序章 謎の異次元カプセル
4月8日の午前8時半、私たちが通っているシークレット市立ミステリー高等学校では、2年のクラス発表の日だ。
噂によると、ミステリー高校は謎が多いらしい。
現2年のクラスは1クラス40人で9クラスある。1組から5組の半分は文系、5組の後半から9組は理系のクラス、と言うように構成されている。
私は1年の時に理系を選択したので、クラス発表の紙の右側から自分の名前を探している。
「杉浦 水莱……あっ、あった!」
ようやく私の名前を見つけた。
今日から、私は2年8組になった。
東館3階の教室に入り、私の席に座って辺りを見渡すと、1年の時に同じクラスだった長石 栞菜が座っている。去年は全然喋らなかった女の子だ。
「そういえば、去年一緒のクラスやったやんな?」私は勇気を持って話しかけると、向こうは「確か5組やったよな?」と聞き返した。
「うん」
私は素直に返事をした。
「あっ、この学校って、謎が多いらしいねんけど、放課後、一緒に校内を散策しない?」
私は新たな話題を言った。
「そうなん。なんで?」
「だってさあ、学校名が“ミステリー高校”やろ。何か絶対謎があるはずだよ」
「そっか。面白そう!ウチも一緒に行きたい!」
栞菜は顔に笑みを浮かべた。
「そう来なくっちゃ」
私も笑った。
6限終了のチャイムが鳴り、終礼も終わった。
私は栞菜と一緒にスクールバッグを背負いながら校内を冒険した。
喋りながら北館の階段を上ると、生徒は立ち入り禁止の階段の近くに、濃い青紫色で大きく不思議な空間が目の前に現れた。
謎があるのは本当だった!
「何あれ?」
栞菜がそれに指を指した。
「さあね、俺たちもわかんねぇよ」
「……?」
姿を現したのは、私と同じ弓道部の
「君、いつの間に?」私は憧君をガン見すると「お前だって」と彼も私をガン見した。
「何か2人とも怖い……」
栞菜の体がビクリと震えた。
「何だあ、長石もいたのか」
栞菜の目線は声のするところに行った。
それに釣られて、私も憧君も声が聞こえたところに顔を向けた。
「
栞菜は目を丸くした。
「えっ、誰?」私は辺りをキョロキョロしているうちに「峰川 政斗。ウチと同じ軽音楽部」と栞菜はあっさりと答えた。
「へぇ」
私はこっくりと頷いた。
そんな話をしていたら、何か風が吹いてきた。特別、窓が開いているわけではない。
私たちは向かい風が吹いている方向を向いた。壁だった。
今度は反対方向を向く。謎の空間だ。
だんだん風が強くなってきて、次第に
「ギャーーー!」
と悲鳴を上げながら謎の空間に吸い込まれてしまった。
私は目を開けた。
起き上がると、目の前には高さ10メートルくらいの、意味不明な円柱型のカプセルが9本ある。
1番太いヤツは中央にドカーンと立っている。
残った中ぐらいの8本はそれの周りに等間隔で並んでいる。
一体、ここはどこなのか?
