第19話 サプライズ
「……………暇だ」
あれから2日経ったが、俺は未だに病室から出られなかった。正直アフロのお陰でもう割と動ける気がするんだけどな…
(一応全身の筋肉がズタボロらしいしな。それに、
「動いたらコロス……………」なんてあんな鬼みたいな顔で言われたらな………先月の可愛さは何処に行ったんだよ………)
ー…あれでよかったのか?ー
今みんなが何をしているかはわからない。坂東がどうなったかも誰も教えてくれなかった。ホルスが言うには「教えたら絶対に動くだろ。余計な心配するな」との事だ。みんな大した怪我は無いようだったので、俺は一旦休む事にしたのだが
「シンプルにやる事ねぇ………」
病室は暇だ、って良く言うけどホントなんだな…………なんかしてねえと……
ー…正しかったのか?ー
何よりまずかったのは坂東との戦闘でスマホを落とした事だ。テレビはあるがこんな平日の真っ昼間じゃニュースばっかりだ。ヒルナ○デスもさっき終わった。
「なんか集中できる奴…………本はあるけど……婚活のやつと旅行雑誌だけだし……雪国行きてえ~………」
俺の声だけが病室に静かに響いた。
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「やっっっと復帰だー!!!」
俺は入院6日目の朝イチ、ようやく退院出来た。病院とアジトは遠くは無いのでアップがてら走って帰る。纏ってるビリビリは黄色だ。
「ん~?あの時は確かに赤だったよな……?見間違いか?」
だがあの瞬間の俺は、一時的なパワーアップが出来ていたように思える。
(となると見間違いでは無いんだろうけど…………やり方が全然分かんねぇ。これ以上出力上げる?無理だが???って感じだ。)
ー…救えたのか?ー
俺が必死にやり方を模索しながら走っていると、アジトには案外すぐに着いた。
(なんか緊張するな……)
俺はドアを勢い良く開く。
「HOPEsアレス!!!ただいま戻りまし………た?」
そこには、誰もいなかった。
「は?…え、………は?ドッキリ?」
(なんで誰もいないの?あれ?なんか言ってたっけかな?)
俺は必死に記憶を呼び起こすがそれらしき記憶は無かった。 訳も分からず思考を巡らせているとテーブルの上にある紙に気が付いた。
「ん?何だこれ?………………は?」
そこには、
『状態良好なら旅行。なんつってな』
と書いてあった。俺はイラッとした後すぐに気づく。裏にもなにか書いてあるようだ。俺はその内容を見て、急いで準備して走り出した。
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「おーーーーーーーーーい!!!!!!」
「あ、ハデスさん。アレス来ました。」
「おぉ、やっとか。元気そうか?」
「……半ギレですね。」
全力で走り、電車に揺られてまた走り、一時間で俺は空港に辿り着いた。
「てめぇら何しとんじゃごらぁ!!!」
「落ち着けアレス。どうした?そんなに怒って。」
ハデスさんがとぼける。
「どうしたもこうしたも無いですよ!事前に言ってくださいよ!なんですか急に北海道旅行なんて!なんで旅行!?なんで北海道!?今が一番寒いでしょ!」
手紙には空港の場所と集合時間、目的地だけが書かれていた。それに季節はとっくに冬。もうそろそろクリスマスで子供達が浮き足立つ頃合いだ。
「まぁまぁ落ち着け。今回は『お疲れ様 兼 シシガミよろしく 兼 アレス退院おめでとう旅行』だ。お前の為でもあるんだぞ?」
「なら事前に言って下さいよ!!!」
「至極真っ当な怒りね……」
「珍しいな。アレスのバカがハデスさんより正しい。」
「大体なぁ~んでナイショにしたぁんだぁ~い?」
「いやだって、サプライズとかしてみたいじゃないか!」
ハデスさんと俺含む5人が言い合う横でスサノヲとシシガミが話している。
「…アレスは本当に大丈夫なのか。私は少し心配している。」
「あぁ、気持ちは分かる。中々に重い件だったからな………本当にこの旅行中でいいのか?2泊3日とは言え貴重な時間だ。俺はアレスには純粋に旅行を…」
「だが、いつかは言わなきゃならない。それにアレスだって、バカだがアホでは無いんだ。私達が気を遣うまでも無いさ。」
「そうだな………おい、お前ら。そろそろ行こう。」
「おう、今行く。それでハデスさん?今回の旅行の食費奢りか、白い恋人20箱。どっちにするか決めました?」
「…………15箱じゃだm」
「駄目です。」
こうして食費無料になった俺は、飛行機の搭乗ゲートへ向かう。
(にしても結構人居るもんだな。気をつけねぇと逸れそうだ。あ、そういや)
「ハデスさん、宿とかって取ってるんですか?忘れてません?」
「取ってるよ……そんなバカなイメージなの?」
「いや、そういう訳じゃないんですけど……ポンコツ?みたいな。………あれ?何部屋ですか?」
「ん?4部屋。」
「んじゃ、アフロは一人部屋すか?あいつ夜とか絶対ビビリ散らかすと思うんですけど。」
「いや、そもそも一人じゃない。」
「え?それ色々とマズくないですか?てかアフロに言いました?誰と相部屋なんすか?もしかしてハデスさん?」
