第二話「なんの音?」
最近あった話です。
突然、姉から電話がかかってきたんです。
定期的にチャットアプリで連絡はとっているものの、電話なんて滅多にしないので「何かあったんだろうか」と思いながら出ました。でも急にかけてきた割には別になんともなく、他愛もない会話が始まったんです。曰く「暇だから電話かけた」とのこと。もちろん、それはそれで怪しかったんです。いつでも出来るような……なんなら聞いたことがあるような気さえしてくる、どうでもいい話をするために普段しない電話をするなんて明らかに変です。でも、それより……もっと気になることがあったんです。
姉が話してる電話口の向こうから、ずっと変な音が聞こえてたんです。物音のような人間の声のような、なんとも表現しにくいのですが……とにかく不気味で奇妙な音でした。強いて表現するなら「色んな音を同時に録音してスロー再生したかのような間延びした音」でしょうか。でも当の本人は全く気づいている様子も気にしている様子もなく、楽しそうに喋っていました。しかも、その変な音はだんだん大きくなっていって最終的には姉の声に何かノイズのようなものも混じるようになったんです。さすがに言うべきだろうか。そう思った矢先「ごめん、急ぎの用事を思い出した」と言って、向こうから電話を切られました。
……結局、なんだったんだろうって思って。でも猛烈に気にもなったので、確認することにしたんです。電話を掛け直すのは少し怖いし「急ぎの用事がある」とも言っていたので、いつも使ってるチャットアプリでメッセージを送りました。
「さっき電話くれたとき後ろでなんか聞こえてたけど、なんの音?」
意外とすぐ返信がきました。
「?」
「私、電話なんかしてないよ」
かかってきた時に画面に表示されていたのは、間違いなく姉の電話番号でした。電話帳に登録しているのですから、見間違えようがありません。そして、これは確証がないのですが……電話をかけた姉が話していた内容は。
恐らく、一度私に話したことがある内容なんです。会話のところどころで、私の記憶と一言一句同じ言い回しがありました。なんというか今までの姉との会話を掻い摘んで繋ぎ合わせたような、そんな感じがするのです。
私は、何と喋っていたのでしょうか?
姉の残留思念?でも姉は今でも生きています。
それとも姉のフリをしたナニカ?
いずれにしても……何がしたかったのでしょうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます