第2章 部活動と正、副委員長決め
「せやぁ、部活や。どーする?」
私は新たな話題を振った。
「そっかー、部活なあ、全然考えてへんかった」
キャリンは親指と人指し指の間の部分で顎をすっと支える。
そこで、ケイトは校門付近で受け取ったクラブ紹介の冊子をパラパラめくる。
「女子ソフトテニス部は?」
と提案するケイト。
「女テニ!?待ってー、私、学校から家まで遠いし体力が持たないよー」と目を大きく開くとケイトは「じゃあ、茶道は?」と切り替えた。
「茶道なあ……けっこう難しいと聞いたことがある」
ブルーンは腕を組んで目を細める。
私はケイトにちょっと貸してとその冊子を手にとって、さっと目を通す。
「そうだなあー」
と私たちは悩みながらパラパラとページをひたすらめくる。
その時、私は3人の顔を見た。大げさに身振り手振りを使っていたので、何事かと思い、ページをめくるのをやめた。私は再び目線を冊子に戻すと、そのページの左上に演劇部の紹介があった。
「そう!ウチ、演劇部に興味がある!」
キャリンはそれそれ!と足踏みして、いかにもそこに入りたいとアピールをしている。
「そーなんや。しんどいかもしれんけど、ジェスチャーを使うからキャリンには向いていると思う」
私は冊子に隠れている顔をひょっこり見せる。
「まあ、せっかくだからこの4人で演劇部の見学をしない?」ブルーンは手を叩くと私は「そうやね。これで、今日の放課後すること決まりーっ‼︎」と張り切った声を出して気分が急に上がった。
そう話をしている間にチャイムが鳴り、私たち27組の生徒は席に着いた。
「じゃあ、オレ、委員長になる!」
と席を立って即立候補したのは少し髪が立っている元気そうな少年、グリフィス・エナメルだ。
「オレもやるー」
新たに手を挙げて立候補したのは黒縁のガッツリメガネをかけた賢そうなミラース・アンガレッジだった。
これは委員長の立候補が2人になった。普通は多数決かじゃんけんで決めると思っていた。
しかし……エナメルは着席しているアンガレッジに人指し指でビシッと指して
「アンガレッジ、オレと雪だるまを作ろう!大きい方が勝ちだ‼︎」
と自信満々に言うが周りはしーんとしている。
窓の向こう側には雲が1つもなく、スズメがチュンチュンと鳴いているのが鼓膜をゆったり振動させる。
「ねぇ、ちょっと君、
キャリンは呆れながら机に右肘をついて顔を支える。
私たちクラスメイトは笑いをこらえようとしたが、我慢ができず、腹から大爆笑した。
「なかなか面白いこと言ってくれたじゃないか。ならば、大食い対決だぁー!」
「良いやんそれ!」
ブルーンは声を張る。
「良いか、お題はオレの好きな塩ラーメンだ」アンガレッジは席を立ってやや低めの声を出すとエナメルは「ああ、受けてたつ!」とやる気に燃えている。
もうすでに2人の間に火花がバチバチ散っている。
そんな訳で大食い対決をすることになった。委員長を決めるだけなのにそこまで大げさにしなくても良いじゃないかと私は思ったが、気づけば大食い対決の係を決める話に変わっていた。
クラスメイトの残り38人で10人は買い出し、20人はラーメンを火にかけて茹でたり丼の器にのせる。
8人はラーメンを渡したり洗い物をするという役割分担を適当に決めた結果、私、ブルーン、ケイト、キャリンはラーメンを渡したり洗い物をする係になった。
場所は南館に位置する調理室。買い出し係は22パックで総計110食のインスタントの塩ラーメンを近場の店で買い集めて、5食分は確保したので準備は万端の状態だ。
放送部入部予定のミウ・ドルランは
「制限時間は20分、用意……」
ピーッとホイッスルを鳴らした。この時点で10食が出来あがっている。
2分も経たないうちに私は思わず横で作業をしているキャリンに
「2人とも、よく食べるなぁ。もう3杯目やし」
と言うと、うん、そうだね。と一言で返され、話は途切れてしまった。
確かに今は皿洗いで忙しい。2人ともたった3分で20食も完食しているからだ。
常識的には有り得ないけど、2人ともよく食べるなと改めて感じた。
再び、買い出し係のミウは暇なので実況をしている。
「只今の様子は、エナメル25杯、アンガレッジ28杯です。さて、エナメルは逆転勝利となるのかーっ!?」
彼女は微妙に高い声で壊れたマイクに向かって言った。
ミウはせっかくアナウンスをしたのに、競っている2人はラーメンを食べるのに必死で、ラーメンを茹でている組はバタバタしているので、喚声を上げて盛り上がっているのは買い出し係だけである。
あれから20分が経ち、ミウは笛で終了の合図をした。
「最終結果……」
緊張する中、ミウは2人の間に立つ。
「エナメル、40杯!アンガレッジ、32杯!よって、委員長はグリフィス・エナメルで副委員長はミラース・アンガレッジとなりましたー!拍手!」
パチパチと盛大な拍手をした。
「2人ともすごかったなー」と私は2人の前に拍手をしながら近づくと「それはどーも。オレ、クラスのために頑張るからな」とエナメルは右手の親指を突き出した。
「頑張れ、委員長!」
私も親指を突き出した。
ちなみに、残ったラーメン38杯は委員長、副委員長を除いたクラスメイトで美味しくいただきました。
そして、待ちに待った放課後。
「よーし、演劇部見に行こっかー!」
私は機嫌よく踊りそうになりながら活動場所へ向かう。
「レッツゴー!」
あとの3人も盛り上がっている。
演劇部の活動場所は西館2階の舞台室である。
「お邪魔しまーす」ブルーンから先に入室すると「おっ、来たー!」と先輩から大歓迎された。
そこには大きな舞台、そこの向かいに音響や照明をいじる楽屋のような個室がある。
その間のスペースは観客席で埋まるが、普段はパイプ椅子を片づけているため、ものすごく広く感じる。
まだ入部届けをもらっていないため、ほとんど見学になったけど、声出しの様子を見たり、音響や照明をいじらせてもらった。
音響や照明はあまり面白く感じなかったけど、それがあるから演劇部は成り立っているんだなと私たち4人は深く実感した。
18時。
「今日は見に来てくれてありがとう。是非入部してね、待ってるよ」
部長のマオリ・キャンベンは私たちに微笑みかけた。
「はい!また来ます!ありがとうございました!」
4人は深く頭を下げて退室した。
「楽しかったね、
私は満足した顔をする。
「うんっ、これで決まりーっ!」
ブルーンは人通りの少ない商店街の通路で変にくるくる踊り始めた。
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