第14話 地獄の飲み会
新幹線に揺られながら外を見てふと思い出す。
(そういやハデスさんの話し合い大丈夫か?まぁ昼過ぎには着くみたいだしゆっくり結果を聞こう。)
神獣調査と同時進行で進んでいた壁総理との話し合い。これが成功すればHOPEsは政府公認の組織となり行動範囲が広がるだろうし、堂々と助けられる様になる。
「…ゼウス、強かったな。」
スサノヲが口を開く。
「あぁ。ハデスさんが勝てないっていうだけの事はありそうだったな。」
「何かゼウスの神力者についての情報はないのか?」
「今んとこほぼゼロ。てかゼウスって呼べばいいじゃん。面倒くさくない?」
「まぁな。住職だったからか、関わりの薄い人間を神の名で呼ぶのに少し抵抗がある。」
「でももう坊さんじゃないだろ。」
スサノヲのサポートが入った。
「………まぁ、それもそうだな。今日から私は反社だもんな。」
「反社て…まぁ反社会勢力では…ある…のか…?」
それも全て総理との話し合い次第だ。
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「ただいま~」
「お疲れ様。…………どちら様だ?」
ハデスさんが何やら深い顔をしている。目の下にはありえんくらい濃い隈ができていた。この人も相当大変なのだろう。まぁとりあえず紹介するか。
「うちの新メンバーのシシガミさんでーす。」
「!」
ハデスさんが一気に俺に詰め寄る。
「おいアレス、私が頼んだ仕事は神獣事件の調査だろ!?どうしてメンバーが増えるんだ!?」
凄まじい勢いだ……
「えっとぉー…シシガミ頼んだ!」
「私がそれをするのか?その神獣事件の張本人なのに。」
「!」
またハデスさんは驚いている。
(なんでそんな驚いてるんだ?あ、一人称被ったからかな。…………そういや事前連絡してなかったな。まぁ、いいや。)
俺はその場をシシガミとスサノヲに任せ自分の部屋へと向かった。
「あれ?アレスじゃん、帰って来てたの?」
アフロが洗面所から顔を出す。
「たった今な。」
「じゃあちょっとこっち来て!」
「…あのな、俺今お前と遊ぶほどの体力は残ってないんだよ。明日にしてくれ。」
「そういうのじゃなくて!もう、私の事何歳だと思ってるの?まぁここでも良いや。背中向けて。」
俺は疑問を抱きつつも言われるがままに背を向ける。するとアフロは両手を掲げ神力を使用する。
「あの…アフロさん?俺ケガしてないんだけど。」
「最近分かったんだけどね、私の神力はケガだけじゃなくて疲労を軽減したり気持ちを落ち着かせる効果があるみたいなの。はい終わり!」
「相変わらず俺以外はチートみたいな神力してんな…ありがとな。」
「良いってことよ♪」
アフロはそう言うとリビングに向かっていった。
(あーなんか飲むか…)
そう思った俺はキッチンに入る。すると中には先客がいた。
「おぉ~アレスゥ~。帰ってたぁんだねぇ~。」
「ポセイドンさん、ただいまです。」
「飲み物かぁ~い?麦茶でい~い?」
「お願いします!いや~今回のも大変でしたよー!」
俺は椅子に腰掛ける。
「なんかまたマッチョが現れたと思ったらそしたらなんと…」
「無理しなくていいよぉ~。アレス、つかれてぇるでしょ~お。」
一瞬、俺の思考は止まる。
「え、いや、別に」
「いいよ別にぃ~。そりゃぁ~こんだけ連勤したらぁ、疲れるよぉ~。」
図星だ。正直しんどい。すぐに横になりたい。
「あはは、すいません…」
「いやぁ、むしぃろ申し訳ないよぉ。気ぃ使ってくれてぇんでしょぉ?『自分を自由に使ってくれ』ってぇ~。」
「……すごいですね、ポセイドンさん。でも、本当に大丈夫なんです。今はとにかく人を助けたいんです。」
ポセイドンさんは少し俺を見つめた後冷蔵庫をまた覗き込んだ。
「ふぅ~ん。まぁ、結局本人にしかぁ分からなぁい事だからねぇ~。でもね~頑張り続けりゃいいってもんじゃぁ~ないんだよぉ~。
人間なんてみぃ~~んな、いつか限界が来るんだからぁ。適度に休みなよぉ~?」
そう言うとポセイドンさんは麦茶の入ったコップを俺の目の前に置いて廊下に出ていった。
その麦茶を飲みながらポセイドンさんの顔を思い浮かべる。
(適度に休め、ねー)
目の下真っ黒にした人が何言ってんだか。ほんとにあの二人は、兄弟揃ってすごいな。
「あ、そういや総理の件聞いてねぇ…」
聞きに行くかと頭では思っていたが腰が椅子から離れない。どんどんと意識が沈んでいく。そして、落ちたー
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「……ん…」
(あれ…?寝てたのか…?)