「違う!流石にそれ位の配慮は出来る。行きたいと言う女の子がいてな。アフロも仲良くしたいらしいし、丁度良いから連れてきているのだ。多分もう空港の中だろう。」
(へー。ハデスさんって女の子の知り合い居るんだ。てか知らない子が一人だけ混じったらなんか気まずくなりそ~……ま、なるようになるか…)
そんな会話をしながら手荷物検査を通り抜け、俺達は椅子に腰掛ける。偶然にも一列8席の椅子が7席連続で空いていた。残りの一席には女性が座っており両手で顔を抑えている。まぁ、一応声かけとくか。
「すいませ~ん、お連れの方とかっていますか?」
「…」
「…大丈夫ですか?話せます?」
女性は頭を横に振る。
「大丈夫ですか?…ホルス、スタッフさん呼んできてくれ。アフロ、治せる……おい、お前ら何笑ってんだ?見ろ!この人なんか様子が…」
俺が女性の方を振り向くと女性はプルプルと震えていた。
「ほら!こんなに震えてる!ふざけてる場合じゃない!ほら早」
「アハハっ!」
女性が急に笑い出す。
(ほんとに大丈夫か?この人。………あれ?この声なんか聞き覚えあるな。……いや、まさかな……いやでも…この声……)
俺は思い切って女性の顔を覆う手を掴み顔を見る。女性は口を大きく開けて笑っていた。
いや、それはどうでもいい。そんな事よりなんで……
「アッハハハハ…はー面白い。……ふふ、久し振りだね、勇斗。」
「
そこには俺の
「なんでここに…」
「わぁー!那由多ちゃん!リアルで見るともっと可愛いー!!!」
「アフロちゃん!?わー初めましてー!!」
(うわ、なんか久々にこの女子のキャピキャピ見たな。いやだからそんなんどうでも良くて!)
「なんでいるの!?」
至極当然の疑問。それに対しハデスさんが咳払いをして話し出す。
「私から話そう。実はな、アレスのお母様から連絡があってな。那由汰ちゃんがしんぱ」
「いや!あの!ほら、アフロちゃんから聞いたの!旅行行くって。それで私も行きたいな~って!」
「お、おぉ。というか2人って知り合いなの?」
「ん?あー、イ○スタで知り合ったの。勇斗が学校やめる前に教えてくれたじゃん?HOPEsに入るって。
それで、『HOPEs所属!アフローディテ!』ってアカウント見つけたから連絡してみたの。」
全員の視線がアフロに集中する。我慢出来ずにホルスが口を開く。
「アフロ………お前そんなアカウント作るな!色々危ない。そしてお前は『アフロディーテ』だ!」
「危なく無いもん!大丈夫だって!ほら!たわしの写真しか乗っけてないし!」
「怖えよ。なんだよそのアカウント。」
俺もツッコミが我慢出来なかった。
一悶着あったが、何はともあれ俺はみんなと一緒に2泊3日の旅行へと旅立った。
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「は~~北海道って広いなー!疲れた~」
「今日はずっと札幌だったけどな?」
初日の数時間の観光を終え、俺とホルスは部屋で布団に寝っ転がる。森の中で景色も良いし、部屋も広いし、随分と良い旅館だ。7階で高いからか知らないけど少しだけ寒いが。
(……思ったがハデスさんの収入源ってどこなんだ?あの人奢りはめっちゃ渋る癖に、こういう企画だと迷わず全部出すんだよな…。まあなんでもいっか。)
俺は時計を見る。6時だった。
「あれ?飯って何時からだっけ?」
「半からだ。どうする?必要な物持って飯のついでに温泉行くか?ギリギリ行けそうだ。」
「旅行で効率重視すんなよ…」
「時間が無くなるだろ。」
「まだ2日もあんだぞ?初日はゆっくりしようぜ。それともなんかしたい事でもあんのか?」
「…まぁな。いや、良い。ゆっくりしよう。」
「やりたい事あんなら別にいいぜ?言ってくれよ。」
「いや、大丈夫だ。本当に。」
「……そっか。」
その後夕飯を食べ温泉に浸かった俺達は、スサノヲとシシガミの大喧嘩事件やポセイドンさんの財布紛失事件等を解決し、皆で軽く遊んだ後移動の疲れもあってか8時半には各々の部屋に戻って行った。
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「やっべぇ…クソ眠い………」
「寝てもいいぞ。朝は起こす。」
「いや、旅行だぞ!…………勿体……無いだろ。」
「さっきと言ってる事が真逆だ……ほら、さっさと寝ろ。どうせまだ2日ある。」
「いや………俺はねなzzzzzz」
「……リラックス出来てそうだな。この旅行は正解だったかな…良かった。」
ホルスは浴衣のまま窓を開けベランダに出る。外は真っ暗で雪が降っている。
「…良し、やろう。」
-そう呟くとホルスは暗闇へと飛び立っていった。-
おまけ キャラプロフィール
【神力】無し
身長151cm
16歳
好きな食べ物 ラーメン
最近ちょっとラーメンを控えている。理由はナイショ
低身長だが出る所は出ている。私服は普通にオシャレ。アレスとは幼馴染。
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