第10章 27組よ、ありがとう

 時は3月20日。修了式の日だ。

 教室では1年で最後の集まりだから、男女関係なく喋っている。



 式が終わると委員長のエナメルは

「みんな、せっかくやからキャンプでもしよう!」

 とみんなの前で誘った。


 クラスメイトは「行こー!」と騒いでいた。



 正午、私たちはイオンキャンプ場に着いた。


「よし、肉焼こうぜ!」

 委員長は機嫌よく肉を焼き始めた。


「こっちはウィンナー!」

 私は大きなウィンナーを5本焼き始めた。


「野菜も無いとアカンやろ」

 アンガレッジ副委員長はキャベツやカボチャなどを焼き始めた。


 そうしているうちに、鉄板の上はいっぱいになってしまった。



 肉が焼きあがった頃、予想通り取り合いになった。


「よっしゃ、いただき!」

 ブルーンは人ごみの中かき分けて、唯一のカルビを食べた。


「あーっ、ブルーンずるい。ウチはまだ何も取っていないのに」

 キャリンは必死に肉を探す。


「まずは野菜だね」

 ケイトは大好物な野菜をガツガツ食べる。


「ウィンナーゲット!」

 私は美味しそうに頬張る。


 こんな感じでバーベキューを楽しんだ。



 午後1時、委員長が「隠れんぼしよう」と言ったので、大広間で隠れんぼうを楽しんでいる。


 鬼は10人。私は鬼ではないので、大広間の大きな木に登って人影が見えないように上手いこと隠れた。

 鬼が来るまでの間、私は木の幹にしっかり捕まって下を見る。


 しかし、なかなか来ない。


 退屈な格好をしてしばらくすると、

「ひゃー!」

 とキャリンが叫ぶ声が聞こえた。


 私はその声を聞いて驚き、こそーっと木の枝を右手でかき分けた。


 彼女はチューリップの花畑に隠れていたみたいで、そこに隠れていた他のクラスメイトも驚いて顔を出してしまい、鬼に見つかってしまった。

 10人くらいだった。


 思わず笑いそうになった。

 ここで笑ってしまうと、鬼がここに来てしまうから左手で口を押さえた。



 10分経っても鬼が来ない。

 私はとっくに暇つぶしでスマホゲームをしている。


 その頃、クラスメイトは

「あれ、あと1人はどこー?」

 と言っている。


「もしかしてバーリンちゃうん?」

 副委員長がメガネを拭く。


 私はその声を聞いて枝をかき分けると、39人が集まって、話し合いをしていた。


 すると、委員長が話し合いから抜け出して、大広間の木を登り始めた。


 私はゲームを止めて、カバンの中にスマホを片付けた。


「なんだあ、お前、そんな所に隠れていたんかあ」

 私ははっとして後ろを向くと、委員長だった。


「気づかんかったん?」私は尋ねると「気づくわけないやろ。みんなを待たせているんだから早く降りよう」と委員長は木を降り始めた。



 みんなの所に行くと、どこに隠れていたのかを聞かれた。

 私はすんなり答えると、最初から木に登れば良かったと言われた。



 13時半。今度はゲームセンターに行った。


「よし、みんな、気合でUFOキャッチャー大会をしよー!」

 ブルーンはクマのぬいぐるみが入ったUFOキャッチャーにもたれた。


「良いやん、それー!」

 私はそれに賛成した。


 ルールは3回やって、当たった個数で競い合う。


 トップバッターはブルーン。

 彼女は100円を入れてUFOを操る。

 1発目からぬいぐるみが2個も当たった。


 隣は委員長。毎日家でゲームをしているのに、全く当たらない。



 10分経って、ようやく私の出番がきた。

 正直言って、UFOキャッチャーは当たった実績があるけど、1年以上やっていないので当たる自信が無い。


 私は100円玉を入れ、キャッチャーを操る。

 キャッチャーは手を広げて、ぬいぐるみを掴もうとする。


 しかし、1個も当たらなかった。


 2回目。もう1度キャッチャーを操作した。

 今度は当たる自信あり。

 キャッチャーはぬいぐるみを2個も掴んでくれた。ヤッター!


 ラストチャンス!

 キャッチャーを見つめながら操作した。

 1個しか当たらなかったけど、計3個も当たったから私は大満足!



 全員、UFOキャッチャーをやり終えた。

 優勝はブルーンで5個だった。


 まさか、そんなにゲット出来るとはなあ……


「5個もゲットしたなんてスゴイやん!」私は感心したが「うーん、普段は3回で6つ当たるんやけどな」とブルーンは首をかしげた。


 私たちは凍ってしまった。UFOキャッチャーが好きなだけはある。



 20時。


 もう真っ暗だ。ゲーセンで遊びすぎてしまった。


「みんなぁ、最後に打ち上げ花火を見ようぜ!」

 委員長がガッツポーズをした。


「こんな時期に花火なんかやってるか?」副委員長がつまらなさそうに委員長に聞くと委員長は「いや、俺が川に行って、打ち上げ花火をするねん」とチャッカマンを持った。


「おいおい、危険だぞ」

 私たちはブツプツ言いながらブラン川に向かった。



 私たちは川のそばの野原で花火を見ることになり、委員長だけ打ち上げ花火を操作することになった。


 1発目、フェイス高校の校章が綺麗に現れた。

 2発目以降、クラスメイトの顔を次々に打ち上げていく。


「うーん、綺麗だね」

 私は小さな声で言った。


「しかも、みんなの顔にそっくり」

 ブルーンは感動している。


「これを1人で作ったんかなあ」

 ケイトは花火をまじまじと見る。


「なら、すごいよね」

 キャリンは足を伸ばす。



 花火は遠慮なく打ち上げられる。


 修学旅行のボーリング大会で優勝したメダルまで打ち上げ、サファイアで作られたストラップの形も打ち上げられた。懐かしい。



 最後に、委員長のメッセージが打ち上げられた。


「27組のみんなへ」

「俺は自分勝手で、みんなに迷惑をかけたこともあったけど」

「みんなは俺の後をついてきてくれて」

「本当に嬉しかったで」

「今日で、1年27組は解散するけど」

「離れ離れになっても、みんなと一緒にいたことは」

「絶対に忘れない」

「また、こうやって一緒に」

「集まろうな!」

「今まで本当に……」

「ありがとう!」

「1年27組学級委員長」

「グリフィス・エナメル」



 これで、打ち上げ花火は終わった。私たちは委員長のメッセージを見て、泣いてしまった。

 本当に解散してしまっても、また集まろうな、という絆を感じる。


「みんな、本当にありがとう!」

 私は袖で涙を拭いながら言った。


「ホンマにありがとう!」

 クラスのみんなでお互いにお礼を言った。


「これで……このメンバーで遊ぶのは……もう無いかもしれないけど……2年になっても……ずっと一緒な!」

 委員長は泣きながら途切れ途切れで言った。


「うん!」

 私たちは委員長の言葉に答えた。


 これで、27組の打ち上げは終了した。



 そして、今……


 私は2年23組になった。

 元27組は私と委員長しかいなかった。


 ケイトとキャリンを含む多くの人は文系を選択し、理系を選択したのはわずか8人しかいなかったからである。

 そのうちの2人が、私とエナメル。


 でも、こうして離れても、私は絶対に1年27組のことを忘れない。


 ありがとう、元1年27組のメンバー。そして、27組の思い出。


 それから、2年でも楽しく過ごせて、1年の時のように、いい思い出をたくさん作れたら良いな!



 ――THE END――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アラウズ★ハイ★スクール 河松星香 @Seika-Kawamatsu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