窓の外を見るとかなり暗い。時計を見ると20時だった。
「やべ…………」
肩には薄い毛布がかけられていた。しまった、気を使わせてしまった。俺を交えてすべき会議が沢山あっただろうに。
(…ん?なんかリビングの方が騒がしいな…)
俺は毛布を畳んで軽くなった足を動かしリビングへと向かう。そこには
「私だって!私だっでぐやじいざ!!!でも相手は総理だぞ!?無理じゃないかぞんなの!!!」
「ハデスさん、溢れてます。というかもう寝たほうが良いです。」
「まぁまぁホルスもそう言わずにぃ~飲もうよ!今ならこの美少女アフロちゃんが相手になって上げるよ!!!」
「お前はなんで酔ってるんだ。さっきからジンジャーエールしか飲んでなかったろ。」
「雰囲気で酔ってしまったようだな。………ホルス君。君、大変だろ。」
「…分かってくれますか?」
ハデスさんとアフロがホルスにだる絡みしてる横でシシガミが淡々と飲み、そして椅子の下でスサノヲは寝ている。
(……こりゃ酷いな………というか、なんでこの状況で未成年の方が多いんだよ。アフロといいスサノヲといいバカは雰囲気だけで酔えるもんなのか?)
「お、アレス起きたんだね。」
背後から声をかけられる。振り返るとタオルを持ったポセイドンさんが立っていた。
「あぁ、ポセイドンさん。すいません気を使わ…………え?…え?い、今普通に喋りました!?!?」
「え?あぁ、僕お酒が入るとこうなるんだよね。いやーなんか恥ずかしいな。」
な、なんだこの感じ…ポセイドンさんなのに話し方だけでまるで別人だ…
「……てかどうしてこんな事に?」
「ハデス曰く『お疲れ様 兼 シシガミよろしくパーティー』だってよ。」
え、何それちょー楽しそう。正直起こしてほしかった。
「あぁ、大丈夫。今回は前夜祭でアレスが起きてる時にもう一回やる事になったから。」
「あ、そーなんすね!良かった~…てかありがとうございます!」
「いやいや、『パーティー』だからね。やっぱり皆いるときが良いよ。」
「…あれ?ポセイドンさんたちって三つ子ですよね?何歳ですか今?ハデスさんあんなに飲んで大丈夫ですか?」
「ん?言ってなかったっけ、81。」
「え?」
「いやだから、81歳だよ。」
「えぇぇぇぇ!!!いやマズいですよ!81歳があの量飲んだら死にますって!ハデスさん死にますよ!?」
「待って!落ち着いて……色々言ってなかったんだね…………えーっと、何から話そう……実は僕、ちょっと前までベットから起き上がれなかったんだよね。理由は老衰。」
……ん?今なんて?
