ。夜に依頼主から受ける暗殺の依頼を実行する仕事をしている。
今日はセイリーンの王妃の暗殺の依頼が入っている為、世界鉄道に乗りヴァイロワルツからセイリーンに向かっていた。席に乗りヴァイロワルツの景色を眺めるが、それはいい景色とはとても言えない。去年、ヴァイロワルツは終戦宣言し、漸く世界戦争から逃れる事が出来たからだ。世界鉄道に乗る人も少ない、それは戦争の影響で殆どの市民が餓死·戦死してしまったからだ。俺だってヴァイロワルツ第一王子に拾われていなかったら死んでいたくらいだ。今現在も庶民でありながら生きている奴らは俺のように裏社会に潜んでいる奴やエルフや人間の奴隷共や貧民街で頑張って過ごしている奴らぐらいだろう。何故こんなにも酷い現状にヴァイロワルツは陥ってしまっているかを話すと、それは、ヴァイロワルツ王国は唯一の人間の国だからだ。セイリーン国の主な種族は吸血鬼や魔術師、魔女。ただ軍事力の高いヴァイロワルツが人外に耐用できるはずも無い。
だからこそヴァイロワルツは戦争中、俺のような奴らが沢山いた。捨て駒であり、敵を殺すためにしか生きていない暗殺者達が。
俺は人殺しはクズの所業だと元々思っていたが、もう慣れた。貧民街で暮らしていた親無しの俺には、こうやって生きるしか無いのだ。
そんなことを考えているうちにセイリーンに突いた。実行は明日。今日は取り敢えず、宿を取るのと店巡りでもするか。
セイリーンは吸血鬼が住んでいることもあり、人間は珍しがられた。というかかなりの嫌悪の目を向けられている気さえする。
「おい兄ちゃん!!」
ボロボロになったセイリーンの装束を着た男が俺に喋ってきた。
「八重歯がしっかりしてねえから、兄ちゃん人間か」
「そうですが?」
「悪いこった言わねえ、さっさとこの国を出な。この国では現在人間狩りをやってる魔術師やら吸血鬼がうじゃうじゃいるんだ。もう既に通報されてる可能性もある。死にたくなきゃ逃げな。それか兄ちゃんが自殺願望だったら何も言わねえけどよお」
人間狩り……か。
まあヴァイロワルツがやっていた、魔女裁判とか吸血鬼狩りと同じか。対価……いやヴァイロワルツへの代償だな。
「じゃあな兄ちゃん!!無事でな!!」
「はい。ありがとうございます」
しょうがない。暗殺は今日にしてさっさと帰ろう。
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