「おお、君たちは何をしに来たのかい?」
比較的若くて白衣を着た、めっちゃイケメンの男性が円柱型のヤツのところから歩いてきた。
「……」
私は何も返事が出来なかった。それより、格好良すぎて本当に科学者なのかどうかが、わからなかった。
「あの……実は、階段の近くにある、謎の空間に吸い込まれてしまって……」
栞菜は緊張しながら答えた。
「ああ、あれは僕が作った空間なんだ」
若い男性が近くにある巨大なコンピューターをいじり始めた。
「なぜ、そんな空間を……」
政が問いかけた。
「普段、その空間は出していないんだよ。でも、誰かに助けて欲しいことがあって、作ったんだ」
「助けて欲しいことって何ですか?」
憧君が聞いた。
「僕は異次元について研究するために、この学校に内緒で異次元研究室を作った。最初はどの次元も正常だった。ところが、つい最近“ギャラクシー・プリズム”と言う4人組が異次元特有の無くてはならないものを消し去ったり、昔からずっと守り続けてきた貴重なヤツを奪ったりして、異次元のエネルギーがMAXだったのが、このように下がり続けている。だからギャラクシー・プリズムをやっつけないといけないから、僕は君たちと協力したいんだ」
若い男性が円柱型のヤツに目を向けた。
確かに、中に入っている色のついた液体みたいなものが全体的に減っていっている。
「わかりました」
私は真剣な目つきをした。
「おお、ありがとう!じゃあ早速、物の名前を言うから、是非覚えてね」
今さらか……と、私たちは心の中で呆れてしまった。
「まず、気になっていたと思うけど、この円柱型のカプセルは“異次元カプセル”と言うんだ。中央にあるのは我らが住んでいる3次元のエネルギー、周りにある8つのカプセルは、3次元を除く、他次元のエネルギーを、それぞれ異なった色で表されているのさ」
「ずっと、何かと思っていましたよ」
栞菜は目を細めた。
「悪かった。ゴメン。次、これ」
若い男性は白衣のポケットから4つの小型の機械を取り出した。
「コイツらは、僕と君たちと連絡を取り合ったり、困ったときにサポートをしてくれる“ビーズ・ネオン”」
私たちはビーズ・ネオンと言うスマホみたいなレーダーをもらった。
適当な名前だなと思いきや、ホームボタンが、夜光タイプの大きなビーズで出来ている。しかも、かなり軽い。
そして、収納ケースも同時にもらった。少し頑丈な布で出来ていて、女は薄い緑、男は薄い青、というように色分けされている。それをスクールバッグに安全ピンでとめた。
「最後に、僕の名前は、眞鍋 千喜。ヨロシク」
「ちょっと博士、それを先に言ってくださいよー」
栞菜が眞鍋博士の体を揺すった。
「いつ言うのかな?と思ってました」
私はうんざりした。
「なんだかんだ言いながら、天然ですよね?」
憧君が眞鍋博士に聞いた
眞鍋博士の顔は笑っているが、目は微妙に引きつっていた。
「おいおい、元から博士はヌケているのに、なんで質問をするように聞くんだい?ほらほら、博士がドン引きしてるやろ」
政が憧君の背中を軽くベシベシと叩く。
「博士は、ドン引きまではしてないで」
私は苦笑いしながら両手を腰に当てた。
「そんなん言うてるのは杉浦だけやろ」
憧君は指摘する。
「憧君が水莱に向かって言う言葉じゃ無いんちゃうん?」
栞菜は私の見方をした。
「そーやで!」
私の負けん気が発動した。
栞菜は、これはちょっとヤバイなと思い、
「もう茶番はいいから」
と言った。
「てか、茶番はお前から始まったんだろ?」
憧君は私に対する負けん気に火がついている。
「はいはい、憧君もそこまで言わなくても良いじゃないか」
政は憧君の左肩に肘を乗せた。
「政の言うとおり」
私は腕を組んでうんうんと頷いた。
「杉浦に言われたくないわ!」憧君はムキになり始めたので栞菜は「……お前はやかましいねん!」と大声を出した。
周りはしーんとなった。
「博士が困ってはるからな」政は落ち着いて言うと「そうやな」と憧君は軽く首を動かした。
はぁ、これでやっと落ち着いた。憧君ってやつは部活でもそうだけど、本当に困った者だ。
弓道で使っている矢を放っても的に当たる確率が他の部員に比べて格段と低い。私は黙って目をつぶり、1回だけ4人に気づかれないようにため息をついた。
少しもめてから3分後、まともに静かになった。
私たちは改めて自己紹介をする。
「2年8組の杉浦 水莱です」
「同じく、2年8組の長石 栞菜です」
「2年6組の峰川 政斗です」
「2年9組の榎原 憧祐です」
「よろしくお願いします!」
最後に、私たちは一斉に言った。
今日から、私たち4人は異次元エネルギーを取り戻すための活動が始まった。
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