「まぁそうなるよね。昔から僕はハデスより不健康な生活してきたからかな?命の限界が来るのが早かった。後1年生きれるかな~?なんて思ってたんだ。
……そんな時に、【神力】を得た。そして次の日、僕は立ち上がる事が出来たんだよ。それからも日を追うごとに出来る事が増えて行って、体の調子はどんどん良くなっていった。」
「…それも【神力】の力なんですか?」
「うん。厳密には治癒とかそういった類ではく、"若返り"だろうね。ハデスもそう言っていた。きっと今は40歳位かな?まぁ側は変わらず中身と能力だけだから真偽は分からないけどね。」
「でも、俺達は赤ん坊になんてなってませんよ?」
「そう、そこなんだよね。だから現在の僕達の仮説は
『肉体の全盛期まで若返る』ってのだよ。」
「若返り……それでそんなに動けるんですね。……にしても飲み過ぎじゃないですか?あの人。」
俺はハデスさんを見る。
(なんというか、こうして見ると…ほんとに)
「なんか家族みたいだよね。僕達。」
「え?」
「いやさ、毎日命の危機があるからなのか、それともただ単純に相性が良かったのかは分からないけど、それでもこうやって本当に心の底から互いに愛し合える関係って、なんか家族みたいじゃない?」
「…俺もおんなじ事思ってました。」
「そっか。」
学校にも友達は居たし一緒にいるのは楽しかった。でもHOPEsのみんなは何かが違う。楽しいから一緒にいたいんじゃなく、一緒に居たいんだ。何の理由も無くとも。
「…そういえば総理の件って結局どうだったんですか?」
「あーそっか。アレス聞いてないんだもんね。総理とハデスの話し合いの末、僕達HOPEsは政府公認の組織となった。」
「おぉー!」
これで、きっと救える人も増える!
「ただ、いくつかの条件は設けられた。」
「条件?」
「あぁ。まずHOPEsは政府公認の組織、もとい政府の管理下の組織となった。本来なら行動がガチガチに縛られる可能性が高い。
だが今回は活動に大きな制限はかけず、たまに政府が出す命令とやらに応じれば良いとの事だ。後は毎日の活動報告。これを守るなら行動に政府側からの圧力はかからないそうだ。
そして次に、敵対神力者。まぁいわゆる神力犯罪を引き起こした張本人。その身柄を確保次第国に譲るというものだ。おそらくこちらは研究目的だろう。」
俺は少し難しい顔をしてしまう。なんせ条件が多い。それを見かねたのかポセイドンさんはフォローを入れる。
「………確かに条件は多いが、傍から見れば僕達は危険な組織でしか無い。そんな組織に対しこの対応は破格と言っても過言ではない。まぁ要は交渉は成功したと言っていい。」
「なるほど…そうですか……。」
成功、今はその事実がただひたすらに嬉しい。
(………?なんか、リビング静かじゃね?)
俺はリビングの方を見る。
「うへぇ~///……やだもう…ホルスの………えっち」
「125……126………127………バナナ……バナ……ナ……バナナソード…へ…へへ……」
「うぅ……あきとぉ………おまぇ……いったい…なにが…………ごめんなぁ……にいちゃんが…もっと……はやく……」
「すまない…すまない…すま…うおぉぉぉぉぉぉお!!!どうしてあんな事にぃぃぃぃぃぃ!!!私が!私があの時いつもより10分早く起きればぁ!!!うぉぉぉぉぉぉお!!!」
「助けてくれ。」
「「………」」
「…ポセイドンさん?アレス?僕達HOPEsだろ?困ってる人を助けるんだろ?僕は今人生で一番の難所に直面してるんだが?」
「…ポセイドンさん。たまには男同士で風呂でも入りませんか?ここの風呂広いですし。」
「…あぁ、そうしようか。」
翌朝、バカ面で寝るアフロと何故かバナナを食べながら寝るスサノヲ、涙でビチャビチャの机に突っ伏して寝ている成人男性2人。それに、立ったまま、死んだように寝るホルスが発見された。
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