時を超えて

秋風のシャー

結末なら知っている

車椅子を押され彼女は今、葬儀会場へとついた。ありがとうございますとペコリと頭を下げ、自ら中へと進む。


小鳥がすだち、新たな芽を芽吹かせる季節。多くの者が新たな門出を楽しみにする日の今日は4月9日。桜並木がこの神田宮には立ち並ぶ晴レノ日。だというのに多くの人が悲しみの表情を浮かべていた。

屈強の者から、老若男女まで立場は違えど目的を同じにした皆の悲しみの渦を通り抜け彼女は前へと進んだ。


声は出なかった。出るのは涙だけ。


行って参ります。

思い出すは7日前の未明。

あーーー、あーーーあーーー


心の中で私は…叫んだ。

苦しいよ…なんで…なんで…行っちゃったの…


7日前…

…………………………………………

常に無表情で上品にそう暮らしてきた者が居る。

名を莉愛という。才色兼備で剣術、武術、誰から見ても優等生とみられる彼女。だが、彼女は思いの外、心が弱かった。


随分と長い夢を見ていたかのように目を開けるとそこは草原が広がっていた。地面から上へと視線を上げると多数の人がみえた。

防具やら甲冑やらを身に着けているおびただしい数の軍勢が眼前に構える。


自分が生きているのか時々わからなくなるなることがある。死んでいるんじゃないかとおもうことがある。



自分の意志があるのか、ぼやけた世界の一員としているのか何もかもわからなくなる時が…ある。



結末なら知っている。私がこの先どうなるのかを私は…知っている。

両手の掌を見つめながらそのようなことを思った。


戦場に立ち

剣を鞘から抜き、敵と相対する。これが、私の役目なんだと言い聞かせるも体は震えていた。


彼女は幼い頃から、この地を守らんとするために育てられてきた。

いつも無表情で、学校でも異端として存在していた。


莉愛…どうしたんだ。

悠がいつもとは違う莉愛の様子に気づき問いを投げた。


前もあったような感覚が五感に宿る。


まるで銅像にでもなったかのように無表情さに真美沙も声をかけた。


莉愛さんどしたのですか。


裏返るような吐息を吐く声で

力強く、それでいて怖いという気持ちに声を抑えるように声を震わせ彼女は言う。



い、いかないで…

お願い…だ、か、ら


敬語じゃない…どうしたんだろう。

莉愛はマミサの袖元を引っ張る。

目に涙を浮かべ

怖い…と一言。

彼女が発した言葉は皆の意表をつくものだった。彼女からその言葉が出るとは夢にまで思わなかったから。


脚をみると、小刻みに震えている。

お兄ちゃん…

そこには居ないはずの兄の名を呼ぶ。



私は戦いたくない。ごめんなさい。

そういうと彼女は泣き崩れた。


1呼吸後…

わりぃけどそれは無理だ。


うちも行かなきゃ。

2人の答えは彼女の意と異なるものだった。

え…

彼女の怯えた声に真美沙は

ごめんね…私、莉愛ちゃんのこと何も知らなかったみたい。莉愛ちゃんは逃げな!

と莉愛の泣き顔に顔を近づけて、よしよしと頭を撫でた。

直後、時間が止まって見えた。

待って…

この時、私がどんな顔をしていたのか分からない。鏡の前でいっぱい練習したのに…


戦いが始まったのだ。

私は走った。とにかく走った。私の知り合いに合うために。


…………………

その時、春嶺の里の橋上では、女官同士話し合っていた。

美朝、どうなのさ。最近!

ん?どうって?

美朝は笑いながら女官に振り向くと女官も顔を近づける。

ほら、男の人。

あぁ、んとね…結婚したいなぁて…思ってる。

ああ、そうなの!

ふふ…う…

美朝は胸に違和感を覚える。


美朝!美朝、どうした。ねぇ、

あぁ、どうしよ。なんでよ。


美朝は橋の上で、仰向けになり倒れ込んだ。


彼女はその女官の手を掴む。

誰か…誰か…


ちょっと待ってな。今、医者読んでくるから。

しかし、次の瞬間美朝の手は女官から滑り落ちた。 


この時、恐ろしいことが起こっていたとはまだ、誰も知るヨシがなかった。


莉愛はそのことを知らず森の中を彷徨う。隠れながら…怯えながら。その途中、とある村が襲われているのを目にした。

彼女は木陰に隠れながら様子をみつめた。木の小屋の中には沢山の子供たちがいる。

だが、様子をみると様子が可笑しい。辺には逃げ惑う子供、黒い人影が周りを彷徨いているのが見える。私は無我夢中でその場所へと向かう。

嫌だ!

やめて!

こないで!

悲鳴の声が辺りを包んでる。

キャー。

男が子供に振りかざす。

私はそれを剣で弾き返していた。震えながら、子供を後ろにいかせようと、後退りしつつ、構えの姿勢をとる。

男は私に振りかぶる。私はそれを受け流しながら、コッチに来てと子供たちを誘導する。

6歳くらいの女の子の手を握りながら

いうことを効かない脚をなんとか回転させ、私達はにげまどう。


ごめんなさい…ごめんなさい…生きたい…

キャー…


そうだよ…ね。

ごめん…彼女は後ろにいる女の子に横顔をみそる。

少し高い、鼻が左の顔をかくすも優しそうな顔で…大丈夫…

そして、後ろにいる子供をみて、皆はもっともっと奥に逃げて…

と身振りをつけて言う。

子供達が逃げたのを確認して、敵さんに挨拶。


なんで…そんなことさるんですか?


アアン、命令だよ。

そう…ですか。

私も抵抗しますよ。

構わねぇよ。別に…俺等は使い走り…だからよ。

おい、あんた…

いいじゃねぇか。ちょっと可愛そうだろが、

まぁ、そうだな

震えすぎてる莉愛を見てそういった。

それによ…子供をいたぶる命令なかったよな…

あぁ…

そういうことだ…付き合ってやるよ。

その後、敵さんと相対し数分の時がたった。

おほほ、やるじゃねぇか。

おい、いいのかここにずっといて、

いいんだ…おい、ちょっとあれをみてみろ。


天が歪な形をしているのに男は気付いた。

なんだありゃ。


お姉さんなにあれ?


人じゃない?何…あれ!


まさか…上はこれが、目的だったのか…


異型の者が天より降り立つその時…

守らんがため立ち上がるものあり…


その後のことはコマ割りの刹那の出来事…見るも無惨な惨状がこの地にいや、国を襲った。



時はロード2020年…病室にて


あ…ハッハッハ………そっかぁ

出来事を整理し、彼女は物思いにふけっていた。

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