この世界に神様がいるのなら…

みらい

第1話 最強の魔法使い


魔王が死んでから、89年目の秋暮れ。


積もった落ち葉が、木枯らしで舞い散らされていく。深い森に囲まれたこの家は、ちょうどその通り道になったらしく、カタカタカタと窓を1日中叩き続けていた。

風が通る度に家は、ギシギシと音を立てて揺れていた。


アイネは、そんなことはお構いなしに雑誌を読んでいた。取り寄せていた最新の魔術研究に関する雑誌だ。


魔法が発展して40年。毎週のように新しい魔法が発見されては、更新されていく。


『これが3大便利魔法だ!重いものを持ち上げる

魔法、水を出す魔法、ドアに鍵をかける魔法!』


……。………、…………。はぁ…。アイネは深くため息をついて首を振った。


確かに魔王がいなくなって世界は平和になった。初めは、魔王の復活に備えて特に、攻撃魔法に対する研究が盛んに行われた。優れた攻撃魔法は詠唱に時間がかかる。あらゆる知識と人材が、詠唱を最短にすべく、そしてさらに優れた魔法の発見に繋がるようにと、苦心惨憺してきた。


そんな風にして体系作られた魔法は、聖魔法として、修道院が一括で管理し、広く使われて来た。


町を出て暫くすると出てくる魔獣たちも、簡単に駆逐され、長い日照りで干ばつになっても小雨を起こすことで、人々は何の不自由もなく暮らしてきた。寧ろ平和過ぎるのでは無いだろうか。


魔王は後11年で復活する。夏休みの課題を前日に済ます子どものように過ごしていたのでは、絶対に勝てない。最も、そんなことを思っても、アイネには、人に加担するつもりは無かった。もう十分に役割は果たした。残り残された命を、神様が気まぐれで終わらせるまでのんびり生きるつもりだった。


そんな想いとは裏腹に、彼女の直感はまた告げていた。世界を揺るがす最悪が起こりつつあることを。そして、自身にまだ役割が残されているということを…。



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