私的なる金と銀との戦い

腸弱人の集う腸弱会通信というホームページが有った。(今も有るみたい)

腸が弱い事に起因した生理的逼迫状況及び破綻時の状況を詳しく投稿してある。


嗚呼、その悲しさの深き事海のごとく、その苦しさの強き事風のごとく、その惨めさの巨大なる事山のごとし。

悲惨ではあるが珍奇なる体験という物は、誰かに語らずにはいられない。

インターネットの公開性と匿名性は、それを語るにふさわしい場所なのであろう。

珍にして妙、陰にして惨、悲にして哀、奇にして矯なる体験は、インターネットへの投稿と言うカタルシスを経ることによって悲しみを帯びた一編の叙事詩となる。


語り部たる私は、腸弱人としての一面も持っている事を隠匿していた。

この媒体における私には匿名性はなく、その腸弱人としての悲惨なる体験を語らんや 私の社会的地位に致命的なる打撃を被る事、たなごころを差すように明白である。

しかし、語り部たる私の心が、腸弱人として過去の忌まわしき出来事の数々を思い出させる。

心の奥底に深く仕舞い込まれて淀んだ記憶のカオスの中から、沸沸と湧き出る泡のような記憶が紛れも無い腸弱人としての自己を再認識させるのだ。


失う物が多くなると寡黙にならざるを得ないのであろうか。

失った物が多くなると寡黙になるのであろうか。

沈黙の金より饒舌の銀を善しとする私の信念との戦いは続いている。


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