小林探偵と、いくらの事件帳
星咲 紗和(ほしざき さわ)
プロローグ
町は、その日、普段と何一つ変わらない朝を迎えた。人々はいつも通りの時間に目を覚まし、いつも通りの道を歩き始めた。しかし、午後になると、町の日常は一変する。空から降り注ぐ、赤い雨。いや、正確には雨ではなく、いくらだった。通りを埋め尽くすほどのいくらが、まるで空から降ってきたかのように散乱していたのだ。
この奇妙な現象は、一瞬にして町中の話題をさらった。子供たちは歓声を上げながらいくらを手に取り、大人たちは携帯電話でその珍景を撮影し、SNSに投稿した。しかし、その背後に何があるのかを疑問に思う者は、少なくなかった。
その中に、一人の老探偵がいた。名前は小林修。彼は長年にわたり数々の難事件を解決してきたが、こんな不可解な事件は初めてだった。小林は眉をひそめながら、一つのいくらを手に取り、じっと眺めた。「これは、ただの珍事件ではない。背後には、もっと大きな何かが隠されているはずだ」と、彼は独り言をつぶやいた。
この日を境に、町はこれまでにない連続事件に見舞われることになる。爆破事件、連続殺人…。一見無関係に思えるこれらの事件が、なぜか小林の直感を刺激した。彼は知っていた。いくら散乱事件は、ただの始まりに過ぎないと。
こうして、小林探偵と、いくらの事件帳が、幕を開けるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます