ひとくち怪談─感覚編─

双町マチノスケ

第一話「見えるものしか」

 心霊というかオカルト全般を信じない方たちがよく仰られるのが「この目で実際に見るまでは信じない」ということです。目撃情報は所詮、普段からそういうことしか頭にない人たちの戯言なんだと。全く信じていない自分の目で見えたなら、本物だと認めてやると。


 まぁ……全てが見えるわけでもない目で、いとも簡単に見間違いや錯覚を起こす目で、よく自信ありげにそんなことが言えるなと私は思いますね。「戯言」の証明にもなっていると言えば、そうなんですが。




 おや、アナタもそういうクチですか。丁度いい。


 そんな、自分の目しか信じないアナタに。

 ぴったりのお話をいたしましょう。






 ある男子大学生の話です。


 その方は普段からそういう類に興味があったわけではなく、この年頃にはよくある「その場のノリ」で夏季休暇に友人とふたりで肝試しにいくことにしたんです。宅飲みの途中で酔った勢いで言い出して、場所もネットでテキトーに調べたようなところ。もちろん「出る」とも思ってませんでした。そんなこんなで酒を片手に自転車を飛ばして現地に着いたんですけど、そこで同じようにノリで来た感じの大学生ふたりと会って、その場で意気投合して一緒に歩くことになったんです。でも結局なにも出ず、それらしいことも起こらず。最後には4人で記念写真を撮って解散しました。






 しかし、次の日になってスマホで撮った写真を確認した時です。











 一緒に行動していたはずの、現地で会った大学生ふたりが写っていなかったんです。途中で撮った動画の方も確認しましたがやはり彼らの姿はなく、何もない所へ楽しそうに話している自分たちだけが録画されていました。



 男子大学生とその友人は当然に見えていた彼らが幽霊の類だと分かって、ぞっとしました。当日交換したはずの彼らの連絡先も、いつの間にか跡形もなく消えていたのだそうです。






 どうだったでしょうか。


 彼らは信じていなかったにも拘らず、その目でしっかりと霊を見てしてしまったのです。


 自分の目こそが全てだと思っていると、知らぬ間に「この世のものではない」存在を見ているかもしれませんよ。






 まだ、納得されていないご様子ですね。


 二人とも酔っていたし、そういう雰囲気の場所だったから揃って幻覚を見ていただけだと。




 なるほど……











 では今アナタが持っているスマホのカメラを起動して、私に向けてみて下さい。
















 写ってないでしょう?どう説明するんです?

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