小林探偵と、いくらの事件帳

みっちゃん87

プロローグ

町は、その日、普段と何一つ変わらない朝を迎えた。人々はいつも通りの時間に目を覚まし、いつも通りの道を歩き始めた。しかし、午後になると、町の日常は一変する。空から降り注ぐ、赤い雨。いや、正確には雨ではなく、いくらだった。通りを埋め尽くすほどのいくらが、まるで空から降ってきたかのように散乱していたのだ。


この奇妙な現象は、一瞬にして町中の話題をさらった。子供たちは歓声を上げながらいくらを手に取り、大人たちは携帯電話でその珍景を撮影し、SNSに投稿した。しかし、その背後に何があるのかを疑問に思う者は、少なくなかった。


その中に、一人の老探偵がいた。名前は小林修。彼は長年にわたり数々の難事件を解決してきたが、こんな不可解な事件は初めてだった。小林は眉をひそめながら、一つのいくらを手に取り、じっと眺めた。「これは、ただの珍事件ではない。背後には、もっと大きな何かが隠されているはずだ」と、彼は独り言をつぶやいた。


この日を境に、町はこれまでにない連続事件に見舞われることになる。爆破事件、連続殺人…。一見無関係に思えるこれらの事件が、なぜか小林の直感を刺激した。彼は知っていた。いくら散乱事件は、ただの始まりに過ぎないと。


こうして、小林探偵と、いくらの事件帳が、幕を開けるのだった。

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